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リモート時代のすごいチームとは:熱量を運用する/曽山哲人さん (株式会社サイバーエージェント 常務執行役員CHO)

(豊田)
こんにちは!スパイスアップ・ジャパン代表の豊田圭一です。

「人事」のHRと「トランスフォーメーション」のXを掛け合わせて「HR-X」と名付けた当チャンネルは、「トランスフォーメーション人材で組織を変革する」をスローガンに、「人事」と「トランスフォーメーション」、つまり「変革」というキーワードで様々な取り組みをしているゲストをお迎えしてお話を伺っていきたいと思います。

今回のゲスト「Mr. X」にはサイバーエージェント人事統括の曽山哲人さんをお迎えしました。曽山さん、こんにちは!

(曽山さん)
お願いします!

(豊田)
お願いします!
先日、曽山さんのブログ「デキタン」に書かれていた「リモート時代のすごいチームとは:熱量を運用する」を読んで、「あーーー、これはまさにそうだ!っていうのと、もう少し教えてー!」と思って、出演をお願いしちゃいました。

(曽山さん)
めっちゃ嬉しいです、ありがとうございます。

(豊田)
ちゃんといつも読んでいます。
「デキタン」とは、できるヤツ探求アメブロですね。

(曽山さん)
ずっと(探究)してます(笑)

リモート時代のすごいチームとは:熱量を運用する

(豊田)
今日はその辺りを教えていただきたいのですが、そもそもなぜあのブログを書こうと思ったんですか?

(曽山さん)
コロナになって、リモートが増えてきて、「リモートの中でのチームの熱量を上げるのって難しいですよね?」という声が社内や社外のイベントに登壇した時にもすごく多くありまして、「たしかにそうだよな、リモートは良いところもあるけど、難しさもあるから一回まとめてみよう」と思って、自分なりにまとめたのが、あの「すごいチーム」になります。

リモート時代のすごいチーム
1. 組織目標
2. 信頼残高
3. 言葉の開発
4. 期待と抜擢
5. 自走環境


(豊田)
なるほど。あれはサイバーエージェントとしてではなく曽山さん個人で考えたものなんですか?

(曽山さん)
そうですね、キーワードは人事で出したりとかはしましたけど、曽山の意見として出してまとめたという感じですね。

(豊田)
全部読んで、すごくもっともだし、そうだよなと思いながら読んでいたのですが、「熱量を運用する」という言葉は前からあったのですか?

(曽山さん)
この言葉は実は初めてなんですよ。生まれたばっかりなんです。
今回考えた時に今まで気付いてなかったけど、熱量というのを僕ら会社としては大事にしていて、「よく考えたらちゃんと運用していたな」ということに気付いたことと、コロナによって「リアル側」と「リモート側」で変化が出てきたので、「運用する」という概念を言った方が、むしろチームビルディングには効くだろうなと思って今回作りました。

(豊田)
ブログに書かれていた内容を読んでみると、別にコロナとか関係なしに元々すごく重要なエッセンスが含まれているなと思ったのですが、これまでの組織開発との違いとか、曽山さん、ずっと人事をやってらっしゃいますけど、時代の流れの中で変わってきたものってあるんですか?

(曽山さん)
そうですね、5つ項目を上げていますけど、豊田さんが仰る通り元々必要だったのがこの5つです。
なんですけど、リモートとかオンラインになって価値がすごく上がった5つなんですね。

1. 組織目標

(曽山さん)
1つ目に「組織目標」って書いていますけど、チームの目標が大事って言っていますけど、そんなの前からあっただろ!と。。(笑)
そうなんですが、1つだけ例に挙げるとコロナになると、見えないという関係性が増えるんですよね。座席の隣にいないとか。
なので座席に5日間いた人からすると、それが見えないということになると個人の目標だけでやっちゃうと「見えないから協力姿勢がでない」となります。
その結果、自分のことにしか目がいかなくなっちゃうので、組織目標がちゃんとあるチームの方が自分だけではなくチームも見るよねってそんな考え方なので、価値が上がるということですね。

(豊田)
オフィスに行ったら壁に書いてあったりポスターが貼ってあるじゃないですか。
自分の部屋だけにいたら分かりにくい可能性もありますもんね。

(曽山さん)
そうです、そうです。
なので、見えなくなるからこそ重要度が上がっている5つをまとめたって感じですね。

(豊田)
組織目標、組織としてゴールが必ずあるからすごく重要ですよね。
面白かったのが2番目の「信頼残高」って書いてあったのですが、僕ももちろん信頼で仕事をしているので。

