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本宮

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 学校の帰りに、本当はテスト勉強しなければいけない時間なのにぶらぶらと歩き回っていた道があるのだけれど…どこの道を通ったのか、何を目指して角を折れたのか覚えていない。覚えていないような何の変哲もない日常の行動だったし、道自体が特に印象的な珍しさがあったわけではない。誰かの暮らしの道、道というより路地?

 高校入学したての頃、昭和レトロな学校生活とか暮らし、に憧れていた。憧れてはうっとりしているだ

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グランパレ公民館

 この公民館は寒かったのか暑かったのか、あんなに通っていたのに思い出せない。ただ、後架でもないのに館全体がその匂いを閉じ込めていたのは思い出すことができる。というより、その匂いがすることをこの世で私だけが発見したかのように鼻高々と提唱していた自分のことを思い出すことができる、と言った方が正しいかもしれない。私はその時の様子を覚えていることは得意かもしれないが、その時の感情を覚えていることは苦手なゆ

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駄菓子屋

限られたもので良い。全てのものが取り揃えてある必要はあるのだろうか。
田舎者が東京へ行くと、店棚がもはや型録化しているとでも表現すべきであるようなその品揃えの綿密さに圧縮される思いがする。その時、人に贈り物をする時に選びあげるのが楽であるのか、それともあれこれ目移りしてかえって難しいのかを考えて一人不安になるのが常だ。別段誰かの誕生日が迫っているわけではないのだけど。
ところで、あの本宮の駄菓子屋

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紺碧

狭い入り組んだ道だと思っていたのに、案外わかりやすい配置である。くしゃくしゃに丸められた紙にかすれた印刷で宝物のありかが書いてあると思っていたのに、それが光沢のある印刷用紙(あの、子供の頃に黒鉛で落書きしようと思っても上手く描けない方の紙)が折れ目ひとつなく打ち広げられている様子に変わってしまったようだ。
あの氾濫で、街は水びたしになった。こうやって街を歩いている私は泥水の中をいる、というように信

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