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星座解説第3回 はくちょう座編

どうもyoutubeチャンネル「宇宙冒険隊」のHommaです!

今回は、はくちょう座の天体について解説していきたいと思います。


はくちょう座の探し方

はくちょう座は夏の代表的な星座で、探すのも簡単です。

夏の星空を見上げると、天の川の中ほど、もしくは天頂から少し低いところに3つの明るい星があります。

最も明るい星がこと座のベガ、2番目はわし座のアルタイル、そして3番目がはくちょう座のデネブであり、これらは夏の大三角を形作ります。

はくちょう座はこの中でも一番北側にあります。大きな翼を広げたような十字の形が目印です。

はくちょう座の探し方

日本では古くから七夕の星として親しまれておりベガが織姫星、アルタイルが彦星に対して、はくちょう座は二人を結ぶカササギとして登場します。

はくちょう座はその大きな十字の星の並びから、南十字星に対し北十字星とも呼ばれています。

はくちょう座α星はデネブ、β星はアルビレオ、γ星はサドルといいます。どれも白鳥の体の一部が名前の由来となっており、それぞれアラビア語で、デネブは「尾」、アルビレオは「くちばし」、サドルは「胸」を意味します。

はくちょう座拡大

これらの星を探すことができれば、はくちょう座の全体像を掴むのは簡単だと思います。

はくちょう座α星デネブ

はくちょう座α星のデネブは一等星の中でも16番目の明るさですが、実は質量で太陽の15倍、大きさは108倍、光度も太陽の5万4400倍以上と、恒星としては非常に大きくて明るい白色超巨星であり、一等星の中でもかなり大きい恒星です。

サイズ比較

それにも関わらず、肉眼でベガやアルタイルと同じくらいの明るさに見えるのは、デネブだけが極端に地球から遠く離れているためです。

ベガが25光年、アルタイルが17光年の距離があるのに対し、デネブは1800光年もの距離にあります。

もし、ベガのあたりにデネブがあったら、三日月と同じくらいの明るさで見えると言います。

北天の宝石「アルビレオ」

はくちょう座といえば、こちらの星も欠かせません。

アルビレオは肉眼では単一の星に見えるが望遠鏡で覗くと二つの星に分かれて見える二重星です。

一方は金色に、もう一方は青色と、色がはっきり異なり、天球上で最もコントラストの鮮やかな二重星の1つです。

その美しさのため「北天の宝石」とも呼ばれ、宮沢賢治は「銀河鉄道の夜」でこの2つの星を、輪になって回るサファイアとトパーズになぞらえています。

アルビレオ2

重星には、二つの星がお互いに回る連星と、実際には離れているが見かけ上二重星に見える、見かけの重星の二種類あるのですが、アルビレオに関しては長年どちらなのか分かっていませんでした。

米国の天文学者Phil Plaitさんは、2018年4月に公開された欧州宇宙機関(ESA)の位置天文衛星「ガイア」の観測データを使えば、連星かどうかを確認できることに気づき、PlaitさんのTwiiter呼びかけに応えたトリノ天体物理学観測所のRonald Drimmelさんはガイアで得られたデータをもとにアルビレオの二つの星の距離と固有運動を調べました。

その結果、2つの星は別々の方向に異なる速度で動いていることが分かり、見かけの二重星だと結論づけられました。

さて、次は他の天体に注目していきましょう。

ウォルフ・ライエ星雲「三日月星雲」

サドルの右上に、望遠鏡を向けると、三日月のような形に見える星雲があります。これはNGC6888といい、その形から三日月星雲とも呼ばれます。

ウォルフ・ライエ星というとても珍しい種類の星である「WR136」によって形成された星雲で、ウォルフ・ライエ星雲に分類されます。

ウォルフライエ

ウォルフ・ライエ星とは、外層部が強烈な恒星風によって吹き飛ばされ、高温の中心核が露出した大質量星です。WR136は太陽の60万倍明るく、21倍の質量で、5.1倍もの大きさとなっています。

この星はやがて超新星爆発を起こし、粉々に吹き飛んでしまいます。

惑星状星雲「NGC7027」

NGC7027は固有名を持ちませんが、最も小さく、最も明るく、そして最も盛んに研究されている惑星状星雲です。色鮮やかな姿からjewel bug(カメムシの仲間)のようであると言われています。

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惑星状星雲とは、太陽ほどの重さの星が一生の終わりに穏やかに外層部を吹き出して形成したものです。

非常に小さく、他の惑星状星雲の大きさが1光年であるのに対し、わずか0.02光年の大きさです。また、できてから約600年と非常に若い星雲であり、初期段階の惑星状星雲であることが知られており、時間をかけて撮影することで、時間による変化を調べるため、星雲の形成メカニズムを知ることができます。

画像をよく見ると球殻状の構造が幾重にも広がっているのが分かります。中心星から何世紀もの間、球対称またはらせん状に、ゆっくりと静かにガスが放出されていたことで、このような球殻状の構造ができたと考えられています。

中心星で何かが起き、ガスが特定の方向へ激しく放出されるようになったことで、中央付近のクローバーの葉のような構造ができたのではないかとも考えられています。

星の静かな死

星の死の話が出たので、これについてもう少し詳しく触れておきましょう。

前回、暗黒星雲などのガスの濃いところで重力による収縮がおこると星の赤ちゃんである原始星が誕生することを話しました。

収縮が続くと、中心の密度や温度が上がり、水素(H)がヘリウム(He)に変わる核融合反応が発生します。この核融合のエネルギーで星は安定的に輝き始め、主系列星が誕生します。現在の我々の太陽はこの主系列星です。

