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Day3. 美しい建築をみて、泊まる│鈴木大拙館

May 2022

思えば旅行や、出先で雨に降られたことは殆どない。

たとえば飛行機で土砂降りだったとしても、空港に着いたときには雨があがっていたり、逆に自分が屋内施設や家に着いてから雨が降りはじめたり、といった具合に。

金沢は一度だけ旅行に来たことがあるけれど、そのときも晴れていた気がする。


「  え? 金沢って、日本で一番雨が多いらしいよ?
  わたしも前に来たときは 雨だったけどなぁ  」

雨女らしい友人が言う。彼女は私とは逆で、いつも出張先など、出先で雨に降られるらしい。

そして、それを「龍神様に愛されている」と表現していて思わず笑ってしまった。すごく良い言葉だ。

「 そっか、じゃあ私は天照に愛されているのかも?」

21世紀美術館 (2017年)


とはいえ、今日は雨が降ることがわかっていたので彼女は折り畳み傘、わたしは邪魔だけれどビニール傘を持ち歩いていた。(途中でなくしてもいいように)

運良くロータリーで100円の巡回バスを見つけて、この旅の最後の目的地、『 鈴木大拙館  』へ向かう。


以前なら随分と歩いた道も、バスだと10分ほどで到着した。激混みの車内に揉まれつつ、なんとか人を掻き分けて、前方の出口を目指す。


「 あ、手摺に傘わすれてきた! 」

お金を払う段になって気づいたけれど、時すでに遅し。乗っていたのは最後尾だ。とても戻れそうもない。


諦めてバス停に降り立つと、
さっきまで降っていたはずの雨が止んでいた。

「 ……… 、さすがに ちょっと怖い。」

いつも笑顔の友人の引いた顔を見たのは、これが初めてだったかもしれない。

 *  *  *  *  *

鈴木大拙館


谷口吉生設計。展示作品は少ない…というよりも、空間そのものが、大拙の思想をあらわすものになっている。

大拙の言葉や、書籍にふれる学習空間も存在する。

鈴木大拙。ジョン・ケージと親交のあったことでも知られる、日本の「禅」を世界に広めた仏教学者。

その思想を、空間で体感できる場所。


森の静寂。時折  雨粒が落ちてくる、静謐な空間。

青空に映える建築は数あれど、雨天や曇天という天気に響きあう建築というのは、あまり見たことがなかった。

玄関の庭
思索空間
水鏡の庭


美しい姿にシャッターを切ったけれど、きっとここではなにも持たないのが正解だ。

水面に生じた波紋は広がって、また水庭となった。


山是山(山は山である)

一見当たり前のことのように思われるが、あらゆることは、身をもって体験しないかぎりは、私たちは決して本当には分からない。

「人が禅を学ぶ前には、かれにとって山は山であり、川は川であった。よき師の指導によって禅の真理を洞見しえたのちには、かれには山は山でなく、また川は川でなかった。しかしやがて、かれが本当にやすらぎの境地に到った時には、山はふたたび山であり、川はふたたび川であった。」

「禅の意味」(『禅』 工藤澄子・訳)


友人は美しいものに出会ったとき、「場の力が強い」という言い回しをする。「いい写真を撮ろう」とか、こちらが試行錯誤しなくても、絵になるような場所や空間。

これから先の旅でも、そんな風景に出会いたい。


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