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初連載『俺はまだ本気出してないだけ』の始まりから完結までの話(前編)
2005年に漫画雑誌『月刊IKKI』の新人賞イキマンで漫画家デビューした僕に付いてくれた担当編集者は年上のKさんという男性編集者でした。今に至るまで一緒に組んでいることを考えると漫画業界では異例の長さかと思います。
まず『走馬灯』という、おじさんが脱サラして漫画家を目指すマンガでデビュー後に早速、担当のKさんと次の作品の話になりました。
Kさん「青野さんは若いしIKKIの読者層も若い人が多いので、次は若者の話がいいんじゃないかな?」
青野「そうですね。わかりました。若者が主人公の読み切り描いてみます」
そして、僕は若い女性が主人公の『生きる』という読み切りを描いた。
Kさん「面白いです。でも、またおじさん出てきましたね。これからもこのおじさんキャラを使い続ける訳じゃないよね?」
青野「はい。もちろんです」
そして、僕は読み切り『俺はまだ本気出してないだけ』を描いた。
Kさん「またおじさんじゃん!」
青野「つい思わず。これで最後にしますんで・・・」
Kさん「いや、でも正直言ってこのマンガ面白いよ」
そんなこんなで、正式に『月刊IKKI』にて『俺はまだ本気出してないだけ』の連載が開始された。(上記の読み切りは全て単行本『俺はまだ本気出してないだけ』一巻に収録されています)
編集長のEさんも気に入ってくれて「こんなマンガがひとつくらい掲載されていてもいいよね」と緩やかに連載は始まった。
当初の予定では「おっさんシリーズ連載」という名目で全1巻で終了するはずだった。
そんなノリで連載が始まると、もちろん賛否はあったが関係者の誰も描いている本人さえも全く予想していない反響を読者の皆さんから頂いた。
(後にE編集長が「いっさい宣伝に力を入れてないのに読者の支持でこんなに話題になったマンガは始めてですよ」と複雑に嬉しいお言葉を頂戴した)
その後もありがたいことに読者の支持もあり、当初の全1巻の予定は変更となりE編集長や担当のKさんと話し合って全3巻で完結するように話がまとまった。
そんな訳で連載は続き相変わらず読者の反応もよく、映像化の話も驚くほどたくさん舞い込んできた。
ただ、僕としては初連載だし結末も描いていないのでKさんに頼んで映像化の打診が来たら全て断ってもらった。
とにかく連載に集中して描き続けた。そんな中あいかわらず読者の反応もよく評判になっていった。
そうなるとKさんから「評判もいいので長く続けられないかな?」と相談された。結末こそ決めてあったけれど話を広げるくらいは簡単なので、全5巻までならと快諾した。
しかし、それ以上は続けないと約束して頂いた。僕の飽きっぽい性格とダラダラ続ける内容ではないという僕の意思を汲んでもらった。
連載当時を振り返ると、僕はまだ年齢非公表で顔出しもしていなかったので本当に中年男性が描いていて、更には実話だという噂も増えていった。編集部への問い合わせも多かったそうですが、まったく実話ではありません。
当時25歳くらいだったけれど、僕としては背伸びするつもりもなく、ただ自分の未来予想図を勝手に想像して描いていたので中年層読者の共感するとの反応は意外でもあったが、なんとなく思っていた"男は歳を重ねてもたいして中身は変わらないだろう"という僕の勘はうまくハマった。
しかし、順調に進むかと思っていたが連載途中で病気になり長期休載を余儀なくされた。
正直、もうマンガは描けないだろうと落胆したのはよく覚えています。
それでも、「IKKIは待ちますよ」と言ってくれたE編集長には今でもこれからも感謝を忘れることはない。
いつかまた一緒にマンガを作りたいと強く願っている。
話は戻るけれど、中年層読者の反応もよかったが意外なことに若い女性読者からも「シズオかわいい」という反応もたくさん頂いた。
それは未だに僕の中で謎である。
そして、長い闘病を終えて本当に待っていてくれたIKKIで連載は再開されました。
用意していた結末に向かって。
後編へ続く→
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