デザイナーの逸品-03.カメラ
Leica 「M」
カメラ/ドイツ
デザイナーのつぼたです。この「デザイナーの逸品」で紹介するものは、デザイナーの日用品のような手軽ではないものばかりかもしれません。だけど、その価格に見合った価値がある!これは素晴らしい製品だ!一生使いたい!と感じた商品を紹介していきたいと思います。ちなみに、私が欲しくなるものは以下の5つの条件をクリアしていることが多いです。
1、シンプルであること
2、美しいと感じること
3、機能がしっかりしていること
4、持っている人があまり多くないこと
5、流行に左右されず、時代に対する耐久性が高いこと
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皆さん、カメラは持っていますか?今回の逸品は「Leica M10」です。正直なところライカのMシリーズは坪田の逸品どころではなく、カメラ界の逸品、マスターピースと言える製品です。プロのカメラマンでもライカを使用している方は多いです。奇怪遺産で有名な佐藤健寿さん、スナップの名手である木村伊兵衛、日本でも大人気のソール・ライターもライカユーザーです。
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カメラ遍歴
最初にカメラを買ったのは2011〜12年頃です。一人暮らしを始めて、自分で料理を作ることになりました。デザイナーのサガなのか「消えてなくなる」のが勿体無くて、写真で記録しよう!と思い、秋葉原の石丸電機でSONY「NEX-3」を購入しました。このカメラを購入した理由は大学時代のカメラに詳しい友人がNEX-3を使用していて良い写真を撮影していたからです。
数年後に昔の友人が「持ってるカメラを使ってないからあげる」とSONY「NEX-5」をくれました。この頃には少しカメラが楽しくなってきていました。楽しくなってきた反面、ファインダーのないカメラに不満も覚え出してきています。
またまた数年後、デザイナーが集まるワークショップでキヤノンのデザイナーKさんと知り合います。その方に「新しいカメラ何にしようか迷ってる」と相談すると「つぼっちは後々絶対フルサイズが欲しくなるから、フルサイズのカメラを選んだ方が良いと思う」と言われ、ここでセンサーのサイズに違いがあることを知ります。「せっかくキヤノンの方が教えてくれたからキヤノンにしよう!」とフルサイズのCanon「EOS 6D」を購入しました。
しばらくは6Dを使っていましたが、父親がカメラをやっていたことを思い出し、話を聞いてみると「レンズも本体も全部やる」と言われました。しかし、父親のカメラはすべてニコンでした。ここでニコンに興味が湧き、父親のレンズも使いたい!と思ってNikon「D810」を購入しました。ここでCanonとNikonの2台体制という謎の状態になっています。インドとベトナムに仕事で行った時もこの2台を持っていきました。
キヤノンとニコンを使用している時もライカは知ってはいましたが「高くて買えない」という印象でした。しかしある日、Leica「T」というカメラの存在を知ります。Leica「T」はアルミの削り出しのボディでミニマルなデザイン、非常に美しい造形をしていました。Leicaの中ではまだ購入できる金額であり、中古でこのカメラを購入しました。使用してみると写りの違いにびっくりします。陰影の感じが全然違う……でもLeica Tは夜に弱く、ISO1600を超えるとザラザラになります。色味は好きだけど夜に弱い。そしてファインダーがない。そこが気になっていました。その時からだんだんとカメラ業界の人たちと出会う機会が増え、周りでLeica「SL」や、Leica「Q」などを持ってる人がいて、良いカメラが気になっていきます。
カメラを買うために(一人暮らしなのに)へそくりを溜めていました。Leica「M」にするかHASSELBLAD「X-1D」のにするか……と迷った末、日常的に持ち歩きたいと考えてLeica「M10」を購入しました。センサーが絶賛されているLeica「M9」と迷ったのですが、故障リスク(M9はセンサーの剥離がありました)と、WiFiが付いているということでM10にしました。
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M10の写り
ライカMシリーズはオートフォーカスができません。チルトアングルもバリアングルもありません。ムービーは撮影できません。現代のデジタルカメラに当たり前として付いている機能が付いていません。不便で、だから持っていて楽しいカメラと断言できます。マニュアルのバイクに乗るような操作感です。
