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「風を切る、人々の人生を乗せて走る~『車夫』~」【YA⑬】

『車夫』いとう みく 著 ( 小峰書店)
                           2019.3.4読了                                                              
今回は、先日「上京日記①」にて少し言及しましたこの本について書かせていただきます。
これもかつて読んですぐに書いた読書日記を、そのまま書き移します。

吉瀬走(きつせ そう)は高校2年生のとき、両親がそれぞれ家を出ていき、ひとりぼっちになってしまいました。陸上で期待されていたにもかかわらず、授業料が滞納になり仕方なく退学することになります。
 
そんな走を拾ってくれたのは、大学生の時に両親を火事でなくした、走の高校の陸上部の先輩でもある前平でした。彼は浅草を中心に観光客あいてに商売をしている人力車の車夫でした。
 
走るのが得意な走は難なく、仕事に慣れていきます。
 
前平や走たちが雇ってもらっている「力車屋」には、若い親方にその奥さんの女将さん、他にも車夫が数人いて、車夫たちは別の家で同居生活しています。
 
走、前平、走の陸上部だったときの監督や女将さんの立場からの物語、そして彼らが関わったり客として人力車に乗せた人々のいろんな生き様が語られていきます。
 
前平が言った言葉から引用しますと…
 
「人を乗せて、人がそれをひく。時代に逆行した乗り物の人力車。
でもこんなに人を笑顔にできる仕事はそうはない。
走ることで人を幸せにする。自分自身も…。」
 
人力車を取り巻く人々の泣き笑いの物語です。
車夫の面々が、みんな素敵な人ばかり。
かっこいい。
 
いつか私もどこかで人力車に乗りたいと思いました。
 

というわけで当時、簡単にではありますがSNSにて感想を書かせていただいたところ、著者のいとうみくさんご本人からコメントをいただき、「チャンスがあればぜひ人力車に乗ってみてください。風がすごいですよ」とのことでした。
 
このいただいた言葉もあり、また人力車に乗るなんてことはきっかけや勢いがないとそうそう経験しないよねと思い、今回の旅ではぜひとも乗ってみようと思いました。

風を感じたかったのです。

それは裏切られることもなく、前方から受ける風がびゅーっと心地よく、折しも日差しがしだいに強くなっていた頃だったのでなおさらでした。
風が吹いてくるたびに、じりじりとした暑さが一気に消えていき火照った体を冷ましてくれます。
なんて気持ちがいいのだろうと感激しました。
 
乗ってみてよかったぁ! 



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