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大企業?スタートアップ?の議論はもういらない。学生の真の企業選択を徹底討論

今回は学生向け連載記事「インターン×スタートアップ(経営者もしくはスタートアップの専門家)」の対談記事の第一弾を行いました。

記念すべき第一弾は、スタートアップ・イノベーション領域に特化したWebメディア/コミュニティである「FastGrow」の事業責任者 兼 編集長の西川ジョニー雄介さんにご登場いただき、SPROUNDインターンである塩野清雅と学生の職業選択、キャリアへの考え方について対談をいたしました。

西川さんプロフィール写真

西川ジョニー雄介
外資系投資銀行の内定を辞退し、当時コンテンツ事業、ソーシャルゲーム事業を行っていた株式会社モバイルファクトリーに新卒入社。その後、当時社員数3名だったWebマーケティング企業、株式会社アッションに転職し、新規事業立ち上げを成功に導いた後、同社執行役員に就任されました。現在は、スローガン株式会社の執行役員として、FastGrow事業部長 兼 編集長を務めています。


考えることは「大企業orスタートアップ・ベンチャーどっちがいい?」ではない

ー塩野
本日は宜しくお願い致します。まず初めに、色々な記事でも様々な議論があって、学生が就職活動をするときに「大企業がいいのか?スタートアップ・ベンチャーがいいのか?」と議論が交わされるのですが、ジョニーさんのお考えについてお聞かせください。


ージョニー
まず、企業を選択する上で考えなくてはいけないことが2つあると思っていて、1点目がいつまでにどうなっていて、何をできるようになっていたいかを決めることだと思います。2点目は、経験を積める環境であるかということだと思います。なりたい姿になるために成長が必要で、70:20:10の法則と言われている通り、成長するためには経験が70%、第三者からのフィードバックが20%、座学や研修が10%と言われています。なので、いかに自分ができるようになりたいことを企業で経験できるかが重要になってきます。また、どんな経験を積みやすい企業なのかは、環境を構成する変数で決まってくると思っていて、それはフェーズ、事業規模、カルチャーなどの変数を指しています。それらの要素を考慮しながら今働くべき会社を決めるのが理屈上では正しい企業選択なのではないかなと思います。例えば、最終的に1000人をまとめて、1000億円の事業を作りたいという目的を考えた時に、成長するために必要な経験を分解して、100人のマネジメント経験が必要なのであれば、創業直後のスタートアップでは体験しづらいし、経験できる会社は限られてくると思います。なので、成長が早い、遅いの判断をする前に前提となる「いつまでにどういう成長がしたいのか」をしっかり考えることが大切だと思います。

ー塩野
「大企業がいいのか?スタートアップ・ベンチャーがいいのか?」の議論は個人の目的を決め、目的までの時間軸や規模などに合わせて会社を選択することができれば、この議論自体が意味をなさなくなると理解をしたのですが、一方で、目的がないからとりあえず自分に合いそうで良さそうな会社を選ぶ人が一定数いると思っていて、そういう人達はどういう基準で会社選びをした方がいいですか。

ージョニー
会社を選ぶ時に逆転の考え方をするのも大切だと思っていて、嫌な要素を省いていく否定法の考え方です。例えば、営業職に配置される可能性のある総合職採用が嫌なのであれば、専門職採用があるジョブ型雇用を行っている会社に絞られます。自分に絶対に合う会社を選ぶの難しいけれど、合わない可能性が高い会社を省いていくのは容易だと思うので、嫌なことを細分化して該当するものを一つずつ省いていくと、自分に最適な会社選択に近づいていくと思います。

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スタートアップ・ベンチャーだから
成長できるわけではない

ー塩野
成長のお話でいうと、学生の中でスタートアップ・ベンチャーは成長できる環境だから入社したいという人が多くいるのですが、自分は逆にスタートアップ・ベンチャーの現状は任せられる仕事が少なく、雑務をこなすだけの可能性もあると考えているのですが、新卒や第二新卒が入社をして活躍できる環境があるのかをお聞きしたいです。

ージョニー
大前提として、大企業、スタートアップ・ベンチャー、どの企業もまず会社が伸びていることが重要だと思います。3人の会社でもサービスが伸びていない状況だったらやることがないし、逆に事業が伸びているところだったら、マネージャーが足りないとか、戦略を立てる人がいないなど出てきて、チャンスが沢山降ってくると思います。根本的に仕事は課題を解決することだと思っていて、会社や事業が大きくならないと課題は増えていかないので、伸びている会社にいることは大切です。そこで相対的に見た時に、大企業よりも、3人の会社の方が短期間での企業規模の伸び率は大きいと思うので、同じ在籍期間で、同世代の大企業の人が経験できないようなことをスタートアップ・ベンチャーでは経験できる可能性は高いと言えると思います。

ー塩野
「個人の成長=会社の成長」ってこういうロジックなんですね。そこで1つお聞きしたいのですが、会社や事業が拡大して、新しい仕事を任された時にその環境に適応して成長できる人は、スキルなどは抜きにして、性格診断みたいな特性で言うと、どんな人がフィットすると思いますか?

