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【UX検討】「理解しているのに話せない」言語習得最大のペインを乗り越えるために|「バディチャット」開発者座談会vol.2

生成AIを活用した新機能「バディチャット」の開発チーム座談会レポート、第二弾。前回は、生成AIの研究をはじめてから機能案を出し、絞り込むところまでをお伝えしました。今回はいよいよ体験設計に入っていきます。


「教室で起こっていること」から体験設計

ー機能案が絞り込まれ、いよいよデザインに入っていくわけですが、設計はどのように進んだのでしょうか?

エデュケーション リード・藤原(以下F):コンセプト検討の段階で「Real Life Successー現実での成功体験ー」を実現しようということになり、通常のレッスンの後にAIバディ(※スピークバディでの英会話相手となるキャラクター)と会話する、ということまで決まりました。そこで次のステップとしては、この「会話」の役割を深く考え始めました。

デザイン リード・Michael(以下Mi):どのような「会話」が有効なのかを考える上で、僕たちはあらためて「教室での生徒の体験」について振り返りました。「Real Life Successー現実での成功体験ー」の必要性をより具体的に考えるためです。

「抽象」と「具体」、つまり「コンセプト」と「具体的な機能」との間を行ったり来たりする……これは僕らの開発プロセスによくあることです。この行き来を経て、実装する機能や体験の流れを決めていきます。

このステップは大体の場合エデュケーション リードの藤原さんも一緒に進めます。いつも彼女の「英語学習現場での体験」「実際に教室で起こっていること」を聞く事は、UXを高めていく上で非常に有用なんです。

「理解しているのに話せない」という語学学習の最大のペイン

ー今回の「教室での生徒の体験」の振り返りから見えてきたこととは?

F:教室で英語を教えていると、生徒の多くが「理解できたし、教室での会話練習はうまくできる」「でも教室の外に出ると全然話せない」と言うんです。
「学んだことを理解できているのに、実際には使えない」、これは語学を勉強している人の最大のペインです。そこで、学んだ知識を使えるようになるための「最後のステップ」はどうあるべきか、あらためてそこをクリアにするために、「アプリ内の学習」と「現実」の違いを確認しました。この違いこそが、生徒が求めている「最後のステップ」だと思ったからです。

こちらの図にあるように、その違いを
REAL-LIKE(現実感のある会話体験)
BURDEN(重荷、学習者にとっての負担や難易度など)
LEARNING(学び・習得につなげるための機能や体験)
の観点でまとめています。

「アプリ内の学習」と「現実」の違いをまとめた図

こうして見ると、アプリ内(スピークバディ ワールド)は、「安心で快適な環境(コンフォートゾーン)」であることが分かります。話す内容が用意されており、難易度調整・翻訳などの言語サポートもされていますから。でも実際に話せるようになりたい学習者は、もう少しだけ、チャレンジしたいのかもしれない。「もう少し現実に近くて、でも負担が重すぎはしない体験」を求めている、そう考えました。

「学び」と「現実」にもう一つの世界を創る

F:そこで、表に「GPT」という列を追加して、もう少し現実に近い体験を提供するにはどうしたら良いかを考えてみたんです。

"アプリ内の学習"と"現実"の架け橋を「GPT」で実現するために

この体験において必要と考えたのが、先に出た三つの観点に沿った、「現実世界の模倣」「負担の軽減」「学習効果」です。

まず「現実世界の模倣」については、現実的で自然な会話ができるように、会話相手はいつものレッスンで話し慣れているAIバディたちとしました。プロトタイプを試した時に、知らない人・架空の相手と話すのは不自然で非現実的だと分かっていたからです。相手の発言をテキストに頼らず理解するよう促すというのもこの時に挙がっていた機能アイデアです。

そして「負担の軽減」のために、AIバディ側の発話内容は難易度を調整することにしました。いくら「現実的で自然な会話を」と言ってもネイティブスピーカーのようなスピード・語彙・会話量で話されては学習者には難しすぎます。また、必要に応じて返答のヒントも得られるようにしようとも考えました。

そして「学習効果」について。実際の世界では自分が話した内容を正確に振り返ることは難しいし、相手から率直なフィードバックをもらうことも難しい。でもスピークバディでは提供可能で、学習効果があります。とはいえ、学習者の全ての発言に細かく指摘をするとストレスにもなるし消化不良にもつながるので、指摘の焦点を絞り、指摘をもとに再度練習したり学べるような機能にしようとしました。

「負担の軽減」と「学習効果」の間でのバランス

F:そしてこうした体験設計をする上で「負担の軽減」と「学習効果」の間では良いバランスを取りたいと思いました。

スピークバディは重要なコンセプトとして「学ぶことを楽しめる」ことが良い学習だと考えていることもあり、できるだけ負担を軽減しながら効果的な会話練習ができる場を用意したいと考えたんです。

