スタートアップに入社する前に知っておきたい!ストックオプションの基礎知識
こんにちは。Spiral.AI公式note編集部です。
あなたはストックオプションについて、どれくらいご存知でしょうか。
筆者の私は、Spiral.AIというスタートアップに入社していながら「スタートアップに入社するともらえる宝くじみたいなものでしょ?」という程度の認識しか持っていませんでした。
しかし、ストックオプションはスタートアップの報酬制度を理解する上で決して外すことのできないとても大切な要素です。
今回は、そんなストックオプションについて、かつて監査法人や証券会社でも勤務し、ニューラルポケット株式会社のCFOとして株式上場に携わったSpiral.AI CFO染原 友博さんに話を聞きました。
今回お話を伺った方
ストックオプションは、事前に決められた値段で自社の株を買える権利のこと
—— そもそもストックオプションとはどんなものなんですか?
染原 ストックオプションは金融商品の一つです。金融商品には、「コールオプション」と「プットオプション」の2種類があるのをご存知ですか?
—— コールオプションとプットオプション?
染原 コールオプションは、株式などの商品を将来のある期日までに、あらかじめ決められた値段で「買う」権利のことです。
一方、プットオプションは、一定の期日に、あらかじめめ決められた数量を、決められた価格で「売る」権利のことを指します。
—— 「コールオプション」が「買う」権利、「プットオプション」は「売る」権利なのですね!
染原 はい。ストックオプションは、「買う」権利を貰えるコールオプションの一つです。
従業員や経営陣が、一定の期間内で株を買いたければ、あらかじめ決められた期間に、決められた価格で、自社の株を購入できる権利が与えられる仕組みとなっています。
ストックオプションは権利。権利を使って自社の株を買い、マーケットで売ることで利益が出る。
—— なるほど。ストックオプションは、自社の株を事前に決められた価格で買う権利のことなのですね!実際にストックオプションを使って、お金が発生するまでにはどんな流れがあるのですか…?
染原 ストックオプションは、決まった値段で株を買う「権利」です。あくまで権利なので、実際に権利を行使して株を買わなければ売ることができません。そこでまずは、お金を払って株を買う手続きをします。
—— まずはもらった権利を使って、株を買うのですね。
染原 はい。上場したタイミングなど、ストックオプションの権利を実際に使って株式を購入できるタイミングがきたら、会社の口座にお金を払い込み、会社の株式を取得し(=会社の株主になる)ます。
—— 実際にはどれくらいの価格を払い込むのですか?
染原 払い込む金額は、事前に決められた株の価格と、買いたい株の数をかけあわせた金額を振込みます。事前に決められた株の価格を、「行使価格」といいます。
振り込んだら、その時点で会社の株主になりますので、上場株のように流通している株式の場合、任意のタイミングでその株式を売却することもできます。多くの場合、事前に決められた株の価格より、売るときの株の価格は成長していますから、その差額が利益になります。
権利をもらう際に支払が発生しないのが「無償ストックオプション」、権利をもらうときにも支払いが必要なのが「有償ストックオプション」
—— ストックオプションの使い方が具体的にイメージできました。ストックオプションは、さまざまな種類があると聞いたことがあります。ストックオプションの種類について教えてください。
染原 ストックオプションには、まず「無償ストックオプション」と「有償ストックオプション」の2種類があります。
—— 無償ストックオプションと有償ストックオプション?
染原 はい。無償ストックオプションは、ストックオプションの権利をもらうときに、お金を支払う必要がありません。
一方で、有償ストックオプションは、権利をもらう時にもお金を払い込む必要があります。
注意点として、有償ストックオプションも無償ストックオプションも、ストックオプションの権利を使って株式を購入するときには、お金を払う必要があります。
無償ストックオプションは、権利を使って株を購入する時だけ支払いが必要になり、有償ストックオプションは、権利をもらう時と権利を使って株を購入する時の2回支払いが必要です。
税務上のメリットがある税制適格ストックオプション
—— 無償ストックオプションは、権利をもらうのが無償で済み、有償ストックオプションは、権利をもらうためにお金が発生するのですね!
染原 はい。他にも「税制適格ストックオプション」(税制適格要件を満たしたストックオプション)と「税制非適格ストックオプション」(税制適格要件を満たしていないストックオプション)という分類があります。
—— 「税制適格ストックオプション」と「税制非適格ストックオプション」…?
染原 ひとつずつ説明しますね。
税制適格ストックオプションは、国の税法で、特定の条件を満たしたストックオプションのことを指します。
税制適格ストックオプションは、税務上のメリットを受けられることが特徴です。
—— 「税制適格ストックオプション」は具体的にどんな税務上のメリットを受けられるのですか?
染原 税務上のメリットをご説明するために、行使価格1株当たり3,000円と決められたストック・オプションを、1,000株分もらった場合を考えてみましょう。
1株3,000円で、1,000株買う権利があるので、すべての株を購入するために必要な金額は300万円です。
自社が成長して、株価が1万円になっていたとしましょう。そうすると、1,000株の価値は、1,000万円の価値に成長したということになります。
この場合、ストックオプションを行使し、事前に決められた300万円で株を買い、1,000万円で売った場合に、最低700万円分が利益になります。
さて、この場合、税金はどうなるでしょうか。
—— 税金はどれくらいかかるのでしょうか…?
染原 株の売買は、通常利益に対して約20%の税金がかかるようになっています。
なので、700万円の利益が発生した場合、利益に対して20%の税金がかかるので、約140万円の税金がかかるという計算になります。
これは税制適格ストックオプションの場合です。税制適格要件を満たしていないストックオプションの場合、税金が高くなる可能性があります。
—— 税制適格ストックオプションだと、20%の税金で済むのですね(それでも高い気がする)税制非適格オプションだと、さらにどんな税金がかかるのですか?
染原 話は変わりますが、ご自身の給料の税金ってどうなっているかご存知ですか?
—— え、給料ですか?所得税とか住民税とかでしょうか…?
染原 そうですね。給料には所得税や住民税がかかります。特に所得税には「累進課税制度」という特徴があります。
累進課税制度は、所得が高くなると税率も所得に伴って高くなるという制度です。
—— 累進課税制度、聞いたことあります!
染原 累進課税制度と違い、税制適格ストックオプションの株の売買にかかる所得税は一律約20%なんです。だから、700万円を儲けたとしても、税金は一律約140万円になります。
しかし、ストックオプションは従業員が働くことで、無償でその自社の株を買う権利をもらっています。
これって、給料の一部と考えることもできますよね?
—— たしかに!会社から支給される給料と見ることもできそうです!
染原 そうなんです。税制非適格ストックオプションの場合、自社の株は報酬として譲渡されることになり、給与課税がかかります。つまり、税率が最大55%の累進課税制度が適用されるわけです。
ほかにも、税制非適格ストックオプションは、権利を使って株式を買う時と、株式を売るときの2回課税タイミングがあります。
税制適格ストックオプションの場合は、株式を売るときのみが課税タイミングとなります。
税率と課税タイミングが、税制適格ストックオプションと非適格ストックオプションの大きな違いになります。
—— なるほど。有償ストックオプションと無償ストックオプション、税制適格ストックオプションと税制非適格ストックオプションでかなり大きな違いがあるのですね。とても勉強になりました。ありがとうございました!