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編集部が語る!涙と祝福が溢れたsumika10周年アニバーサリーライブ

5月14日に横浜スタジアムで開催された「sumika 10th Anniversary Live 『Ten to Ten to 10』」に、スカパー!note編集部タンタンが行ってまいりました。
sumikaは、 Vo. / Gt. 片岡健太、Dr. / Cho. 荒井智之、Key. / Cho. 小川貴之、そしてGt. / Cho. 黒田隼之介の4人組ロックバンドで、題名の通り今回のハマスタのライブは結成10周年を記念したものでした。
しかし、ライブを前にした今年2月に黒田隼之介が急逝するという予想できない出来事が。活動を休止する期間もありましたが、4月に開催された「ARABAKI ROCK FEST.23」から活動を再開。
今回は、sumikaの未来に向けた決意を感じられた、そしてsumikaとsumikaファンの愛に包まれた、奇跡のような一夜をレポートしたいと思います。

私にとっての初めてのロックフェスは 、2016年の夏、大学2年生の時に参戦した「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」だった。
 
友達に誘われてチケットを買ったはいいものの、当時ロックバンドの知識といえば高校生の時に文化祭で軽音楽部がカバーしていたBUMP OF CHICKEN、SCANDAL、RADWIMPS、SHISHAMOの数曲のみ。
さすがにフェスに行く前に予習せねばと、大学の一限がない日に朝から布団の中でYouTubeを垂れ流し、せっせと「ロックバンドを知る」ことから始めた。
その頃多くのバンドが「フェスで盛り上がる曲・踊れる曲」をリリースしていたおかげもあって、次々と曲を聴いては「へー、こんなバンドがあるのね」と楽しみながらいろいろなアーティストを知れていったのを覚えている。
 
 
その中でひときわポップで、
それなのに、<君への思いが ガスが口から出るあれに似てるよソーダ> <ねぇ 浮気して ねぇ余所見して> ……なんだか変な歌詞を歌うなぁと思ったアーティストがいて。
 
― 結局そのバンドは私が行った日の翌日のロッキンに出演していたので、その年に見ることはできなかったのだが、その時も「なんかさ、最近気になってるsumikaっていうバンドが明日ここでやるんだよねー」と内心ちょっとドキドキしながら横にいた友達に話したのを覚えている。
 
「ちょっと気になっていたけど見れなかった」。
そういう思い出が、“逃した魚”的に余計に気にさせたのか、それ以降私はsumikaの昔の音源を聴き始め、気付けば新しいCDも買うようになって、sumikaの音楽と歌詞に触れていくようになった。
 
 
だからその翌年ようやくロッキンでsumikaのアクトを見れた時はすでに「気になってる」ではなく「好きな」バンドとして楽しむことができたし、
耳で聴くだけ・画面で見るだけでもいいかもしれないけれど、初めて生で味わうsumikaのライブは、
みんなで感情を共有して、みんなで歌って、あぁなんて楽しいんだろうと曲が変わるたびに感じて。
「音楽を1番ピュアに受け取ることができ、心を震わせられる場所はライブである」 と思えたのもsumikaのライブがあったおかげである。

▼当時からずっと好きなアルバムです。


それから時を経て2022年。
sumikaの地元・神奈川県の横浜スタジアムで、結成10周年記念のワンマンライブ「sumika 10th Anniversary Live『Ten to Ten to 10』」が開催されることが発表された。
 
ここ数年は声出しが制限されていて本来のsumikaのライブの良さを体感できていなかったからこそ、制限が解除されてのライブを久しぶりに味わえるのを楽しみにしていた。
きっとそれはsumika自身もそうだったと思う。
 
 
 
―それだけに、あまりに突然すぎる訃報だった。
 
その知らせを見た時、暫く手が震えて頭が空っぽになったのを鮮明に覚えている。
 
 
ライブまでの期間も、sumikaの音楽を聴きたいのに、どうしたってあの底なしに明るい笑みと、ストラップの短いギターを掻き鳴らす姿が浮かんでしまうから― いままでsumikaから与えてもらった居場所の存在があまりに大きかっただけに簡単に受け入れられるはずもなく、ただただ淡々と事実を伝えるバンドの公式SNSを見つめることしかできなかった。
 
 
そしてライブ当日。
 


 横浜スタジアムは屋根のない屋外ステージであるにもかかわらず、天気は生憎の雨。
ライブが近づくとともにぽつぽつと地面の色が変わり始め、慌てて売店でレインコートを購入した。
かなり本降りになってきた頃、ライブ開始。
モニターには今までの10年のsumika4人の様子が断片的に映し出される。
そして片岡さん、バロンさん(荒井さん)、おがりん(小川さん)の3人が登場し拍手に包まれた。
 
1曲目はまさにその日のライブを表すかのようなタイトル「雨天決行」。
この曲は1番の終わりにギターソロがあって、どうなるのだろうかと見守る中、
誰かが代わりに弾くわけでもなく、録音が流れるでもなく、ただ流れていくメロディ不在の8小節。
 
けれどその間―
心の中で、爆音で、たしかに隼ちゃんのギターは鳴っていた。
私たちのギターヒーローはもう目には見えなくて、隼ちゃんがいたはずの場所には隼ちゃんのギターがスタンドに置かれていただけだったけど、音楽はまだ心の中で生きているんだと感じた。
それが嬉しくて、でもやっぱり悲しくて、頬を濡らしているのがもはや雨なのか涙なのか分からなくなっていた。