ージョニー
スタートアップを数人から20人規模、調達で言うとシードとかプレシリーズAの状態の時と仮定したとすると、わからないことや納得できないことがあった時に、すぐに調べる癖があるかは重要ですよね。理不尽なことやおかしいと感じた時に、すぐに調べて自分で解決するためのアクションが取れるか。スタートアップやベンチャーは、やったことがないことや、わからないことばかりなので、それを「うちの会社は全く教えてくれないんだよね」と言う人ではなく、自分で調べたり、社内外の誰かに聞いたりできる人が向いています。スタートアップ・ベンチャーはわからないことだらけの環境ですから、わからないことに興味を持って調べることができて、自分が第一人者になれることを楽しめる人にとっては、パラダイスだと思います。

ー塩野
やりたいこととかVisionにはすごく共感しているけど、自分の性格などがスタートアップ・ベンチャーに合っているかが分かる明確な指標がないので、このすぐに調べる癖があるかという質問は、シンプルですけど環境適性が分かる質問ですね。

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大企業からスタートアップへ入社する人のメリット

ー塩野
少し話題が変わるのですが、大企業からスタートアップ・ベンチャーへ行く人には具体的にどのような強みがありますか。大企業に新卒で入社する人、進行形で大企業で働いている人がどんな強みを持った状態でスタートアップに転職をすることができるのか、現職でスタートアップ採用に関わる活動をなさっているジョニーさんのご意見をお聞きしたいです。

ージョニー
これは明確で強みがあります。しかし、大企業での経験を活かせるフェーズでのお話です。自分で起業したり創業メンバーとしてスタートアップに参画する場合は、大企業で得た経験は逆にアンラーニングになる可能性があります。それくらい大企業で仕事をすることと会社を立ち上げることは違うといろんな方が言っていますよね。一方で、事業が拡大していく中で大企業での経験が活きる明確なフェーズもあります。それはシリーズBやシリーズCくらいの50人とか100人が見えてきたところで、大人数のマネジメント経験がある人や、業務整理や仕組み化ができる人が必要になります。例えば、大手企業やメガベンチャーでマネジメントやっていた人とか、戦略コンサルの人とかは、仕組み化や業務効率化、マネジメントに対する普遍的なスキルを持っていて、会社や事業が変わったとしても、今までやっていた業務を成長中のスタートアップやベンチャーに適用でき、自身の力を最大限活かすことができると思います。

ー塩野
もし、大企業にいて転職をしようと思った時、市場価値のみを考えたら自分の経験にあった事業フェーズを選ぶことが大切ということですね。もう一点お伺いしたいのですが、大企業から転職しようと思った時にボトルネックになるところは給料だと思っていて、新しいことに挑戦したいと思っても一歩を踏み出せない人が多い理由だと思うのですが、それについて今の現状を教えていただきたいです。

ージョニー
近年は、資金調達もできるようになったので、スタートアップ・ベンチャーがオファー時に提示する給料も上がっている気がします。シリーズAやBでコンサルティングファームやメガベンチャーの出身者を採用するとしても、そんなに給料を落とさずにオファーをいただける機会も増えているのではないでしょうか。少なくとも、多くのスタートアップへの転職で、年収が240万円になった、みたいなことはないと思います。もちろん、創業したばかりで資金調達もしていなければ、一時的に年収が大幅に減少することはあると思いますが、それ以外はそこまで給与の心配をする必要はないと思います。


「スタートアップ・ベンチャー出身にしかできない」
大手企業への転職が近年増えている理由

ー塩野
大企業からスタートアップ・ベンチャーへ転職をする人の価値についてお話をしていただいたのですが、逆にスタートアップ・ベンチャーから大企業に転職をして活躍している事例などはありますか。多くの学生が大企業からスタートアップ・ベンチャーには行けるけど、スタートアップ・ベンチャーから大企業への転職はできないと思い、大企業を選択をする人が多くいるのでお聞きしたいです。

ージョニー
結論を言うと、可能であり需要もあります。なぜかと言うと、今、大企業も新規事業を始めたいし、DXを推進したいんです。しかし、そこには課題があって、新規事業を任せる人材には、大手企業では身につきづらいスキルを持った人材も必要になるんです。そのため、テクノロジーに強い人や、実際に事業立ち上げを経験した事がある人を外部から採用をして、小さい部署や子会社、場合によってはスタートアップとジョイントベンチャーを作り、そこで仕事をしてもらう訳ですよ。そういった求人は沢山出ています。

ー塩野
ジョニーさんの今の話を聞いて、1つ疑問がありまして、仮説としてスタートアップ・ベンチャーの方が小回りが効くし、スピード感も早い。一方、世の中に新しい価値を生み出すというイノベーションの観点においては大企業はすごく難しい環境ではあると思うのですが、それでも大企業で働くメリットについてお聞きしたいです。

