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【仕上げ】AI英会話はどこまでリアルで役立つものになれるか|「バディチャット」開発者座談会vol.3

生成AIを活用した、AI英会話スピークバディの新機能「バディチャット」開発チーム座談会レポート、第3弾(最終回)。
言語を学ぶ人の一番のペインは「学んで理解しているのに、いざとなると話せない」こと。それを解決するための機能として企画が始まった「バディチャット」開発プロジェクトについて、第1回では数多くの機能案から絞り込むところまで第2回では具体的な機能設計・体験設計の流れをお伝えしました。第3回の今回は、リリースまでどのように機能を磨き込んでいき仕上げたかをお伝えしていきます(最終回!)。

スピークバディ開発チームのうちフリートーク機能「バディチャット」に携わった皆さん

「会話のリアルさ」と「新鮮さ」を叶えるデザイン

ー「現実の会話」に近づけるために、様々なUI上の工夫があったのですね。確かにスピークバディの会話画面は他のAI英会話アプリの会話画面と全く異なります。

PdM・松永(以下Ma):はい、無機質に文字が並ぶ画面ではなく、相手のいる会話となっています。その方が、よりリアルですから。プロトタイプ版を社内で試した際の「よく知っている相手だからこそ会話が弾み、楽しい」という発見を活かしています。

UI/UXデザイナー・Rico(以下R):ユーザーインタビューをすると、多くの方が「相手がキャラクターだと分かっていても、少し緊張した」と言っていました。リアルさを追求しているので、これは狙い通りです。もちろん緊張しすぎないか、つまりリアルさを追究しすぎて、負荷が重くなりすぎていないかは引き続き観察してチューニングしていきます。

iOSエンジニア・添野(以下S):機能案を絞り込んでいる段階では、この方向でどれだけ革新的なものに仕上げられるだろうかという懸念もありましたが、実際にデザインされた画面を見て、全く異なる印象を受けたのを覚えています。先進的な技術を詰め込んでいて、それでいて生き生きとして新鮮味があるというような……

R:「バディチャット」については、一つの"ブランド"のように扱ってデザインしました。機能ロゴも作り、いくつかの方向性の中から、新しい印象になりそうで、かつ話す楽しさを感じられそうなもの・親しみやすさを持てそうなものを選びました。

いくつか出ていた機能のロゴ案

「言語習得論」と「使いやすさ」、両方向から磨いた

R:会話後のフィードバック画面にも試行錯誤がありました。こちら(↓)は初期のデザインですが、1つの画面に「会話の要約」「タイムラインの振り返り」「フィードバック」「機能への評価」など多くの情報を詰め込んでいます。

1画面に詰め込むと、どうしても文字やボタンは多くなり、情報過多やユーザーの混乱を招きます。その後「評価」・「要約」「タイムライン」、「フィードバック1点目」「フィードバック2点目」…と画面を分割していきました。

フィードバック(指摘や提案)を見る前に、自分が何と言ったのかを確認する段階も入れました。これはエデュケーション担当の藤原さんからの「言語を学ぶ過程では、自分の表現と正しい表現との違いに気づくことが有効」という助言を受けてのものです。

自分の表現を確認する画面→フィードバックを見る画面と分けることで、
しっかりと受け取められるようにした

エデュケーション リード・藤原(以下F):はい、"Noticing the Gap"という考え方です。答えを最初から見せると、考えるステップを省いてしまいがちなんですよね。実際に言語を教える授業でも「あなた(学習者)はこう言いました」「私(教師)ならこう言います」「何が違いますか?」と見せ、学習者が自分で違いに気づいて学べるように促しますが、それをUIにも反映しました。
「毎回タップするのが面倒なのでは?」という声もありましたが、実際にはタップしてフィードバックを見る楽しさも演出できたと思います。

Ma:学習観点では、フィードバックのページが一番重要ですが、一般的には、このページが一番飛ばされがちですよね。だからこそ、デザインにあたっては「フィードバックを見たくなるように」というリクエストをしました。

