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「近代画の巨匠を知るなら、その周辺の人物を追え!~『ジヴェルニーの食卓』~」

『ジヴェルニーの食卓』 原田マハ 著 (集英社文庫)
                           2024.3.9読了


私、原田マハさんの本で読了済みは数冊しかありません。
『楽園のカンヴァス』『生きるぼくら』『総理の夫』は読んでいましたので、今回のこの本は彼女の作品の4冊目ということになります。
 
いずれもその内容はそれぞれ分野が全く違っていて(農業と家族の話と、文字通り政治と政治家の話)、『楽園のカンヴァス』と今回の『ジヴェルニーの食卓』だけが絵画に関連するものとなっています。
 
絵画は鑑賞するのは昔から好きでしたし、大きな声では言えないのですけど(;´Д`)実は大学時代に美術史と演習の授業を取りました。
けれど深く深く学ぶことはなく、浅い知識でも卒業できました。(もともと英語を主に授業をとるコースを希望しましたが定員超過の憂き目にあい、第2希望の美術を学ぶコースに配置されました。もっとも、授業選択は自由なのであまりコースにこだわる必要もなかったゆる~いシステムでしたが…)
 
そんな中、印象派については論文課題が出ましたので図書館で調べひぃひぃ言いながら点描画法の作家について書いた記憶はありながらも、恥ずかしながらもうあまり覚えていないという情けなさ。
おかげでたいした点も取れず…当たり前ですね。
 
それでもやはり単に鑑賞するのは好きですし、素人ながら興味はありますから、原田マハさんが描かれる画家にまつわるおはなしは読みたいなと思います。
 
有名な画家たちが、どこで生まれどこで絵を学び、どのような生涯を送ったかなどについてはさほど関心を寄せていませんでしたが、マハさんの小説を読むとそれこそ「へえ~~」と初めて知らされるそれらの濃い情報で、驚きと感動と納得をもって読むことができ、今更ながら画家たちとマハさんのことを尊敬するしだいです。
 
 
あらためて、今回の『ジヴェルニーの食卓』ですが、4つのお話が掲載されています。
取り上げられている画家は、マティス・ドガ・セザンヌ・モネという超有名な印象派以降の面々です。
 
単に画家たちの生涯を描くのではなくて、それぞれその画家の周辺に実際にいた人物たちから語られるもので、ある意味画家たちをよく知る人々によるものの方が画家たちの生き方により近く深く迫っている気がします。
 
そこにはその周辺の人々がいかに画家たちを愛していたかが語られています。
もしかしたらその画家のために生涯をささげた人々と言ってもいいかもしれません。
その愛ゆえに、周辺の人物たちも波瀾万丈な生涯を送ったようです。
 
すぐそばにいながら、画家の作品が放つ光と影を受け止め誰よりも画家とその作風を理解していました。
世間がそれらの作風をまだ受け入れる器を持てないでいた時点でも、その比類なき作品とのちに有名になるに違いないと画家の才能を信じて疑いませんでした。その後の栄光は現在私たちがすでに知っていることです。
 
この本に描かれているものは、史実に基づいたフィクションではありますが、実在した人々を取り上げているので、あたかも本当にあったことではないのかなと思えるように臨場感が半端ないですね。
登場人物たちの心情が手に取るようにわかるし、素人の何にもわからない私のような人間にも理解できるように表現されていますから。
マハさんご自身の印象派以降の画家たちに対する敬愛と尊敬がなせる、多くの人たちに彼らのことをもっと知ってほしいという思いが伝わってきます。
 
 
さて、モネが人生後半に住み、そのモネのことを尊敬して彼の後に続いた画家たちが多く訪れたジヴェルニーという場所のことを私が最初に知ったのは、以下に紹介する本からでした。
それは児童書になります。
 
図書館で児童書担当になった時から、まずは児童書を読まなくてはといろいろと手に取った中に、『ジベルニィのシャーロット』という本がありました。
こちらはその当時書いた感想文をほぼそのまま載せることにします。

『ジベルニィのシャーロット』
ジョアン・マックファイル・ナイト 文  メリッサ・スウィート 絵江國香織 訳  BL出版
                           2006. 1. 26読了

この本に登場するシャーロットは実在の人物ではないし、いろんな出来事も厳密に言えばフィクションです。
 
でもその他の様々な人々や場所、エピソードが史実に基づいているので、否が応でも本当のことのように読者は思えるのです。
 
ジベルニィとはフランス北部の片田舎で、かつて印象派で有名な画家・モネが滞在していた土地です。
そして、その他の印象派に属する画家たちが世界中からこぞって集まってきては、そこに移り住んだり旅行の途中に立ち寄ったりしているのです。
 
 
この絵本はシャーロットというアメリカ人の女の子が主人公。
父親もまた画家でジベルニィにあこがれていて、モネがまだいた頃に家族で1年ほど滞在したという設定になっており、日記形式で書かれています

その中に、モネや数多くのアメリカ人の印象派の画家たちを登場させて、カンパーニュの穏やかで平和な日々をえがいているのです。
 
そして本のそこここに印象派たちの絵をちりばめてあり、お話(日記の)の背景がよりわかりやすくなっています。
 
そんな変り種の本ですが、もうひとつ私の心をゆさぶったのが、日記という形であるがゆえ各ページにヴィクトリアン調シールやカード、古い写真、アンティークのこまごまとした小物などをコラージュしてあって楽しいし、最近流行りになりつつある(読んだ当時)スクラップブッキングのヒントにできそうなところ。
少女が書いた日記という設定らしくとてもかわいいです。
 
 
しかし、この本を読んでみてこれほど多くのアメリカ人の印象派の画家がいるなんて、初めて知ったのでした。
 
 
(↑ 最後の一文については、今回マハさんの本を読んで、なるほどそういうことか!とその背景を知って膝を打ったのでした。いろいろな本を読んでみて、ますます理解度が深まるという経験ができて嬉しい私なのでした。)

(この児童書、あいにく現在絶版になっているようです。
図書館にはあるかと思いますので、興味があられる方はお尋ねになってみてください。もし最寄りの図書館になくても“相互貸借”というシステムで所蔵している図書館から借りてくださいます。)
 

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