Day3. 美しい建築をみて、泊まる│鈴木大拙館
May 2022
思えば旅行や、出先で雨に降られたことは殆どない。
たとえば飛行機で土砂降りだったとしても、空港に着いたときには雨があがっていたり、逆に自分が屋内施設や家に着いてから雨が降りはじめたり、といった具合に。
金沢は一度だけ旅行に来たことがあるけれど、そのときも晴れていた気がする。
「 え? 金沢って、日本で一番雨が多いらしいよ?
わたしも前に来たときは 雨だったけどなぁ 」
雨女らしい友人が言う。彼女は私とは逆で、いつも出張先など、出先で雨に降られるらしい。
そして、それを「龍神様に愛されている」と表現していて思わず笑ってしまった。すごく良い言葉だ。
「 そっか、じゃあ私は天照に愛されているのかも?」
とはいえ、今日は雨が降ることがわかっていたので彼女は折り畳み傘、わたしは邪魔だけれどビニール傘を持ち歩いていた。(途中でなくしてもいいように)
運良くロータリーで100円の巡回バスを見つけて、この旅の最後の目的地、『 鈴木大拙館 』へ向かう。
以前なら随分と歩いた道も、バスだと10分ほどで到着した。激混みの車内に揉まれつつ、なんとか人を掻き分けて、前方の出口を目指す。
「 あ、手摺に傘わすれてきた! 」
お金を払う段になって気づいたけれど、時すでに遅し。乗っていたのは最後尾だ。とても戻れそうもない。
諦めてバス停に降り立つと、
さっきまで降っていたはずの雨が止んでいた。
「 ……… 、さすがに ちょっと怖い。」
いつも笑顔の友人の引いた顔を見たのは、これが初めてだったかもしれない。
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谷口吉生設計。展示作品は少ない…というよりも、空間そのものが、大拙の思想をあらわすものになっている。
大拙の言葉や、書籍にふれる学習空間も存在する。
鈴木大拙。ジョン・ケージと親交のあったことでも知られる、日本の「禅」を世界に広めた仏教学者。
その思想を、空間で体感できる場所。
森の静寂。時折 雨粒が落ちてくる、静謐な空間。
青空に映える建築は数あれど、雨天や曇天という天気に響きあう建築というのは、あまり見たことがなかった。
美しい姿にシャッターを切ったけれど、きっとここではなにも持たないのが正解だ。
水面に生じた波紋は広がって、また水庭となった。
山是山(山は山である)
一見当たり前のことのように思われるが、あらゆることは、身をもって体験しないかぎりは、私たちは決して本当には分からない。
友人は美しいものに出会ったとき、「場の力が強い」という言い回しをする。「いい写真を撮ろう」とか、こちらが試行錯誤しなくても、絵になるような場所や空間。
これから先の旅でも、そんな風景に出会いたい。
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お読みいただき、ありがとうございました。 あなたにとっても、 素敵な日々になりますように。