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どうして英語ってこんなに難しいの?: (7)言葉の音楽

MediumというNoteに似た英語サイトがあります。(一部日本語コンテンツもあり)私は定期的に訪れて優れたライターさんの投稿を読むことを楽しみにしています。

登録制ですが、有料のPremium会員になって、フォロワーを100人以上得られると、自分の記事にが読まれる毎に報酬が支払われるというサイトです。

ですので、ライターとして副業(本業)を営まれる方が優れた記事をどんどん投稿されていて、非常に充実したプロフェッショナルなサイトです。企業に所属して、企業の利益のために書いているわけではないので、自由な投稿が魅力。

このサイトのTop Writerに選ばれたというある方が、次のようなことを書かれていて、さすがだなあと感心しました。

英作文は音楽的であるという内容でした。

文章の中に音楽を書きなさい

文章の93%はリズムで、文法は7%にしかならない。

https://medium.com/@har.narayan/how-i-became-top-writer-in-writing-3ff8541f0a96

日本語に訳してみましょうか。

内容にそぐわない(翻訳するとリズムが崩れます)拙訳に堕することは恥ずかしいことなのですが、原文の趣旨である音楽性を意識しながら、句読点を意識して英語的なリズムを持った翻訳文をを作り出してみたいと思います。

ですが、まずは英語原文。

文章長さに応じて色分けされています。

https://irocore.com/shishi-iro/
  • 5字は肌色(伝統的な日本語では宍色ししいろ

  • 2字は薄い黄色

  • 9字は薄緑

  • 4字は薄紫

  • コンマでつながれて途切れない長文部分は水色

この文章はこの五つのバリエーションを駆使して書かれています、

この文は、5字の英単語で出来ています。
さらに5字、書いてみましょう。
5字で成り立っている文章は素晴らしい。
でもいくつも続くと、単調になります。
何が起きているのかに耳を傾けて下さい。
文章はどんどん退屈になります。
文章の響きがつまらなくなってきます。
壊れたレコードの演奏のように。
耳は変化を求めるのです(ここまでの英文は全て5字で構成されています)。

さて聞いてください。
文章の長さを変えてみます。そして音楽を作り出します。
音楽です。
文章は歌います。
愉しいリズム、陽気な調子、そしてハーモニーを持つようになります。
短い文章を使うこと。
そして中くらいの長さの文章を用いてみます。
それから時には、読む人が単調なリズムになれてしまうと思えるときには、かなり長い文章、読み手にこれを読んでくれと語りかける、勢いあるクレッシェンド、ドラムロール、シンバルの強奏を伴った、血沸き肉躍る文章で、読み手の関心を失わせないこと、それがとても大事なのです。

なので、短い文章と、中くらいの長さの文章と、長い文章を組み合わせて書きなさい。読み手の耳を楽しませる音を作り出しなさい。言葉をただ書かないで。音楽を書くのです。

音楽の比喩が素敵です。

クレッシェンド(音量がすこしずつ増加して行くこと)する文章は興奮します。どんどん音が盛り上がってゆく音楽を想像してください。

唐突にドキッとする単語があると変化に富んでいいですね。耳に刺激的なシンバルでしょうか。ずんずん読み数勧めてゆける文章の背後からはダッダッダッダッという小太鼓の小気味よいの響きが鳴り響くようだと最高です。時を忘れて読みふけります。

音楽的な良い文章を書ける人は作曲家であり、名朗読者は指揮者ですね。

日本語はリズムカルな言葉ではないですので(五七調がもっとも日本語的なリズムですが、西洋音楽的なアクセントの要素がほとんどありません)こういう英語的な音楽的な文章を意識することは少ないかもしれませんが、テンポの良い文章というものはどの言語にも存在します。

日本語は平板に流れてゆく、音の長さによる音楽がありますね。まるでフランス音楽のようですね。

英語はビート音楽

英文を書くのに、英語のリズムを考えながら書くということが大切さです。詩を書くように、韻さえも意識して英文を書けるようになれるといいなと憧れます。

英語が音楽的なのは、すべての英単語にアクセントがあり、文章になると、さらに強調される語とそうでない語が生まれること。

このアップとダウンのイントネーションこそが英語の命

英語は強調される音(High、Accented)とそうではない音(Low、Non-accented)の交代によって出来ているのです。

ですので、日本語のように音の長さはあまり問題にはならず、日本語のように音素の長さが文章の作りを決定付けるフランス語の発音を英語ネイティブの人は非常に苦手とします。

Les Miserables ってきちんと発音できる?