Mi:学習体験に必要な要素から機能リストを作成し、同時にNickとSlackBotのプロトタイプで実現可能性を探る・・・それを行ったり来たりしていました。

実際のSlackBotで作成したプロトタイプ画面。"be busy with-"の表現を学ぶレッスンの後にいくつかのトークテーマを選ぶというものだった

AIエンジニア・Nick(以下N):Slack上で動くプロトタイプを使ったことはとても有用でした。アプリを作る必要がないので、UIを考えるプロセスを飛ばしてGPT技術の実用性やロジックの検討に集中できたし、全員が日頃からSlackを使っているので、すぐにテストできましたからね。

「こんな機能できる?」と案があがるとすぐにSlackBotで試作して使ってみました。それで「いいと思ったけど、あまり学習のためにならなそう」「意味なさそう」など判断して、また次の検討をして・・・それを非常にクイックに回していけたのは、今回SlackBotを活用したからです。

チーム内の目線合わせにもSlackBotが活躍

PdM・松永(以下Ma):早い段階でNickがSlackBotを用意してくれたおかげで、開発チーム全体が同じものをイメージしながら進めたのは本当に良かった。これまでにないものを作る時、抽象度の高い企画と具体的な機能がずれないようにすることは非常に大切。今回は手元で具体的なものを触りながらイメージの食い違いなくコンセプト・機能を固めていくことができたのがとても良かったですね。

ー「抽象と具体の間を行き来する」という話が多く出ていますが、それは「スピークバディ」の開発チームではいつも行われているのでしょうか?

Ma:はい、いつもです。常に「学習体験における肝」が何なのかを考えていて、抽象的なアプローチでないと外しかねないし、UIに落としていく上では当然具体性も必要なので。

F:非エンジニアである私にとっては、技術的に可能なことを、時間的制約・コスト的制約も踏まえながら理解しきるのが難しいこともありますが、SlackBotを通じて「GPTを通じて何ができるのか」と「それをやった時の実際の感覚」を掴むことができたのが本当に良かったです。

この後、必要な機能リストを作るプロセスに移っていきました。MichaelとNick、私で作りたい機能をリスト化し、エンジニアがそれぞれにかかる開発工数を見積もって。当時、ChatGPTが話題になり始めた時期だったこともあり、「なるべく早くリリースしたい」という社内からの声も多かったんですよね。それで、開発に要する期間と必要性などを天秤にかけながら、取捨選択していきました。

これをやりながら、同時進行で、ここにある機能を実際にSlackBotで作ってみて、実際うまく動くかをチェックして…、という作業も進めていました。どこまで厳密に採点するか、複雑な会話を求める機能とするかによって、工数や学習者の難易度も変わるので、この辺りもかなり行ったり来たり、でしたね。さらに詳細な仕様は、デザインに入ってから決めたところもあります。

ーこの辺りからデザインにも入っていったのですね。いよいよ機能の具体化・磨き込みに入っていきます。UI/UXデザインを担当したRico、どのようなことを考えながらデザインを進めましたか?

「リアルな会話」ぽさにこだわったUIデザイン

UI/UXデザイナー・Rico(以下R):UI/UX・デザインにおいても、コンセプトの議論を踏まえて、可能な限り「現実世界の疑似体験」をできるようにしたいと思いました。そのため、いくつか通常のレッスンでの画面と変えた点があります。

まずは、ボタンを減らし、AIバディ側の発言を表示する「吹き出し」を小さくしたこと。リアルな会話に近づけ、AIバディとの会話に没頭してもらえるようにしたいと思いました。

学習体験を検討している段階のFigma

R:また、さらにリアルにするために、学習者が沈黙してしまった時や返答しなかった時、AIバディから「…Hello?」と話しかけるようにしました。
実際の会話でも相手が急に黙り込んだら「どうしたの?」と声をかけますよね。でも何秒くらい沈黙を保つのかは、ユーザーを不安にさせ過ぎないように調整が必要でした。先ほど藤原さんが言っていたように「リアルさ」と「学習者にかかる負担」でちょうど良いバランスを取りたかったので。

また、デザイン上大きなチャレンジだったのは、学習者がAIバディの発言を聞き取れなかった時の対応です。ボタンを押すのではなく「もう一度言ってくれる?」と発言してもらえるよう促そうとしています。現実世界にボタンはありませんから!

「アプリの中での会話」を「現実の会話」にいかに近づけるか、それを常に考えていました。


「アプリでの学習」と「現実世界」の架け橋を作るべく進むバディチャット開発。この後もさらなるサービスの磨き込みが続きます。
引き続き、リリースまでどのように仕上げていくのか。次回(最終回予定)もぜひお楽しみに!

聞き手:PRチーム

▼「バディチャット」の利用方法

AI英会話「スピークバディ」
音声認識、会話AI、デジタル音声等の技術を活用した英会話レッスンを行うことができるストレスフリーなAI英会話アプリ。2024年1月現在、累計300万ダウンロードを突破。2021年、AI英会話アプリとして初のグッドデザイン賞受賞。従来の人との対話ではなく、感情豊かなAIキャラクターと対話をしながら発音やフレーズ、単語、イディオムなどを学ぶことが出来る新しい英会話学習サービスです。「第二言語習得理論」に基づいた学習モードで英会話の習得をサポートするほか、機械学習や自然言語処理によって、発音を採点することができます。

https://app.speakbuddy.me/



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