【構想に約3年】生成AI研究〜機能コンセプト決定まで|スピークバディ開発チーム座談会vol.1
生成AI旋風が巻き起こった2023年、数多くの生成AI関連サービスが生まれました。その流れの中で、AI英会話「スピークバディ」も9月にAIキャラクター(バディ)と自由な会話を楽しめる機能「バディチャット」をリリースしています。
ーー注目の最新AI技術を活用した機能はどう生まれたのか?
ーーその時、開発チームでどんな会話が?
今回のnoteでは「バディチャット」開発チームで行った座談会の様子をレポート。スピークバディのサービス開発に対する考え方や機能開発の進め方を、メンバー自らの言葉でお届けします。
(・・といいつつ、実際の座談会は日本語・英語がミックスだったので、できるだけ忠実に、日本語でお届けします。)
技術研究は2020年頃、GPT-2から
ー開発チームでは生成AIが話題になるずっと以前から、技術研究を開始していたとか。その頃のことを教えてください。
AIエンジニア・Nick(以下N):OpenAIの文章生成AI技術であるGPTについては、3年前、2020年頃に発表された「GPT-2」からチェックしていました。GoogleやFacebookも同じように会話AIのモデルを発表していて、いつものテクノロジー研究の一環で情報を追いかけていた、という感じです。
その後GPT-3が出たときがプロジェクトの「始まり」だったと思います。APIによって非常に使いやすくなり、とても簡単にサービスに取り入れられるようになっていたので、Michaelや立石さん(※スピークバディ代表)も交えて、プロトタイプを作ったりしていました。
ーそれはどのようなプロトタイプ?
N:バディ(※スピークバディでの英会話相手となるキャラクター)とニュースについて会話できるようなものです。でも、それが何につながるとも思えず。。。会話の質が良くなかったからかな。それで、他に優先度の高いこともあったし、一旦置いておいたんです(笑)。
でもその後、モデルがアップデートされて、大きく改善されていることに気づきました。会話の質がすごく高くなっていて、これはできるだけ早くサービスに取り入れなくてはと思いました。
転換点になったSlackbotのプロトタイプ
ー学習体験や学習効果といった観点から、藤原さんはこの頃どう見ていましたか?
エデュケーション リード・藤原(以下F):この頃にMichaelにPlayground(*)を見せてもらい、初めてGPTに触れたのを覚えています。(*Playground:OpenAIが提供する、GPTを手軽に試すことができるウェブベースのインターフェース)
最初はちょっとテック寄り過ぎるのでは?と感じて。でも説明を受けながら触っているうちに、GPTに何ができるのかを理解してきて、これはとても役に立ちそう、と思い始めたんです。
この頃初めて、Slackbotを開発に活用しましたよね!あれが本当に私達にとってゲームチェンジャーでした。
Slackbotを使うことで、GPTが会社に何をもたらしてくれるのかを本格的に理解したんです。それで、サービスやユーザーのためにこの技術の可能性を最大限引き出すには、どう活用すべきなのかを考え始めました。
デザイン リード・Michael(以下Mi):最初にニュースのプロトタイプを作ったのが2021年で、GPTモデルがアップデートされた後にPlaygroundやSlackbotで色々試してみたのが2022年。そこから3-4ヶ月、コンセプトを考えたり、具体的な機能を考えたり、行ったり来たりしていましたね。
プロティ(※スピークバディの公式キャラクター)と自由に話せればいいのか、プロティが何かアドバイスをすると良いのか、もしくはバディと話せるといいのか、レベルチェックテストに盛り込むのがいいのか・・・それぞれ全く異なるアイデアだったので、どういう機能にするべきか、それをやるとどうなるのか、何につながるのかなど行ったり来たりして考えていました。
プロトタイプで社員がデモ。そこでの発見とは?
ープロティと話せるプロトタイプが全社に案内されて、Slack上で試しましたよね。覚えています。
Mi:そうです、「4つのテーマの中から会話のテーマを選んで、プロティと話す」というデモを会社の皆さんに案内してやってもらいました。この結果が非常に興味深かったんです。
Mi:まずは「実際問題、プロティとの話題がない」ということ。
F:プロティについての情報量が少なくて、何を話せば良いか分からなかったんですよね。
あともう1つ。参加してくれた人たちの英語レベルもバラバラだったので、「"話せれば"、もっと楽しい」んだろうなという発見がありました。会話のテーマを与えられるだけでは、会話が続かないという声があったんです。
会話を楽しむ、というのは簡単ではないんですよね。やっぱりフリートークには何かサポートが必要だと確信しました。
ー「自由に話す」だけでは学べない、という発見があったということ?
F:それはもともと分かってはいたので「再発見」という感じです。この時の最大の発見は先に挙げた「会話が弾む相手」についてでした。
プロティと旅行について話すといっても、ロボットの彼が自分でどこかに行けるのかが分からなければ、どんな話題を振れば良いかが分からない。
一方で、日頃レッスンでよく話しているバディ、例えばZacやAshleyであれば話せる話題もあるんです。
会話が弾むには、会話相手にキャラクター性や具体的なバックグラウンドが必要なんですよね。これがこの時の最大の気付きでした。
あと、そういえばプロトタイプにGPTのサマリー機能も搭載していて、それもとても印象的でした。試してみたメンバーのリアクションも良く、とても好評でした。
最終案をスピークバディ独特の観点で絞り込み
ー最終的に開発する機能は、どのようにして決定したんでしょうか?
