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「地球の未来はやはり人間にかかっているのだ!~『ポーン・ロボット』~」【YA㊻】

『ポーン・ロボット』 森川成美  著  田中達之  イラスト  ( 偕成社)
                          2019.4.15読了
 
ある日突然、家族や友達、そして自分の住む街の多くの人々が消滅したら…!?
 
そんなまさかの事態が、普通の中学2年生の千明の身に起こってしまいます。
 
ある日千明は、近所の住宅街で見かけた変な走り方をする、変な風貌の男を見かけました。
全身黒ずくめのタイツをすっぽり着て、上体が全くブレず、下半身だけでまるでダチョウのような走り方をしているのです。
不思議に思い後をつけてみると、角を曲がった途端急に消えました。
男が消える前に、住宅の上を卵型の物体が、空へと飛んでいったのですが…。
 
それから、クラスメートの男の子の一家が突然消息不明となります。
また、千明自身は街なかの時計や宝石を売っている店で、一人の少女と、宝石を万引きしようとしている青い髪の色をしたきれいな少女を目撃するのです。
 
「万引きをしたらだめだ!」
そう頭の中で訴えたとたん、妙な力が働いたのか、千明は意識を失ってしまいました。
 
その後気が付くと、千明の両親と自宅が突然消えていたのです!
 
残された千明と妹の理央は、そして同じように親がいなくなった多くの子どもたちとともに入所させられていた児童相談所で出会った同い年の男子・田丸といっしょにそこを逃げ出しました…。
 
それから、彼らはとんでもない体験をすることになるのですが…。


当たり前の日常が、当たり前ではなくなる世界。
宇宙からやってきた別の星の者たちによって、いつか地球でも起こるだろう危機を教えられることになります。
(この宇宙のどこか知らない惑星に、高度な知能を持った生物が存在すると信じているのならば…)
ええ、侵略される地球への不安というよりも、ロボットたちが暴走したら大変なことになるよと教えてくれているのです。
 
 
最近急速に発達しているロボット産業、コンピューター、AI…。
 
人間は自分たちの利便性を追い求めるあまり、想像できない危険性に自ら脅かされることになるのです。
それは、近未来の地球や人間社会を描いた映画「マトリックス」や「ターミネーター」を彷彿とさせます。
 
自分の手を汚したくない人間は、敵対するものと戦い争う中で、殺人もロボットにすべてを委ねてしまうのでしょうか?
 
暴走するロボットやAIは、やがて人間の手におえないほどにその使命を果たすべく、人間にプログラミングされた行為をいとも簡単に、性能良くやらかしてしまうのです。
きたる人間の欲望と堕落と倫理観のねじれが引き起こす恐怖の未来に、警鐘を鳴らすSF児童書です。
 
以前プログラムの途中で、意図的に政治的思想を挿入されたAIが、かつての独裁者を称賛する言葉を発したとか…。
 
人間は間違います。簡単に理性も失ってしまいます。
 
ロボットやAIを創造する技術がどんなに進化しても、人間としての倫理観を後退させてしまったらそれは人間にとって好ましい結果を生むとは思えません。

私には到底何かを新たに生み出すような能力はないし、自分が考えるものを言葉で発することしかできないけれど、モノづくりのトップランナーの方たちには人間の求めるべきものをもう少し議論しながら、創造や開発に携わっていってもらいたいなと思うのです。


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