しかし、質量が小さいために、核融合反応が発生する温度に達する前に収縮が終わってしまうと褐色矮星となります。

主系列星に話を戻しましょう。

主系列星では水素の核融合反応が発生し、このエネルギーによって輝いています。太陽の0.46倍より大きな星は中心のヘリウム(ヘリウムコア)がゆっくりと収縮します。すると、重力エネルギーの解放で熱が産生され、この加熱によって外層は大きく膨張し、その結果、表面温度が下がり、星の色が赤くなっていきます。こうして赤色巨星に進化します。

質量が太陽の8倍より小さな星はヘリウムコアの内部でヘリウムから炭素(C)や酸素(O)が作られる核融合反応が発生します。

すると、星の表面温度が再び上昇し、同時に、星の外層は静かに星から離れていき、星の周りに惑星状星雲が形成されます。先ほど紹介したNGC7027も惑星状星雲ですね。

中心部の炭素と酸素のコアはそのまま白色矮星となり、惑星状星雲の中心星として残ります。

この白色矮星では核融合反応が起こらず、エネルギーが生成されないため、星の死となります。

星の死

私たちの太陽も、50億年後には赤色巨星へと進化したあと、このような惑星状星雲を作り、白色矮星になります。

それでは、デネブやWR136のような太陽の8倍以上の質量の大質量星はどうなるのでしょうか?

巨大な星の激しい死「超新星爆発」

太陽の8倍以上の質量の大質量星はやがて中心部で、炭素や酸素からネオン(Ne)やマグネシウム(Mg)を、ネオンやマグネシウムからケイ素(Si)を、ケイ素から鉄(Fe)を合成する核融合反応が次々と起こっていき、まるでタマネギのようにたくさんの元素の異なる層が形成していきます。

星の死2

そうしていくうちに中心部では電子が陽子に吸収され、中性子コアが形成されます。中性子には電気的な反発力がないため、重力によって急激に収縮し、中性子星となったあと、外層部も中心に向かって急激に落下します(重力崩壊)。

そして、外層部のガスが中性子星の表面へ落下した時、その反動で、星は大爆発を起こします。これが重力崩壊型超新星爆発(Ⅱ型超新星爆発)といいます。

はくちょう座の右翼の中ほどに望遠鏡を向けると、天女の羽衣のように美しく、大きな星雲を見ることができます。これは網状星雲というのですが、超新星爆発によって吹き飛ばされた外層のガスが超新星残骸として宇宙空間に残って輝いているものです。

網状星雲

網状星雲は5万年ほど前に爆発した星の残骸であると考えられています。

ところでこの爆発によって、それまで合成された酸素、炭素といった重元素(水素やヘリウム以外の元素)がばらまかれるのですが、これによって、それまで水素とヘリウムしかなかった宇宙に重元素が増えていきました。

つまり、我々の体や地球を作っている元素は、以前、どこかの星によって合成されたものなのです。その意味で私たちは「星の子」であると言えます。

初めて発見されたブラックホール「はくちょう座X-1」

外層部が吹き飛んだあと、中心部はそのまま中性子星として残ることが多いですが、非常に大きな星の場合、ブラックホールになることがあります。

はくちょう座X-1は初めて発見されたブラックホールです。

ブラックホールとは、太陽の40倍以上の質量の星が超新星爆発を引き起こした時、中心核が凄まじい勢いで圧縮されることによって形成される天体です。

強大な引力のため、光でさえ脱出できません。

光を出さないのでブラックホールの姿を見ることができませんが、しかし、ブラックホールが他の星に近接していると、その星のガスを渦を巻きながら吸い込みます。

ブラックホールに近いほどガスは高速回転するため、摩擦によって高温となりX線を放出します。

はくちょう座X1想像図

はくちょう座X-1があると考えられている位置には、HD226868という青色巨星があり、この星は何かに引っ張られているように運動することから、ここにブラックホールがあると天文学者は結論づけました。

はくちょう座X-1の発見以来50年近く、ブラックホールの探索は続けられ、現在では、銀河系内におよそ60個ほど見つかっています。また、昨年2019年4月にはブラックホールシャドウの撮影に成功し、ブラックホールの周辺については徐々に分かってきました、2020年7月には量子力学と一般相対性理論を用いたブラックホール内部の新説も登場しました

このようにブラックホールに関しては非常に盛んに研究が行われていますが、まだまだ謎が多く、今後の研究に期待できます。



はくちょう座の天体についての解説は以上になります。今回は「様々な星の死」をテーマとして、関わりの深い天体を紹介しました。

星の一生を実際に星雲という形で見ることができるのは非常に面白いですね。

はくちょう座は今が見頃の星座なので、ぜひ今回紹介した天体を双眼鏡や望遠鏡を使って覗いてみてくださいね!

次回は同じく夏の大三角を構成すること座!今回登場した惑星状星雲についてもう少し詳しくお話します。

画像クレジット:
・Stellarium(https://stellarium.org/ja/)
・Universe Sandbox(http://universesandbox.com/)
・国立天文台
・NASA / ESA



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