2. 信頼残高

(曽山さん)
信頼残高は昔から社内用語だったり、一部の会社で使われている言葉で信頼を積み重ねようと。

(豊田)
信頼通貨みたいな話もありましたね。

(曽山さん)
そうです、通貨みたいな感じだよということでやりましたけど、残高の意識が今回のリモートによってさらに価値が上がっています。
これは何かと言うと、今までは出社してお喋りしていたり、仕事をガッツリやっていれば、それによって信頼が作れていたのですが、それが無くなりました。
今までのリアルがメインだった会社からすると信頼の作り方が難しいと社内社外問わずリーダーやマネージャーからの声が多いんです。
だからこそリアルの信頼の作り方も大事だけど、リモート環境での信頼の作り方も磨いていく必要があります。
例えば、1対1の面談をして悩んでいることを聞くということはリアルでもやっていたのですが、オンラインだったら頻度を増やすということも必要かもしれないし、お酒の場が無くなったならついつい喋る機会がないので、真面目でドライな関係が増えてしまうと、プライベートなところも本人が喋りたいのであれば話すような関係も必要だなということで、信頼の作り方に工夫が必要になったという感じです。

(豊田)
なるほど。
最近、雑談がなくていきなり本題に入ってアジェンダなくなったら終了!ってなることもあるじゃないですか。
タバコ部屋とか会議が始まるちょっとした雑談がなくなっているようなので、リモートだからこそちょっと気を遣う必要がありますね。
今、曽山さんと話をしていて気付いたのですが、ジャスチャーがすごいじゃないですか!

(曽山さん)
そうですね。

(豊田)
それは元々なんですか?それともリモートになって画面越しだから意識していますか?

(曽山さん)
画面越しなので、より意識しています。
元々僕はオーバーリアクションですけど、画面上でどう伝えるか、画面の空いている余白に情報をどう入れるか、これは情報のメッセージ性が大事だなと思っています。

(豊田)
それと書いてらっしゃったのが、信頼を獲得するのは成果を上げることって当たり前のことであるんだけど、リモートだと仕事で成果を出すということをより見せる意識を持つということなんですか?

(曽山さん)
そうです、そうです。
例えば1日の小さな成果でもいいんです、大きな業績を上げろということではなくて。成果物を見せると、成果物出してくれたと上司とか同僚を感じるので成果物というものが信頼のすごく支えや積み重ねにもなると。
これ意外と盲点なんですよね、皆さん。
みんな、信頼作るために、お互いの趣味とか共通項があった方がいいんじゃないの?とか。これも大事なところなんですが、それをずっと話しても成果出さない人は信頼できないので、忘れちゃいけないポイントです。

3. 言葉の開発

(豊田)
それと繋がってくるのが、3番目の「言葉の開発」ですよね。
恐らく先ほどの“信頼”というところとすごく結びついてくると思うのですが、どうですか?

(曽山さん)
まさにそうです。
これは何かというと、いま豊田さんとオンライン上で話をさせていただいている通り、この画面上だけでの情報になったことによって、対面よりも情報量が減っているんですよね。

(豊田)
五感に訴えるものがないですからね。

(曽山さん)
そうです、その部分が減るということでいうと逆の効果は、1対1の画像の視覚は強くなっているということと、いま私が出している言葉のパワーの重要度が上がっているんですね。

(豊田)
そこに集中できますからね。

(曽山さん)
なのでそこの部分で言葉がどれくらい強いものを持っているかによって、相手側の動きも変わってくるというのが言葉ということですね。
言葉は相手側の記憶の残るとか刺さらないと意味がないので、他の人の言葉を借りて伝えているだけで動かない場合は、オリジナルの言葉を伝えないといけないんですね。
だからこそ言葉の開発をしないといけないという考え方でして、これは社長の藤田晋の言葉なんですけど。

(豊田)
僕らは人前で話すということをずっと前からやってきたけど、得意じゃない人がどうやったら人に刺さる言葉を作れるんだろうって思ったのですが。

(曽山さん)
めっちゃ難しいですよね。
正直言うと、言葉というのは本当に難しいんですが、積み重ねで毎日のように使って、「この人動くかな?」って実験をしておくと段々慣れてくるんですね。
言葉で人を動かすというのは「場数」であるというのが僕の経験値です。

(豊田)
場数は間違いないですよね。

(曽山さん)
多分豊田さんもプレゼンでよく人前で喋るじゃないですか。
プレゼンを一番最初にやられた頃より今の方がプレゼンがお上手なっているんじゃないかな。
元々エナジーとかパッションはお有りになっていたかと思いますが、やっぱり場数は大きいですよね。