F:また、フィードバックに関しては「最大2つ」と絞っています。全てにフィードバックを返すことももちろんできますが、初日は面白くても継続していくうちにほぼ確実にキツくなります。「ロールプレイ後の指摘は2、3に留める」というのが何十年も続く言語を教える現場での一般的なやり方。アプリでもそれは変わらないと考え、絞りました。毎日続けるものなので、「もうちょっと知りたいな」という程度で終えるのが良いのではないでしょうか。

「上達に必要なもの」以外は削ぎ落とす

R:フィードバックの他にも、会話の結果を示す画面については多くの議論がありました。初期にはミッションの達成度合いとあわせて、文法や語彙、など複数の指標で評価する案もありましたが、やめました。現実の会話で重要なのは「目的が果たせたか」ですし、学習上重要なのは「学んだ表現を使えたかどうか」だからです。

また、何か数字…例えば「会話時間」や「使えた単語数」を出す案もありましたが、こちらも採用しませんでした。単語数や会話時間が増えたからといって英会話が身に付いているわけでは無いんですよね。あまり意味がない指標で学習者を惑わせることのないよう、かなり要素を削ぎ落とした画面になっています。

途中経過の画面デザイン案。
英会話力を養うことに寄与しない指標はすべて削ぎ落とした

「会話のリアルさ」、最後の肝は実装とスピード

ーリリース直前まで、細かな調整が行われていましたよね。実装段階でのエピソードがあればお願いします。

iOSエンジニア・添野(以下S):そうですね、これまでのどの機能よりも「行けるところまで仕上げてから世に出したい」と思い、調整を繰り返しました。

「学び」と「現実」の間の架け橋となるのがこの機能なので、現実の疑似体験になっている必要があります。だからこそ入る瞬間からシームレスにリアルな世界観に浸かって欲しい。それを演出するために、機能を起動した直後からBGMを流す演出を入れたり、ミッションが出るカードの動きをなめらかなアニメーションにしたり。画面の切り替わりもほとんど感じさせないよう工夫して、ボタンが出るタイミングも会話開始から少し遅らせることでリアルさを保つなどしています。

会話相手のキャラクター(AIバディ)からの返答スピードもかなり調整しましたね。自然な会話として成立するためにはちょうど良い速度で返される必要がありますが、初期は10秒くらい待たされたかな…。フリーズしているように見えてしまうので、画面上ではRicoが用意した「考え中」であることを示す吹き出しのアニメーションを出して、一方でサーバー側でもLarkinがかなり工夫してくれて自然な会話として成立するようになりました。

サーバーエンジニア・Larkin(以下L):まさに今回の実装における最大の課題はOpenAIのAPIと、AIエンジニア・Nickが構築した社内ツール、そしてアプリを同時接続することでした。そしてバディの返答速度は、サーバー側からとAIが返答を返す社内ツール側、2か所から影響を受けていました。サーバー側では、不要なタスクをバックグラウンドに回すようロジックを追加しましたが、Nick側でかなりの魔法(笑)を使ったはずです。

AIエンジニア・Nick:そうですね、結構頑張りました(笑)。僕がやったことは主にGPTのプロンプトの変更です。大きい1つのタスクを小さなタスクに分割したり…でも、まだ改善できると思います。この頃はずっと「スピード」・「クオリティ」・「コスト」の3つをやりくりしていましたね。

教育・AI・UI/UX各方面から集まった開発チーム

ー最後に、今回のプロジェクトを振り返ってのコメントをいただけたら。

AIエンジニア・Nick:振り返ると、リリースまで3年くらいかかっていて……。忍耐強くなりました(笑)。でも最終的にはしっかり検討した分、良いものが出来たと思いますし、実際にサービスのLTVにも貢献しているのを見ると嬉しいですね。

デザイン リード・Michael(以下Mi):NickがGPTのことを推し進め続けてくれたおかげで、この技術を学習にとって一番良い形でサービスに取り入れることができ、「Real Life Success」を再現することができました。

もう1つ、Nickが作ってくれたSlackBotは本当に素晴らしかったですね。スピーディにテストできたことや、新しいアイデアを思いついた時すぐに検証することができたのは、このプロジェクトを進める上で大きかったと思います。