ージョニー
一番のメリットは規模が大きいビジネスを仕掛けることができる点だと思っています。スタートアップで事業責任者だった人が、大手保険会社のヘルステックを手掛けている子会社に転職をして、日本に数百万人いる保険会員にヘルステックのサービスを提供することができるのが楽しいと話していたんですよね。他にも、僕の1つ上の先輩では、今メガベンチャーで数百億円規模の事業に関わっているのですが、大企業特有の、稟議を通すのに何個も判子が必要といった大変なところもあるけれど、ベンチャーとは違うダイナミズムがあってすごいよ、と話していました。日本全国の数万人の営業の方が連携して、「これを営業して欲しい!」と頼めば、1ヶ月で数百億円を作り出すこともできる。まさに、一気に日本に自分が手掛けるサービスを広めることもできるから楽しいと言っていました。

ー塩野
転職の際も自分の目的を成し遂げるために一番最適な選択を取ること重要で、それが大企業なのか、スタートアップ・ベンチャーなのかを1つの視点だけではなく様々な視点から見極める必要があるということですね。


スタートアップ・ベンチャー入社にリスクなんて全くない

ー塩野
最後にスタートアップ、ベンチャーに入社する際のリスクが2点あると思ってそれについてお聞きしたいのですが、まず1点目が、会社の倒産のリスクです。スタートアップで言うと、プロダクトローンチ後にそもそも市場がなくPMFできずに倒産してしまうリスクがあると思うのですが、もし仮に倒産をした時のリスクはどの程度あるんですか。

ージョニー
日本でもスタートアップ、ベンチャーや大手企業でも新規事業の部署がある企業などは、一度事業を失敗した経験をプラスに評価する雰囲気が出てきています。少なくとも、経営者や経営陣に事業を失敗しましたと話したら「当時の状況を詳しく聞かせて欲しい」と言われるのではないでしょうか。そこで事業や市場のボトルネックを理解して説明ができて、次に事業を創るならどこに気をつけるか、といった話ができれば、「もう一度うちで挑戦しないか?」とオファーをいただける可能性は高いと思います。僕は学生時代、当社が運営するGoodfindのセミナーに通っていたのですが、そこで聞いて今でも印象に残ってる言葉が「価値の源泉は希少性だ」というものです。事業をやって失敗した人は、ニーズはあるし、かなり希少ですから、価値は高いと思います。起業の失敗談を語る人は少なくあまり表には出ませんが、起業家を含めて沢山の失敗をして糧にしてきたからこそ今がある人がほとんどですから、失敗こそ価値が高い経験だ、と考えてもいいのかもしれません。

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ー塩野
価値と希少性の2つの観点から考えればリスクはないんですね。むしろ失敗を恐れて挑戦をしなければ量産型の人材になってしまう危険性もあって、希少性が無くなり価値が平行線、もしくは減少する考え方もできますね。2点目のリスクは、新卒でスタートアップに入ると専門性に欠けると思っていて、降ってくる多様な仕事をこなして気づいたら専門性がなく、スキルが身に付かない可能性があると考えているのですが、この考えについてジョニーさんのご意見をお聞きしたいです。

ージョニー
よく履歴書をアップデートをすると言いますが、自分の学んだことやスキルなどを言語化することが大切だと思います。特にスタートアップ・ベンチャーで働いている人には大事だと思っていて、なぜかと言うと、大企業の場合、役職やグレードごとに「何ができる人材なのか」といった評価項目やチェックリストが細かく決まっていることも少なくないので、自分の役職によってできるようになったことが目に見えて把握しやすい可能性もあります。一方でスタートアップやベンチャーにはそれがないことの方が多く、自分で「自分は今何ができるようになったのか」を言語化しなくてはいけません。それを怠ると、「結局自分は何もできるようになっていないのではないか!?」といった錯覚に陥る可能性もあるかもしれません。しかし、実際にはそんなことはなくて、絶対に何かこの半年、一年でがむしゃらに頑張っていればできるようになったことはあります。もし仮に「何もないです」って言う人がいたとしても、カオスな状況でも生き残るスキルは身についているはずです。そのスキルはVUCAと言われる変化の激しい今の時代では大変貴重ですから、スタートアップやベンチャーで何も学べないということはないはずです。

ー塩野
2つのリスクも価値になるんですね。現在の社会ではリスクなどは存在しなくて自己実現のために多様な選択肢があるということですね。



ジョニーさんとお話をする中で、自分自身のキャリアの考え方や目的の設定の重要性など多くのことを考え直す機会となりました。会社は常に手段であって目的ではない。どんな会社を選択をしたとしても自分自身の目的に対して逸れていているのか、いないのか、逸れているなら軌道修正が必要なのかをしっかり見極めることが重要だと思いました。結論、就職活動やキャリア選択において、大手企業、スタートアップ、ベンチャーなど様々な選択肢がある中で、どの企業が良いかを決めるのは自分自身の目的でしかないと思いました。

(文・構成:塩野清雅)

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