(豊田)
元々、赤面症ですよ。
赤面症で足がガクガク震えて、全然人前で話せませんでした。

(曽山さん)
場数もですし、訓練、学習ですよね。

(豊田)
いや、本当そうですね。
ちょっとだけ話がずれるのですけど、今、「変革マインドセット」の研究を早稲田の研究所とやっていて、例えば逆境の時代にどういう人が成果を出せるんだろう、どうやって組織や個人を変革していくだろう、そういう人たちが持っているマインドセットってなんだろう?と要素分解をした時に、一番重要だと出てきた要素は”Continuous Learning”といって「継続する学習意欲」、あるいは「飽くなき探究心」と言っているのですが、とにかく好奇心持って学び続ける姿勢を持っている人こそが変革に強いと出てきましたね。

(曽山さん)
あー、やっぱりそうなんですね。
でも継続して学習している人ってめっちゃ強いですし、逆に伸び止まる人は「学習を止めちゃう人」ですね。
なので、すごく危機感があるんですよね。
成長する人ってまず狙うものがあるので、ビジョンが。
その為に、今の現実の自分を掲げると「なんて差があるんだろう」ってギャップに気付いて、その為には他の人から学ぶとか本を読むとか何か学習をし続ける意欲は本当に高いですよね。

(豊田)
いや、本当そうですね。
そういう意味では組織のリーダーとして次の4つ目も繋がってくると思うんですが、「期待と抜擢」ってあったじゃないですか。
いまの曽山さんの話と期待値ってリンクしてくると思うんですけど、リモートだからこそより強く意識しているんですか?

4. 期待と抜擢

(曽山さん)
そうです、期待することや抜擢することはやらないよりやった方がいいとみんな思うと思うんです。
なんですけど、オンラインになると見えなくなるので、隣で頑張っている様なんていう情報は入らないんですよ。
リモート社会によっていま何が起きているかと言うと、「安心できる人に仕事を任せる」と言う状態がどんどん高まっていて、仕事ができる人に仕事が集中しているんですよ。
なぜかと言うと、分からない人に仕事を渡すわけにはいかないので。

(豊田)
しかも目の前で見れていないですからね。

(曽山さん)
そう、見れてないから。
なのでそういう状況になるのが自然な流れなんです。
新しく入った新卒1年目とか、当然才能は豊かなわけで、その才能を生かすということをやった会社と全く気付かずにやらなかった会社、この1、2年で大きく差が出ると思います。

(豊田)
すごく差が出ると思います。

(曽山さん)
出ますよね。
人にはそれぞれ才能があって、それを生かそうという風にやるには、まずは期待をかけること。
抜擢なんて漢字二文字は忘れてしまっていいので、「君にはこれを期待しているよ」と言うことが受け取る側からしたらどれだけ嬉しいことか。

(豊田)
いやー、本当ですよね。
人は期待されたり、役割を任せられるとかに粋に感じたり、期待に応えようってあるじゃないですか、そこですよね。

(曽山さん)
人間は反応する動物なので、もらったら返したいということが普通なので。

(豊田)
抜擢人事はサイバーエージェントは元々ずっとやっていますからね。

(曽山さん)
そうなんです。
放っておくと期待をかけない、期待をかけないと当然期待をかける人数が減ってしまうので、抜擢する人数も自然と減っていってしまうのが今の自然な流れなんです。
なのでまず期待をかけるということを自分の部下に出来る限りやってあげようとすることにより、打てば響く人が出てきて、お!この人もっと伸ばせるわ!と思ったら抜擢すればいいので、期待と抜擢と2つに分けているのですが、セットで言っているという感じです。

(豊田)
曽山さんが貴社のチームリーダーたちに今の話をした時に、どうやって期待をかけるやり方や声がけの仕方、ヒントなどはありますか?

(曽山さん)
そうですね、一番大きいのは「責任者宣言」というやり方を伝えています。
責任者を宣言する・させるですね。
例えば自分が営業マネージャーで5人若手のメンバーがいるとして、どこどこクライアントの責任者ねってお客様を責任者にしてもらうということが分かり易い例です。
もしくはこの5人で毎朝新聞を読むミーティングがあったとしたら、そのミーティングの責任者は誰々ね、という風にどんなに小さなことでもいいので組織の為になることで責任者を任せるということが、期待をかけるということの第一歩だということで、これは相手が1年目でもできるはずだから責任者として何か任せてくれというのはマネージャーの勉強会でもよく伝えています。

