人間くさい店でありたい
わたしが働いている、食べられるミュージアム「風土はfoodから」。オープンして2か月が経とうとしている。
ふつう飲食店には、たとえば吉野家だったら、とりあえず席に座って・注文して・少ししたら牛丼が来て・食べ終わったら店員さんを読んでお会計をして帰る、という“フロー”がある。
でもオープンしたばっかりのお店だから、その“フロー”とかお店のシステムみたいなものも“ちゃんと”決まってはいなくて、お客さんも初めてくる人ばかりだから「おばんざいは盛ってくれるの?」「お会計はいつどこでするの?」と混乱す人も多かった。
「いちいち説明しないといけないよね」ということで、「どうしたらお客さんがすぐに店のシステムをわかってくれるか?」を考えた。フローを書いた看板を立ててみたりもした。
でもそれはつまり、
「いかにお客さんとの会話を減らすか」を考えることと同義だった。
いかにお客さんを人として扱わないかを考えているようなものだったと気づいた。
むしろ、スタッフとの会話が少ないランチタイムの料理屋さんで、お店のシステムを説明することがきっかけでコミュニケーションが生まれるのではないか、と
おばんざい3種盛りだけど、「わたしトマト苦手だから2種にしてほしい」とか言ってもらえたり、料理すべてにエピソードがあるんだからその話ができるような関係性をつくりたかったんだよねと、お店で大切にしたかったことを思い出した。
”ちゃんと”している必要は、もしかしたらないのかもしれない。
また別の日、料理長の石丸さんが、「諸事情カレー」というメニューを思いついた。
その日は、「風土はfoodから」がある神田錦町のお祭りで、前々日からお祭りで出す予定だったカレーを100皿分仕込んでいた。
だけど、お祭りの日は大雨だった。このままだとカレーが大量に余ってしまう。
そこで、お昼は「おばんざいの3種盛り定食」をご提供することにしているけれど、今日はカレーを出そう、と決めた。
そんな諸事情のなかでのカレーライス。
でも、これからもきっと体調を崩すときだってあるし、スタッフのなかには親の人もいる(実際スタッフが足りなくなったり、仕込みが間に合わなかったりしてお店を臨時休業にしてしまったこともあった)。天候によっては野菜が届かないこともあると思う。
そう考えると、本当は腐るものを腐らないようにさせる、自然の摂理に反する営みへの違和感(『田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」』より)と一緒で、
毎日同じように同じものを提供したり、そもそも毎日お店を開店させることも本当はすごく大変なことで
なのにそれを無理に隠してしまうのは、「ご飯を提供する」という行為がたくさんの人の「仕事」で成り立っているのに、それを感じさせないようにしていることと一緒だと思った。
余ってしまった野菜を使うという事情も反映させながら、つくり手の事情があえて見えるかたちでつくる、人間味溢れる「諸事情カレー」。
「なんだよ、今日カレーかよ。」ではなく「今日なにかあったのかな、ふふ」と思っていただけたらうれしいな。
そんな、人間くさい店でありたいなぁと思うのです。
風土はfoodからが入っているコミュニティビル「錦町ブンカイサン」の情報はこちら
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