私は素人ながら色々とカメラを使ってきました。色々使ってきて感じるのがライカの写りの凄さです。凄いからこそ「同じモノを持っていてもプロと同じように撮れない」という実力不足を感じさせられ、カメラを使いこなしているプロの凄さを実感します。このカメラを手足のように使いこなせるようになりたい、と思わせてくれます。
多くのカメラマンによる「ライカの魅力」も読みましたが「言語化できない魅力」と表現されることが多いです。使ってみるとそう言いたくなるのも分かります。無理やり言語化してみると「階調の素晴らしさ」があるのではないかと感じています。カメラで逆光の場面で写真を撮ると影の部分が真っ暗になってしまうのですが、ライカだと影の部分も潰れない。まぁこれは個人的な意見であり、素晴らしさの極一部しか表現できていませんが。何枚か私の撮影した写真を載せます。
友人からLeica Mの写りに関してプロ同士がお話ししている動画を共有してもらいました。非常に分かりやすいので紹介します。
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Mのデザインと物作り
私がM10を買おうと決めたのは、シンプルで非常に美しかったからです。デザインが非常にシンプルで整理整頓されおり、プロダクトとしてのクオリティが高いです。Mシリーズの初代「M3」から既に美しく、現在では至高と呼ぶレベルに達していると感じているのですが、それでも年々改良されておりライカのモノづくりへのこだわりを感じます。
ライカMシリーズの始まりは1954年に遡ります。初代はM1ではなく「M3」です。当時のことは分かりませんが、現代では珍しいレンジファインダーという特殊なファインダーになっています。M3に始まり→ M2 → M1 → M4 → M5 → M6 → M7と進化していきます。2006年発売のM8からはデジタルになり、2017年のM10ではWiFiも搭載され、2023年にはM11が発売されました。
日本のデザインは昔のデザインを否定して「売るための“新しさ”」が求められると言われています。しかし、ライカのMシリーズは初代のM3から最新のM11までデザインがほぼ変わっていません(M5だけは少し異なります)。私もM10を持ち歩いていると「フィルムカメラですか?」と声をかけてもらうことが少なくないです。それほどまでにデザインが昔のままなのです。私はここに王者としての威厳を感じます。変な小細工をしない最強のブランドとはこういうことかと。
整理整頓されてノイズのないカメラは、被写体の人も変にカメラを意識しないので、自然に写れるのかもしれません。このシンプルさはライカを語るには避けられないと考えています。
奇怪遺産で有名なカメラマン佐藤健寿さんはライカのデザインと製品作りに関してこう話しています。
ライカはこれだけ高額な製品群であるにもかかわらず、白黒写真しか撮れない「ライカM モノクローム」、レンズ交換ができない「ライカQ」なども発売されています。ライカを見るとカメラ業界だけではない、目指すべき「製品作りの本質」が見えてくる気がします。
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ライカの文化
ライカには面白い文化があります。ライカのカラーバリエーションは基本的にブラックペイントとシルバークロームです。今でこそブラックペイントのライカがメインですが、昔のライカはブラックが最上位機種でした。シルバークロームを買った人たちが、購入後に黒く塗る「後塗りブラック」をすることがよくあったそうです。
他にも自分の生まれ年に製造されたライカを買うという「Birth year Leica」という文化もあるようです。文化を生み出せるプロダクトはそうそうありません。
Leica M10を購入して3年ほどが経ちました。不便な点が多いですし、正直バカ高い。私の人生で一番高い買い物でした。でも、持ち歩きたくなる、ワクワクするカメラだと思います。周りで持っている人がいて(可能なら)少し触らせてもらうと楽しいかもしれません。懐に余裕がある方は買ってみてはどうでしょうか。Mシリーズがしんどいなと感じる方はT(TL)シリーズもいいですよ。
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まとめ
ブランド:Leica
製品名 :M
デザイン:??
発売発表:1954 -
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SPOT DESIGN 坪田将知
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