F:2022年の冬頃、アイデアリストの絞り込みをしたんですが、いろいろな観点があったのでそれぞれのアイデアにスコアをつけて考えていったんです。
ープロティと話すProtty Chatと、現在のBuddyChatにつながるReal Life Success、これが最終的に残った2案ですね。決め手は何だったんでしょう。
F:決め手は・・・。【Fun】つまり楽しく学べるかという観点で考えたんですよね。楽しく、かつ学びがあるもの。
iOSエンジニア・添野(以下S):Protty Chatは【DEV】つまり開発のしやすさの点で最後まで残っていたんですが、やっぱり【Learning】学習効果が低いというので決め手に欠けました。あと毎日プロティと挨拶していると、きっと飽きちゃいますよね…(笑)
F:Low Engagement(※継続的・頻繁に利用されにくい)というのが落とす決め手でしたね。
学習はお祭りではないので、継続的に使って、継続的に楽しんでもらえるものでなくてはという観点で、この案は厳しいと考えました。
それに比べてReal Life Success、現在の「BuddyChat」に繋がるC案は、その時すでにあった学習体験を土台にしています。そこにGPTを活用することで、本来やりたかった学習のサイクルを進化させ、ある程度完結させられると思ったんです。
ー検討する観点の列に、もう一つ【AI】もありますね。これは?
PdM・松永(以下Ma):これは「AIっぽさ」「AIらしさがあるかどうか」です。今回の機能開発は、AI英会話スピークバディのAIらしさを広く世の中に訴求するチャンスだと思っていたので、この観点が重要だと思っていました。
その点で、僕は当初【AI】が高い案を推していました。
C案は正攻法だけど、何の機能なのかが一言では説明しづらい。それがネックだなと。でも、Low Engagement、継続できず一発芸で終わるかもしれないということに皆が早々に気づいて。
そして「Real Life Success」というコンセプトが出てきたくらいから、チームがGPTを機能ではなく役割で捉えるようになったと思います。フリートーク・会話生成という"機能"ではなくて、英会話を習得していく上での「学びの場」と「実践の場」の架け橋になるという”役割”です。それなら正攻法でも有りだ、と考えるに至りました。
ー現在の機能に繋がるC案に決まった時、皆さんどう感じたんでしょうか?
F:私はずっとC案推しだったので、やった、良かったと(笑)
S:僕はAIらしさ・派手さ・わかりやすさからProttyChatのB案を推していて。C案は少し地味になってしまうのではと懸念がありました。
でもRicoがデザインに入って、かなりFuturistic(未来的,革新的)に仕上げられたのを見て、全然地味じゃなかった、むしろスピークバディの次元を変える機能になるな、と大きく印象が変わりました。
Ma:僕も同じです。Real Life SuccessのC案は構造的には絶対正しい。でもこれを選ぶ場合には、特に「新しく見せる」・「楽しく見せる」デザインが重要だと思っていました。そこにRicoのデザインがハマったんです。
UI/UXを担当したのは入社直後のデザイナー
ーRicoの話も聞いてみたいですね。Ricoは、この機能案への印象を覚えていますか?
UI/UXデザイナー・Rico(以下R):私は案決定後に入社したのですが、検討案を一通り聞いた時、BのProtty Chatを進めるべきだったのでは?と思ったんです。
早く実現できるし、競合もすぐに類似の機能を出すだろうから、スピークバディも、完璧でなくとも早期に何か出しておく必要があるんじゃないかと思って。
でも、案がすでに絞り込まれているなら、決まっている案でベストを尽くそうと思いました。
Ma:このアサインについては、デザイン リードのMichaelにも話を聞いてみたい。入社直後のRicoに大きな仕事を任せたわけで。
Mi:色々タイミングが重なったんですよね。彼には入社直後から別のプロジェクトでのデザインをお願いしようとしていたけど、少し待ちが発生していた。僕は僕で、育休取得の予定があって。ちょうどそこにBuddyChatのデザインが重なって。
採用のときに見ていたPortflioから、今までの自分たちのスタイルとは一味違う仕事をしてきたと理解していたし、PdM・松永さんも今回の機能のUI/UXには特に「フレッシュさ」を求めていた。
長くスピークバディにいる自分ではなくRicoがやることで、よりフレッシュなデザインになると思ったし、エデュケーション リードの藤原さんと一緒に仕事を進めれば学習体験デザインの経験にもなる。多少チャレンジングだとは思ったけど、誰にとっても良い判断だったと思います。
Ma:そう話したのを僕もよく覚えてる。初めてで、超重要なプロジェクトだけど、Ricoならできると話して、アサインを決めましたよね。
この後、開発はいよいよ学習体験の設計に入っていきます。
他のどの観点より「学習効果」を重視して企画検討・絞り込みを行い、生成AI/GPT技術を一機能としてではなく「実践の場と学びの場の架け橋」の役割を果たすために活用することにした開発チーム。この後「バディチャット」リリースまで何が起こるのか。その後の話もぜひお楽しみに!
聞き手:PRチーム
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