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非認知能力特集その5 相手の気持ちを共有し、理解する「共感性」

全10回を週1のペースで更新する非認知能力特集も、折り返し地点を迎えました。第5回の今回は、他者の考えや気持ちを共有し、理解しようとする心理特性である「共感性」を学びます。そもそもの定義から、親の共感性の高低による子どもへの影響、そして周囲の大人の介入によって、子どもの共感性を育むことは可能であるのか、といった点に関する学びを記載していこうと思います。

共感性とは何か

まず、「共感」の定義から。広辞苑によると共感とは「他人の体験する感情や心的状態、あるいは人の主張などを、自分も同じように感じたり理解したりすること」と」あります。

そして、心理学の見地も交えた「共感性」という言葉を定義づけるとこんな感じ。
「他者の状況や気持ちに目を向け、気持ちを共有したり、理解したりする特性のこと」

ちなみに英語だとSympathy の訳語と紹介されることが多いですが、現在、共感や共感性を示す英語としては通例、Empathy が用いられています。歴史的には臨床心理学の中で「他者の内面をどのように感じとるか」といった意味で心理療法における重要な概念として用いられてきたのが、このEmpathy という言葉です。

共感性は2つに分けて理解する

1 情動的共感性
 相手の情動、感情を自分のものとして受け取ること。悩んでいたり、悲しんでいたりする人を前にして、自分自身も同じような感情になるといった経験がある人も多いはずです。

2 認知的共感性
 1のように相手の感情等をそのまま受け取るのではなく、自分と相手は分けたうえで、相手は悩み、悲しんでいるんだ、という感情を理解する過程を示すもの。1と2は同時にも別々にも起こりうる。

共感の概念

共感に含まれる3つの概念

1 感情の共有(感情的共感)
他者の感情と一致する感情を感じること
※情動感染 他者の情動が無意識・自動的に伝わる現象
2 感情の理解(認知的共感)
他者の感情や心的状態がわかること
3 向社会的関心(感情的共感)
他者への気遣い

研究でわかってきたこと


1 幼児の共感性(Radke-Yarrow & Zahn-Waxler 1984)
1歳半頃から、言葉を使い始める頃以降に、ケガをした人に物をあげたり、慰める行動などの向社会的声かけをするようになる。
2 6~7歳の児童(Feshbach &Roe 1968)
男女ともに、主人公が同性の場合の方が、異性の場合よりも共感得点が高い傾向にある。
3 5歳・7歳・9歳の男女(首藤 1994)
7歳児と9歳児は5歳児よりも、また女児は男児よりも、共感得点が高い。
4 小学校1・3・6年生(浅川・松岡 1987)
登場人物と協力者の関係が良い場合と、悪い場合についての共感性について調査。仲が良い条件の方が共感得点が高く、1年生より3年生の方が高いという結果。

仲が悪い条件では、学年が高くなるほど共感得点が低くなった。
仲が良い条件において、高学年になるにしたがって共感的理解が増えるという示唆が得られた。また、全般的に男性よりも女性の方が感情的共感の傾向が高いことも示唆された。

親の共感性が子どもに与える影響

1987年のフェッシュバックの研究によって得られた結論を記述すると…
1 虐待をする親は共感性が総じて低いこと
2 共感性が高い親の子どもは機嫌が良く、自分をコントロールできる傾向にあり、攻撃的行動が少なく、社会的孤立や抑うつ傾向も少ない傾向にあること
3 親の共感性の高さは、子どもの適応を促すとともに、子どもの不適応を阻止すること
4 親の共感性が低いと、子どもの不適応行動パターンをもたらしうること。

親のしつけと子どもの共感性との関連

子どもが悪い事をした時の、親の対応をパターン化。
1 他者志向的誘導
 犠牲者の気持ちに目を向けさせる
2 権力主張
 「やめなよ!罰が当たるよ!」と伝える
3 愛情を与えない
 しばらく無視することなど

この場合、上記の「1 他者志向的誘導」のみが、子どもの共感性を高めることが示唆された。

共感性を伸ばすためには?

親の共感性が高いと、子どもの共感性は高まっていくという示唆が研究によって得られています。共感性を高めるためのトレーニングとして、「共感訓練」というものがあります。ここで具体的に紹介しているとまた膨大な分量になってしまうため、ここではリンクを。会話の中で実践しやすいものだと思うのでおススメです。

https://www.direct-commu.com/chie/relation/kyoukan1/

幼い子どもと過ごしていると、「なぜここでおもちゃをまた広げるんだ…」とか「食事ではなぜこんなに散らかってしまうのか…」とか、とにかく親の思い通りになることの方が少ないような毎日です。でも、子どもたちはそういった中で感触を確かめ、学びを深めているのだと思って極力口を出さないようにしています。しかし、いつもそうというわけにもいかず、ついイライラしてしまって「早く〇〇しないと××(実際の罰)が待ってるよ」、「〇〇できるまであなたとお話しない」など、怒りに任せた対応をしてしまいがちです。

結果としてこれらの対応から、少なくとも共感性が育まれることはないようです。辛抱強く待ってやることや、「共感性高いよ私!」と自らを奮い立たせ、コミュニケーションを変えてみることこそが、子どもを変えていくのかもしれません。

私もまずは家庭内で実践してみようと思います。

今回は第5回として【相手の気持ちを共有し、理解する「共感性」】についての学びをまとめてみました。

Supportiaでの学びは、こうした非認知能力に関する最新の知見をもとに、教育の責任者と環境設計責任者とが議論を重ねながら学びの環境を整えています。体験イベントも年内は月に1回程度実施していますので、ご参加をお待ちしています。下記フォームからご参加いただくことができます。

https://docs.google.com/forms/d/1_qHGcyQbvZ0dWVjZn7xSClh9egprun34p5J8mTHOCPk/edit

また、HPもマインクラフト教室を中心にリニューアルしましたのでぜひ参考となれば幸いです。