見出し画像

ある日、ポッキリ。

 写真は神威岬(カムイミサキ)という場所。カムイという地名は北海道では時々見かけるが、カムイは、アイヌ語でよく知られているように、日本語だと、という意味に近いということである。
カムイ=カムィ=カミ・・・この類似性はなんだろう、と時々思う。言葉は、音なので何か関係あるのか、すでに論じられていることかもしれないけど。
 それはともかく、今日の話はこの神威岬とは全然関係ないのだけど、なぜかこの話を書こうと思った時、この場所を思い出して、一昨年の写真を探し出した。

 人生には時々大きな転換点がある。その始まりは後になってわかる小さな点のようなものだとずっと思っていたけれど(いや、ある意味そうかもしれない)、直近の大変化の始まりは、分かりやすいものだった。

 保江 邦夫先生の『ついに、愛の宇宙方程式が解けました』という本を読んだのがきっかけのきっかけ。そこに書かれていた神社にある夏、訪れる機会があった。実はこの神社は誰もかれもがあまり行かない方が良いよ〜というような紹介だったのだけど、ふと近くに行くことがあって思い出し、寄ってみたのだ。山奥で、雨が降ってきてようやくたどり着いた小さな祠。お参りしてその日は何事もなく帰った。元々はそこが本拠地ということだったが今は別の場所の大阪に本殿がある。たまたま、その同じ夏のしばらくのちに、今度は大阪のその場所に行く機会を得た。これが今思えば不思議な縁だった。

 早朝から学会のため大阪に前日入り。大阪に住む長年の友人が新たに引っ越しして、遊びにおいでということになった。当日、少し予定よりも早く着きそうだったので友人に連絡したら「掃除してるのでもう少し待って・・・!」と。じゃあ、そのあたりに何か見るところはないかと探したらまさにその駅の、友人宅の、歩いて数分のところにその神社の本院があった。つい最近行ったばかりだし、せっかくなので寄って行こうということになった。そこはご利益のある指輪が有名だそうだがそれは大人気のモノらしく、在庫切れ(というと変な響きだけれど)だった。(ちなみに今は転売する人などが出てきたりしてそのお守りは無くなったそうだ)再び普通にお参りし、友人宅へ。その日は特に何もなく終了。

 しかし次の日・・・学会へ行く途中、転んで足を骨折してしまったのである。あまりの痛みに全く歩けず、なんとかタクシーを拾って病院に行って判明。ともかくも、学会の発表はできないということで一緒に行く先生方に連絡し、欠席ということになった。

 ・・・今だから言えるけれども、怪我をして病院に行って落ち着いてからの第一声は、「やったー!」だったのである。「これで学会行かなくて済むし、休める」という本音(笑)だった。まあ、大学教員としてどうか?とは思う。けれどもそれが素直な気持ちだった。ちなみに、その学会は教育系で自分の専門研究とは全然関係ない。行きたくなかったのだ。行きたくなかったけれども、大学から強く強く推奨されていた(本当はあまり興味のない)研究の一環であった。清々しい怪我であった。

 その骨折はなかなかひどかったので当然松葉杖。しばらくは療養ということで、ちょうど夏休みでもあり、私はその大学に勤め始めてから半ば強制的に、”ようやく”休むことができたのだった。


画像1

(お医者さん:大阪弁の「こりゃ、折れてるで〜」が忘れられない)


 全く、「骨折」という印籠のなんと強力なことだっただろうか。数日すれば痛みも引いてくるので歩けないこと以外は至って元気なのだが、「骨折」ということになると、ともかく周囲が思った以上に優しかった。そして職場においても、休む理由としてこれほど分かりやすい”エヴィデンス”というものはなかったのである。だって歩けなくてどこにも行けないんだもの。

 そこから始まって数年間、途切れることなく運命の輪は回り続け、結局その頃住んでいた湘南から北海道へと移住することになるとは・・・まだその頃は露ほども思わなかった。

 そして例の神社を訪問した次の日にこの大きな転換点とも言える骨折事件が起きたことは象徴的であり、それは、ある意味「荒療治」だったのだなと思う。もうそれ以上心は嘘をつけない状態だったし限界だったのを、後押ししてくれたと思っている。だから災難だったと思う人がほとんどかもしれないが私にとってはご利益であった。

 文字通り、骨も心もポッキリ折れたのだった。それらの限界の状態についてはまた少しずつ書いて行こうと思う。

 先述の本・・・今手元に無くて確認できないので記憶だけを頼りに言えば、確か龍神に関係する神社であったように思う。いわゆる「いわく」もあるようなので、そういう意味でも荒療治のイメージが納得できた。龍・・蛇のようにうねうねと続く道を辿ることになったのだから。

 本当にありがたく、感謝の念しかない。またいつか、そういう時がきたらお礼を言いに行くことがあると思っている。そして、自分に嘘はつき続けられないものなんだと思う。


画像2

湘南とぜんぜんちがう、海。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?