(豊田)
そしていまのコメントがそのまま5つ目の「自走環境」に繋がっていきますね。

5. 自走環境

(曽山さん)
そうなんです。
自走環境というのは、自分で走れるということなので怖かったら走らないわけですよね。
失敗したら怒られるとか左遷させられるみたいにドラマみたくなるとやらないので、安心して走れる環境を作らないといけないということで、自走する一番良い方法は何かと言うと、何をやりたいかを本人に言ってもらうということです。
これやりたいですというものが一番突っ走るわけで、それいいじゃん!と言ってあげればいいので、それが結果的に先ほどの責任者宣言にも繋がってきますね。

(豊田)
リモートじゃなくてもすごく必要なことだけど、リモートだからこそより強く意識しながら伝えなければいけないということですね。

(曽山さん)
その通りです。
リモートになると、相手が見えないことで不信感を持つということがあり得るわけですね。
そういう時に不安症のマネジメントとかリーダーの人がやりがちなのが、いわゆるマイクロマネジメントです。管理型の細かいマネジメントをやりたくなっちゃうんです、怖いから。
なんですけど、受け手側からすると窮屈になるので、実際リモートって短パンを履いていたり自由なわけですよ。
その自由が邪魔されるというのは相性が良くないので、マイクロマネジメントをやるくらいだったら、言わせてやってもらうという風にした方が圧倒的に成長もするし、言わせてやらせてみて、いいじゃん!って認めてあげるということはそれ自体も期待をかけることなんですよね。
なのでみんなどんどん頑張ってくれるというのはありますね。

(豊田)
この5つ、組織にとってすごく重要な要素だと思ったし、ブログの中にも「組織の熱量を上げる」というような書き方をしていたのですけど、ふと我に返った時に曽山さんに聞きたかったのが、組織の熱量ももちろんそうなんだけど、その前提としてリーダーであったり「個人の熱量を上げる」にはどうすればいいのか曽山さんの考えってありますか?

(曽山さん)
はい、個人の熱量を上げるっていうのは色々な会社の人事の方が悩んでいるテーマのキーワードで言うと“主体性”なんですよ。
主体性を上げるために僕が一番大事にしている考え方は「主役感」なんです。主役の感覚ですよね。
その人の人生、その人の職務、その人の役割をその人がまるで主役のように演じられているかどうかがすごく大事で、営業で言えば自分が提案する商品を決めて、お客様へ自ら提案すると、これは主役感になり得るだろうと。
上司からこれを提案して来い!と言われ続けるだけだと主役感は減ってしまう、やらされ仕事になってしまいます。
なのでその主役感を事務職であっても、エンジニア職であっても、営業職であってもそれぞれの主役感は持てるはずなんですよね。
自分で決めている、自分で考えている、そういった状況をどれだけ作れるかっていうことがすごく大事で、その為に一番簡単なのは言わせて、やらせるという本人の考えを聞き出してあげて、それを認めてあげる、この繰り返しがその人の主体性、主役感のアップに繋がると思います。
それが結局、よし、やろう!私が言った以上はやろう!という熱量に繋がると思うので、個人の熱量だとそこじゃないかと思います。

(豊田)
ありがとうございました。
聞きたいこと全てに明確な答えがあるので、どれだけ毎日考えてアクションを起こしているんだろうって聞きながら思いました。

(曽山さん)
いえいえ、とんでもないです。

(豊田)
短い時間ですけれども、すごく濃い話を聞けました。

さて、HR-Xではこれからも「人事」と「トランスフォーメーション」というキーワードで、様々なゲストをお呼びしてお届けしたいと思いますのでよろしくお願いいたします。

曽山さん、今日はどうもありがとうございました!

(曽山さん)
ありがとうございました、皆さんありがとう!

豊田圭一(株式会社スパイスアップ・ジャパン 代表取締役)
上智大学経済学部を卒業後、清水建設に入社。海外事業部での約3年間の勤務を経て、留学コンサルティング事業で起業。15年以上にわたり、留学コンサルタントとして留学・海外インターンシップ事業に携わる。
その他、複数の起業を経て、現在は日本を含めた8ヶ国で、グローバル人材育成を中心に様々な事業を行っている。
2018年、スペインの大学院 IE でリーダーシップのエグゼクティブ修士号を取得。
著書は『とにかくすぐやる人の考え方・仕事のやり方』『引きずらない人は知っている打たれ強くなる思考術』など全18冊。
早稲田大学トランスナショナルHRM研究所の招聘研究員、内閣府認証NPO留学協会の副理事長も務める。

豊田が2020年6月に出した著書『ニューノーマル時代の適者生存』

株式会社スパイスアップ・ジャパン
 公式ウェブサイト https://spiceup.jp/
 公式フェイスブック https://www.facebook.com/SpiceUpJP/

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