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日常の救急車:浴室で助かる命と失くす命

17年間3施設のスーパー銭湯の運営に携わりましたが、その間に、施設内でお客さまが浴室内で亡くなられた事故が1件ありました。

閉店間際の男子露天風呂で、スタッが、湯船で溺れている男性を発見し、すぐに引き上げましたが、既に脈が確認できない状態だったのです。

心臓発作を起こし、そのまま意識が戻ることなく湯船に沈まれたものと思われます。

非常に残念な出来事でした。


スーパー銭湯の運営をしていると、頻繁に救急車のお世話になります。

特に、冬場は毎週どこかの施設の報告書に、緊急搬送を行なったというレポートがあるとことも珍しくもありません。

脱衣所で裸になる時や、急に熱いお湯に浸かる時、急激な体温の変化がヒートショックを起こし、心臓に負荷がかかったり、のぼせて意識がとんでしまうなどが主な原因です。

自宅のお風呂より死亡リスクは低い

 
現在、日本で年間に、お風呂で起こる死亡事故は19,000件あります。この数は、令和3年の交通事故の死亡事故約3,000人の6倍以上になります。

交通事故の死亡者数は、全盛期は3万人を越えていましたが、今はその十分の一以下になっています。

安全に関する車の性能が上がったこと、シートベルトの着用義務や飲酒運転の罰則の強化が功を奏したけ結果です。

安全に関する技術の進化や社会環境の改善が結果を良好な方向に向けてきました。今後の自動運転の進化などを考えれば、今後もさらに減る可能性は大きいでしょう。

一方、お風呂で起こる事故の大半は、ヒートショックなど、心臓にかかわるもので、高齢者が大半を占めています。


高齢化社会が進む中で、こちらは残念ながら今後ますます増加すると考えられます。

救急車は来るが、命は助かる


お風呂で起こる死亡事故19,000件の中で、溺死は5,000件です。気を失って、溺れてしまうことが原因です。

残りの14,000件は、溺れる前に、発作をおこし、それが原因で亡くなっています。

発作を起こした場合、発見が早けるば助かる可能性は高まります。発作による心肺停止や、意識を失ってそのまま湯船に沈むリスクも低くなるのです。

銭湯や、スーパー銭湯は基本的に絶えずだれかの目があります、発見されやすい環境でもあります。


前述した、露天風呂で亡くなったお客様は、不幸なことに、閉店前の人が少ない時間に一人で来店されていました。


屋内の浴室には数名のお客様もおられましたが、人のいない露天風呂の湯舟の中で発作を起こし、気を失ってしまわれたのです。

湯船に、誰か他のお客様が居れば、溺れることはなかったでしょう、

年間に、100万人近い入浴者がある中で、頻繁に救急車を呼ばなければならない仕事でしたが、逆説的には、自宅でなかったことが助かったとも考えられます。


救急者を手配した数だけ、助かった命があるとしたなら、おふろ屋の仕事は誇れることなのかもしれません。


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