見出し画像

「AI翻訳が発達するから英語の勉強なんて必要ない」と生徒が言ってきた

英語を勉強している皆さん、英語を教えている皆さん、こんなことを言われたらどうすればよいでしょうか。

皆さんの意見を知って生徒たちを納得させたいので、ぜひコメントを残していただけると嬉しいです。

この発言は英語が苦手な生徒が「英語なんて必要ないじゃん!だからできなくてもいいじゃん!」と言い訳に使った言葉ではありません。むしろ英語も他の科目もそこそこできる生徒でした。


彼は言い訳のためではなく、英語の勉強を仕方なくやらされていると感じて「英語って本当に勉強して意味あるの?」と思ったからこんな発言をしたのです。


さらに、実はこの発言は生徒だけでなく保護者の中にもあったと聞いたことがあります。その保護者の方がどのようなお考えで発言されたかはわかりません。

この記事が、読んで下さった皆さんが同じようなことを言われた時にどのように答えるかを考える一助となれば幸いです。

AI翻訳(機械翻訳)の精度


AI翻訳で有名なgoogle翻訳の精度を確認してみましょう。

Q1.これはいくらですか。
A.How much is this?

いいですね。中学生が学ぶ教科書通りの英語です。


Q2.近くの美味しいイタリアンレストランを教えてください。
A. Please tell me a good Italian restaurant nearby.

これもバッチリです。「美味しい」とあると中学生は”delicious”を使いたくなりますが、レストランが美味しいわけではなく、良いレストランを探しているわけですから、この文の方が自然です。これがAI翻訳でできれば海外で英語を話せなくても助けてくれそうですね。


Q3.僕はたぬきそばにする。
A. I want to be a lagoon dog.

これは大学の授業で出てきた文です。日本人が見れば、蕎麦屋で注文しようとしている場面だろうと想像できます。しかし、AI翻訳は文脈(行間または背景)が読めません。海外で料理を注文しようとAI翻訳を取り出し”I want to be a (料理名)”と出てきてしまったら笑われてしまいかねませんね。


AI翻訳の弱点

AIで東大受験を目指した「ロボットは東大に入れるか」というプロジェクトや『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』の著者として有名な新井紀子さんはその著書で次のように述べています。

 グーグル翻訳のような統計的機械翻訳には、学習のために大量の対訳データが必要です。統計的機械翻訳は、文法も語彙も学ばず常識も身につけずに、学習した対訳データと言語モデルに基づいて一番良さそうなごの並びを出力しているだけですから、精度を上げるには、データを増やすしかない仕組みになっているのです。
 実際にグーグル翻訳を使ってみましょう。
入力 私は先週、山口と広島に行った。
出力 I went to Yamaguchi and Hiroshima last week.
正しい翻訳です。けれども、山口は、実は山口県のことではなく、友人の山口だったらどうでしょう。誤訳になってしまいます。実際、「私は先週、山際と広島に行った」と入力すると、グーグル翻訳は「I went to Yamagiwa and Hiroshima last week.」と出力します。ここに意味を理解しないAIの機械翻訳の限界があります。

『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』(新井紀子, 2018, p.145-146)


AIは人間のように文法や単語の意味を理解して翻訳をしているのではなく、大量の単語の並び方データから適した訳を作っているだけなのです。
なので、AI翻訳が間違った訳を作らないために、このAI翻訳を使う人間側が配慮しなくてはいけません。


例えば、Q3「僕はたぬきそばだ」ではなく、「僕はたぬきそばを食べたい」などはっきり誤解の生まれない日本語を使わなくてはいけないのです。AI翻訳を使うために日本人が正しい日本語を使えるように学ぶ必要があるのかもしれません。


機械にはAIはあるけど愛がない?

簡単な文を訳すにはAI翻訳はとても大きな助けになると思います。また、日本では学校で英語しか学ばないことが多いので、あなたがもし英語圏ではない国に行き現地の人と話す必要があれば、非常に有用なものとなるでしょう。

しかし、もしあなたが現地でAI翻訳ではなく、自分なりに勉強した現地の言葉をつたなくても一生懸命に話したら相手はどう感じるでしょうか。


また、もし日本に来た外国人が一生懸命に日本語で道を尋ねてきたらあなたはどう感じるでしょうか。

きっと、その努力に応えてあげたい。力になってあげたい。と思うのではないでしょうか。


さらに、もしあなたが外国人の恋人ができたとしたら?もし大事な商談を外国人としなくてはいけないとしたら?


同じ情報を相手に伝える時、AI(機械)で作られた文を伝えるのか、自分で一生懸命作って気持ちのこもった文を伝えるのかで相手の受け取り方は大きく異なるのではないでしょうか。

また、本当に大切なことを伝えたい時、AI(機械)に頼った文で本当に意図したことが伝わると自信を持てるでしょうか。

AI(機械)がイタリア語に訳してくれた。でも自分はイタリア語を全くわからないから、この訳が適切なのか、どう発音するのかすらもわからない。これは不安ですよね。

AI翻訳を使ってコミュニケーションをとるのと自分の言葉でコミュニケーションをとるのとでは、お店で買った激安弁当と時間をかけた手作り弁当くらいの違いがあると思います。

大切な時、大切な相手には手作り弁当で気持ちを伝えたいですよね。そこに愛を込められるのはAI翻訳ではなくあなたの言葉です。

結論

長くなりましたが、最初の問いに対する答えです。

Q. 「AI翻訳が発達するから英語の勉強なんて必要ない」と生徒が言ってきたら


A. AI翻訳は完全ではないから全ての場面でAIが使えるわけではない。また、AIに頼らず自分の言葉でコミュニケーションを取ったほうが相手に気持ちが伝わる。だからAI翻訳が発達するからという理由で英語学習が不必要になることはない。

上記の理由以外にも、言語学習による児童生徒の脳の発達という観点でも考えられそうです。

皆さんのお考えはいかがでしょうか。

よろしければサポートをお願いします!頂いたサポートは主に今後のさらなる学びのための書籍購入のために使わせていただきます!