 そこからのセットリストは怒涛だった。
メドレーも含めるとトータル40曲近くにも及ぶ、sumikaらしいバラエティ豊かな音楽性の楽曲が、MCを挟みつつも畳み掛けるように奏でられる。
 
ロックチューン「ふっかつのじゅもん」で片岡さんが隼ちゃんのギターで代わりにソロを弾くシーンもあったが、基本的には隼ちゃんのパートはギター音源を再生もしくはゲストメンバーのサポートで補われた。
 
 
雨が降り続けるなか、私たちもsumikaもみんなびしょ濡れだったけれど、歌詞の中に雨に関する言葉が多く(ということに、この天気で聴いたおかげで気付くことができた)、特に片岡さん・隼ちゃん共作詞の「明日晴れるさ」を聴いていると、この雨が隼ちゃんからのメッセージみたいにも思えた。 


こうして、最後「「伝言歌」」で、33000人の合唱と共に終演……かと思われたのだが、最後の最後、センターステージに再度現れた3人。
 
このライブの1曲目で演奏し、その時はモニター4分割で隼ちゃんのギターが映し出され、ギターソロも空白だった「雨天決行」が、3人だけのセッションで再演されたのだ。
 
 
<やめない やめないんだよ まだ足が進みたがってる>

―3人だけで演奏される雨天決行に、
きっと私たちが知る由もない、深い深い哀しみがあったのだろうが、sumikaに「ただいま」と言いたい人がいる限り、そして何よりsumika自身がsumikaのファンである限り3人で続けていく、という覚悟と決意を感じた。

 
ーーーーーー
 
5年前に行ったライブでの片岡さんのMCで、ずっとずっと好きなメッセージがある。
 
「音楽生活、いろんなことあったなと。sumikaよりも前のことも含めて音楽人生振り返ってみようと思って、コンビニで履歴書買ってきて書いてみたんですよ。
 
左側に行った学校とか入った会社とか書いて、右側に志望動機とかを書くんですけど、左側がまぁひどい。
sumikaって、バンド結成して5年なんですけど、組んで5年の時点で割とキズモノと言いますか。
(前のバンドで)1回CDもだしてるし、前に組んでたバンドも10年くらいやってるし、左側の経歴だけ見たら傷だらけだからさ。会社だったらこの人とは契約しないなっていう状況だったんですよ結構。割と誰が見ても劣性というか…荒波すぎる。
 
sumikaのメンバーもそうだし、スタッフチームも、元々サラリーマンやってた人だったりとか、元々美容師やってた人だったりとか、担当してたアーティストに裏切られた人だったりとか、左側だけ見たら結構傷だらけの人ばっかりなんだけど、
結局大事なのは右側に、その空欄のところに何書いてあるかっていうのが1番大事なんじゃないかなって。今何したいの?って聞かれた時に答える答えが、魅力的であることが何より大事なんじゃないかって。
 
そういう気持ちでやってこれたから、活動休止しても、声が出なくなっても、ライブハウスの人にライブ出たいって言ってちょっと嫌な顔をされても、あははって言いながら5年間歩んでこれました。
 
皆さんの履歴書はどうですか。右側が空欄だったらなんの意味もないと思うんです。
 
今何したいですか?
どんなことしたくて今日家帰りますか。
仕事ですか、勉強ですか、家事ですか、育児ですか。
なんでもいいと思うんですけど、他の人にどんだけ笑われようと、そんなこと意味ないよって言われようと、sumikaは笑われ続けてきたから、俺たちのチームは右側に何を書いてあっても笑うメンバーなんて1人もいません。
 
だから一つお願いです。
どうか、自由に書いていい右側、空っぽにしないでよ。
今やりたいこと全部見せてください。誰にも見せられないんだったら俺たちにみせてください。そういう家を作っていつでも待ってるから。
素敵な右側埋めて、いつでも帰ってきてください。
おかえりと言える準備をして、いつでも待ってます。」

 (ライブMCより一部編集して掲載)
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今回の事はそんな「右側」が真っ白になってもいいようなことだったはずだ。
それでも、sumikaは未来を見ていた。現に今年、来年のライブも決まっている。
 
 
 
「sumikaとしておかえりを言い続ける」。
 
その決断をしてくれて、
ただいまと言える場所をつくってくれて、本当に良かった。
 
 
sumikaを好きでよかった、そう思い
心から10周年を祝福出来るライブだった。 


 
sumika 10th Anniversary Live『Ten to Ten to 10』セットリスト

1. 雨天決行
2. Lovers
3. フィクション
4. ふっかつのじゅもん
5. 1.2.3..4.5.6
6. ソーダ
7. Porter
8. 惰星のマーチ
9. イコール
10. enn
11. わすれもの
12. New World
13. Strawberry Fields
14. No.5
15. 秘密
16. 透明
17. 知らない誰か / sumika[camp session]
18. ユートピア / sumika[camp session]
19. Travelling / sumika[camp session]
20. IN THE FLIGHT / sumika[camp session]
21. 溶けた体温、蕩けた魔法
22. 絶叫セレナーデ
23. Flower
24. マイリッチサマーブルース
25. メドレー
(The Flag Song/チェスターコパーポット/KOKYU/ライラ/Jasmine/Late Show/Lamp)
26. ファンファーレ
27. 明日晴れるさ
28. Shake & Shake
29. オレンジ
<アンコール>
30. Starting Over
31. 願い
32. 「伝言歌」
33. 雨天決行 全楽章
 


今回のライブの様子は6月にWOWOWで放送されます!


そのほか、sumikaに関する番組はこちら。


<スカパー!note編集部のライブレポート>

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