また、入社直後だったRicoが一機能のデザインをやり抜いたのもとても大きなことでした。

UI/UXデザイナー・Rico:このプロジェクトは私が入社してから初めてのプロジェクトで、サービスを深く理解する前でしたが、チームの皆が本当にサポートしてくれました。MichaelはUXに関して様々な方向付けをしてくれましたし、藤原さんからは言語習得に関する多くの知見を共有してもらいました。常に新しいことや開発ツールにも挑戦することができて、本当に嬉しかったです。

iOSエンジニア・添野:この機能を作る中で、多くの取捨選択をしましたが、妥協はしていないと思います。自分達が納得できる形で取捨選択ができたのはとても良かったですし、スピークバディで開発者として働いていて良かった!と思えたことでした。これから先、何年も思い返すプロジェクト経験だと思います。

サーバーエンジニア・Larkin:今回のプロジェクトはチームメンバーの情熱や良いものを作りたいという気持ちが伝わってくるプロジェクトでしたね。だからこそ一緒に開発していて本当に楽しかったです。AIについても言語習得についても多くの学びがありました。
これからも、この機能をより良くしていくために、ユーザーのフィードバックもあるでしょうし、検討することが沢山あると思うので、今はそれを考え始めるのが楽しみです。

教室では難しいことが、アプリなら可能になる驚き

エデュケーション リード・藤原:リリース後にユーザーインタビューをしたんですが、ほとんどの人がバディチャットについて肯定的なコメントをくれているので、その声が聞けて本当に嬉しいです。

以前に教室で日本語を教えていた時に、ロールプレイも頻繁にやっていたんですが、その度に、生徒に役割や設定を理解して演じてもらうのが難しいなぁ…と感じていたんです。でも、アプリを使えばそれが簡単にできるんですよね。会話のミッションを達成した時にさりげなく知らせる、というような、むしろ教室では難しいこともアプリならできることに感動しました。

コンテンツ制作は…..今回はいつも以上に難しかったですね。返答の自然さやそれが学習効果上どう作用するのかを考えながら、Nickと100を越す課題について議論しました。いつも思うことですが、細かな点まで行き届いた設計をすることが大事で、それは最新技術だったとしても変わりません。ユーザーもその点を高く評価してくれていますしね。今回も、そうできたことがプロジェクトの成功につながっていると思うので、一緒に進めてくれた皆さんに感謝しています。

PdM・松永(以下Ma):今回のプロジェクトを通して、スピークバディの開発チームの強みやスタイルに確信を深めることができたのではないでしょうか。目的を見据えることや議論の進め方、サービスの磨き込み方、協力関係の築き方など。
それから、スピークバディのメンバーはそれぞれが個性的で多様なスキルを持っていますが、共通しているのは、ユーザーを驚かせたい、ユーザーの学習に貢献したいという想い。それを持ち続けながら、今後もサービスを進化させていきましょう!


全3回でお届けした、AI英会話「スピークバディ」のフリートーク機能「バディチャット」開発チーム座談会。なかなか表には出ないアプリ開発チームの様子をつぶさにご覧いただけたのではないでしょうか。これからも「真に習得できるAI英会話」の提供に向け邁進していきます!

聞き手:PRチーム

▼ご紹介したフリートーク機能「バディチャット」利用方法

AI英会話「スピークバディ」
音声認識、会話AI、デジタル音声等の技術を活用した英会話レッスンを行うことができるストレスフリーなAI英会話アプリ。2024年7月現在、累計350万ダウンロードを突破。2021年、AI英会話アプリとして初のグッドデザイン賞受賞。従来の人との対話ではなく、感情豊かなAIキャラクターと対話をしながら発音やフレーズ、単語、イディオムなどを学ぶことが出来る新しい英会話学習サービスです。「第二言語習得理論」に基づいた学習モードで英会話の習得をサポートするほか、機械学習や自然言語処理によって、発音を採点することができます。

https://app.speakbuddy.me/

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