歴史的影響ゆえに、フランス語からのたくさんの借用語のある英語ですが、そうした借用語を如何に発音するかでその方の教養が問われるところです。

例えば、ヴィクトル・ユーゴーの名作「レ・ミゼラブル」。

日本語においては「嗚呼、無常」という素晴らしい邦訳の題名でも知られていますが、Les Miserablesをあなたは英文の中でどう発音しますか?

わたしは以前、この言葉を英語的に、無理やりカタカナで書くと、レ・ゼラブルという感じで、英単語のMiserable(s)として発音しましたが、カナダ在住経験もあるフランス語の素養もある彼女は、しばらく思案してから、レ・ミゼラーブラという風に、フランス語式のR音でこの言葉を発声しました。もちろんラーはRで、最期のラはL。日本語では違った風に表記は不可能。

フランス語には英語のようなアクセントはなく、日本語式に平板に発声した方が通じます。もちろんRとLは区別して。

フランス語式のRは難しいですが、わたしが得意とする巻き舌式のRではよく理解されました。最後のsは発音しません。

英語になっているフランス語では、いろいろありますが、次のような言葉を知っているといいですね。

  • ランデヴー  rendezvous も平べったく日本語式に。

  • 「人生の喜び」という、ジョワダヴィーヴラ joie de vivreもできるだけ平べったく。Joy of Lifeはフランスがいいのです。

  • 日本語にもなっているデジャヴ  deja vu は、デイジャヴー。

シェイクスピアの弱強五歩格 

さて、脱線しましたが、英語の強弱アクセントが必ずしも全ての単語に活用できるわけではないという例でした。

本題に戻ると、英語のリズムを意識して会話する、文章を書くということは、わたしには目から鱗でした。

例えば、韻文で書かれているシェイクスピアのソネットでは、弱強五歩格 iambic pentameter というスタイルで詩が書かれることが決まりでした。

"/" の部分にアクセント(強拍)が来るのです

英語は書かれるようには発音されないので(english is not a phonetic language)、強拍と弱拍がどのような繰り返すリズムを意識しないといけません。発音された通りに綴らないのが英語。何とも難しい。ドイツ語なんて聞いた通りに書けるのに。

ネイティブではない英語の書き手は、英語の生理的なリズムである強拍と弱拍を意識して文章を書くのは無理かもしれませんが、リズムの意味を知っているならば、きっといい英文を書けるようになります。Mediumの方が言われるように、単語数を意識するのから始めて、いつかは音素の数まで意識できるといいですね。

ソネット第18番

有名なシェイクスピアのソネット十八番は弱強の五つのリズムで歌われる美しい詩。

Shall I compare thee to a summer’s day?
Thou art more lovely and more temperate:
Rough winds do shake the darling buds of May,
And summer’s lease hath all too short a date;
Sometime too hot the eye of heaven shines,
And often is his gold complexion dimm'd;
And every fair from fair sometime declines,
By chance or nature’s changing course untrimm'd;
But thy eternal summer shall not fade,
Nor lose possession of that fair thou ow’st;
Nor shall death brag thou wander’st in his shade,
When in eternal lines to time thou grow’st:
 So long as men can breathe or eyes can see,
 So long lives this, and this gives life to thee.

君を夏の日に喩えようか?
君はもっと素敵で穏やかだ。
荒々しい風は5月の可憐な蕾を揺らし、
夏のかりそめの命は短かすぎる。
太陽は時に暑く照りつけ、
黄金の顔が暗く翳るときがある、
美しいものみないつかは衰える、
偶然か、自然の成り行きによって刈り取られる。
だが君の永遠の夏は色あせない、
君に宿る美しさは消えることはない、
死神に死の影をさ迷っているとは言わせない、
永遠の詩にうたわれて時と合体するならば、
  人が息をし目が見えるかぎり、
  この詩が生き、あなたに命を与え続けるかぎり。

