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リハビリはケガした部位だけの問題ではない【Doctor Tのスポーツ・エクササイズ医学】

こんにちは、Doctor Tです。最近外食の機会が増え、私もついつい楽しくなって食べすぎるので動いて帳尻を合わせようとしています。誰でも得手不得手があるので食事と運動でうまくバランスを取りましょう!

さて、今回はリハビリについてです。リハビリと言うとケガした部分の回復というイメージが強いのではないでしょうか?

現場で学んだリハビリのピットフォール

ケガをした選手が、ケガの状況やその後の見通しについて不安がる声を聞いたり、復帰を急ぐあまり、十分にコンディションを整えたりケガの原因を改善したりする前に復帰し、新たなケガをしてしまうという場面を見ることがありました。現場にいるとつい目の前のことに囚われてしまい、全体像や目に見えない選手の感情を見失ってしまうことがあります。

そんな経験があったのでリハビリについて復習しました。見落としがちな2つのポイントをお伝えしたいと思います。①リコンディショニングと②メンタルへの配慮です。

もちろん、エリートアスリートだけではなく部活の子供たちにも当てはまることなので、当事者としてだけでなく、スポーツする人を見守る立場としても、知っておくと良いかと思います。Rebelo-Marquesら(2019年)の教科書によくまとまっています。

受傷から試合復帰までの経過

ケガに直接関係ない部位も使わないと弱る

ケガをすると、ケガをしていない部位にも影響が出ます。例えば、足首の捻挫の場合、ケガをする前のように歩いたり走ったりできなくなるので、トレッドミルができなくなります。普段トレッドミルで有酸素運動をしていた人が、代替案を考えずその運動をやめにすると有酸素運動の能力が落ちてしまいます。また、左足をケガすると、右足も使う量が減り筋肉がやせてしまいます。そうならないようにするのがリコンディショニングの目的です。

リコンディショニングは体の再調整

Re-conditioning、つまりもう一度調整し直すという意味です。ケガとは直接関係のない部位の能力をできるだけ維持改善し、ケガが治ったときに体全体を効率的に使える状態にしておくことです。ケガをするとついついそこばかりに目がいってしまいますが、一歩引いて全体を見渡すことも大切です。

リコンディショニングは可能な限り早期から

使わなくなった体の機能はすぐに落ちていってしまいます。なので、元気な部位は速やかにトレーニングモードに戻しましょう。ケガのために出来なくなるトレーニングもたくさんあるので代替案を考える必要があります。左足のケガであれば、走るトレッドミルの代わりに腕でエルゴメーターを回して有酸素運動としたり、右側の片足でレッグプレスやバランスのトレーニングを続けるなどです。

ケガをした部分が回復しても他の能力が落ちてしまっていると、パフォーマンスが元通りにならないのと、新たなケガをする原因になってしまうので注意しましょう!

もうひとつリハビリで押さえておきたいのが、心理的回復です。

気持ちの準備を忘れてはならない

リハビリの場面で見落とされがちなのが、選手の心の準備です。選手もプレイしたい、選ばれたいという気持ちがあるので弱音を吐くことは少ないでしょう。しかし、表向きはそうでも、恐怖があると、思ったように体を動かすことはできません。できる限り自信を回復させてあげることもお忘れなく!ポジティブな気持ちは競技復帰の確率を上げると言われています。

選手中心のケアへ

選手には現状をオープンに説明して選手本人が理解した上でリハビリのプランを決めていくのがいいと教科書にはありますし、実際そうだと感じました。必要以上に怖がらせる必要はありませんが、事実を伝えて対策を一緒に考えるのは大切なことだと思います。リハビリの過程で思ったように進まないこともあるでしょう。それを隠したり誤魔化したりするより、そこから目をそらさず、一緒に乗り越えるサポートをすることが選手の不安を減らし、自信をつけていくことになるのではないでしょうか。

まとめ

  • リハビリはケガをした部分だけの問題ではない

  • リコンディショニングを忘れない

  • リコンディショニングはできるだけ早期から

  • 気持ちのケアも忘れない

  • 選手が自立できるサポートを

スポーツ界にはまだ根性論が残っているのは否めません。強い気持ちは大切ですが、それに加えて冷静に理論的に手を打てばより早く安全に競技復帰させられるのではないかと思います。

私は選手に何かを提案するときには、できるだけその根拠を合わせて伝えるように心がけています。最初はめんどくさがられるかなと思っていましたが、徐々に耳を傾けてくれるようになってきた気がします。

今までは言われたことを聞く以外の選択肢がなかったのかもしれません。これからは、周りのサポートを得ながら、自分で決めて、自分の選んだ道を切り開き、自信をつけていってもらえたらと思います。

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