日本語訳
http://shaks.jugem.jp/?eid=60

「汝を夏の日に喩えようか」と美しい人の、やがては衰えてゆく肉体の美のはかなさ、そして、その美の永遠性を謳ったソネット (14行詩)。

アクセントは五つなのですが、前置詞を飛ばしてどこか一つを弱くして四つにして読むと、詩の響きが美しく際立ちます。

Shall I compare thee to a summer’s day?
Thou art more lovely and more temperate:

というふうに、単語単位ではなく、音素単位で区切るのが英語という言語。英語は本当に難しい。

上記のように、ToとAndのアクセントの部分を少し弱めに読んで、4つのアクセントポイントとして読むと美しい。

シェイクスピアはもう研究されつくされていますので、ネットでいくらでもこういうアクセントの勉強に役立つミームがたくさん見つかりますよ。

漱石の日本語と英訳された漱石

英文を書く上で、単調さを避けて、リズミカルな文章を書くということを心がけること。本当に大切なこと。読みにくい文章のリズムは、どこかずれているのです。

「どこかずれているのです」と平仮名ばかり並べると読みにくい。区切る部分が平仮名だけではわからないからですね。「どこか’ずれている」と日本語ネイティブの方は自然と理解するけれども。

英語はリズムを意識して書く話す、ということが大切なんだなということを忘れずにいたいです。日本語の名文にもリズムはあります。でもそれは英語とは全く違うもの。日本語は音そのままを綴るひらがな表記が可能ですが、漢字を使わないとリズムがどこか崩れてしまいます。

日本語とリズミカルな名文としてすぐに思い浮かぶのは、漱石の「草枕」。

国費留学生としてロンドンへ送られた英才夏目漱石は英語の達人ですからね。彼の書く日本語はどんなものでもとても音楽的。

明治の同時代の作家にも、現代においても彼のように音楽的な文章を書ける作家は数少ない。日本語における国民的作家と言われる由縁ですね。

67767595という日本語の音素で区切れますが、音読においては、「智に、棹させば、角が立つ」というふうに、リズムを作ってゆくと耳に心地よい。
英語もどこで区切るかはアクセントの位置次第。

この心地よいリズムを英訳すると

なかなかリズミカルに訳していますが、もっと短く意訳する方が良いですね。
でもリズムのある良い文章でしょう。英文は音読されるために存在するのです。
黙読が当たり前な日本語とは多分違います。

Approacheverything rationally と三字で命令形でいいきって、Andでつないでまた三字。次も同じような構成だけれども、三字ではなく、7字ですが、英語の音楽的には"Pole Along" に"in the stream of" に"emotions"なので、三字のようなもの。とても流れの良い英文です。これが英語の音楽ですね。

無料の英語音読を楽しむ

英語的な名文を味わおうと、無料のAudiobookをダウンロードして聞き流しているのですが、英語のリズムは確かに音楽的。

どんな英文が名文なのかを理解するには、音読を聞くということが良いようです。

わたしは児童文学が好きなので、バーネットの「秘密の花園 The secret garden」や「小公子セディ Little Lord Fauntleroy」、モンゴメリの「赤毛のアン Anne of Green Gables」や「アンの青春 Anne of Avonlea」エレノア・ポーターの「ポリアンナ Pollyanna」などを愛聴しています。

このサイトはパブリックドメインサイトですべて無料で、録音された朗読をダウンロードして利用することが出来ます。著作権フリー。

アメリカ発音ですが、教養ある方による音読の場合は、英語米語の違いはそれほどに気にはなりません。俗な言葉ほど、方言的な要素が際立ち、高等教育に近づくほど、標準と呼ばれるものに淘汰されてゆくのでは。

このサイト、おススメです。

イギリス英語に拘られる方はオーディブルAudibleを利用して、美しいイギリス英語を読まれる朗読者さんをさがしてみるとか。

YouTubeでもBritish Englishで検索されるといくらでも無料なものが見つかります。オースティンやディケンズはイギリス英語がいいですね。

イギリスのBBC放送やオーストラリアのABC放送では、美しいイギリス英語朗読に親しめますよ。

言葉の音楽、楽しんでくださいね。

ほんの小さなサポートでも、とても嬉しいです。わたしにとって遠い異国からの励ましほどに嬉しいものはないのですから。