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【読みもの】 失敗しない味付けのこと

・味付けで失敗しないために。
・自分の味付けの基本を決める。
・レシピは「頼らず、頼む」もの。

「まずくならないように」

「煮物ってむつかしくて、あまり作らないんです。」

そういう声をよく頂きます。特に若い方から。
煮物だけではなく、味付け全般で悩んで「料理ってむつかしい」と思い込んでおられる方が多いのかもしれません。

私もこのようなお料理の記事を書き始めましたが、プロでもなければ手先が不器用なので、技術はほとんど持ち合わせていません。
だけど私のお料理は「おいしい」と思っています(自分では)。それはなぜか。

それは味付けを失敗しないからです。
「おいしく作ろう!」という意識は大切ですが、私の尊敬する料理研究家の土井善晴さんはこう言い切っています。

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「まずくならないように料理すれば、おいしくなります。」

これ、まさに極意だと思います。「勝てば負けない」みたいな。

でも、「まずくならないように」ってどうすれば?
若輩者ながら、講演依頼が来るようになったり、人様にお料理を教える立場になったとき、私自身の味付けの感覚を言語化・可視化する必要が出てきました。
これもまたむつかしい。
どういう感覚で味付けをしているか、近くで見てくれる人と落穂拾いをするように、私の行動をひとつひとつ確認しながら導き出した方法をお伝えします。

失敗しない、味付けメソッド

煮物でも炒め物でもいいので、まずは自分が食べたい味を想像することです。
これはそんなにむつかしいことではありません。
「甘い」「しょっぱい」、基本はこのくらいでも構いません。
それに近づけるように、あるタイミングで味見をしながらゴールに近づけていきます。香りを確かめることと味見は絶対に必要です。

以下の資料は私が講演で使っているものです。

味付け.001

例えば「煮物」。
本記事のトップに載せてある写真は、私が普段食べている煮物です。
これを作る私の頭の中には「あっさりと出汁の味を活かした上品な煮物にしたい」というイメージがまず存在しています。そこに近づけていく作業をするのです。

おいしい味付けは「丸い輪」を想像する。

まずは「旨味の横軸」を作ります。
ここで使う調味料は、酒・みりん・醤油等になります。
出汁に具材を入れて火にかける、そこに上の調味料を入れて酒とみりんのアルコールを飛ばしていきます
調味料の分量は、これはやはり経験です。酒は入れすぎると「えぐみ」が出ますし、みりんは「甘み」です。醤油はもちろん「しょっぱさ」ですね。
しょっぱい煮物にするときは、みりんは控えめに、醤油は薄口醤油(白醤油)を使った方が合うでしょう。
逆に甘辛い煮物にしたいときは、みりんを少し多めに入れて、お醤油は濃口醤油が美味しいでしょう。みりんを多めに入れることで、お砂糖の量も減らせます。

アルコールを飛ばすときにすること、それはしっかり香りを確かめてください。湯気からどのような香りが立っているか。それを繰り返して頭の中に覚えることが大切です。
そのあと一度味見をしてください。もちろん味は薄いと思います。ですが、この段階で出来ているのが、料理の味の基礎です。お化粧で言うところの下地ですね。
ここでもう少し甘み・旨味が欲しいと思ったらみりんを、しょっぱさが欲しいと思ったらお醤油を入れます。この後に仕上げをしていくので、決して濃い味にしないように気をつけましょう。

味付け.002

お料理の味の下地ができたら、「単味の縦軸」を整えて、料理の輪郭を作っていきます。口紅や頬紅を塗ったり、マスカラを付ける感覚です。
ここで使う調味料は主に塩と砂糖です。これらは複雑な味というより、しょっぱい・甘いに特化した調味料です。
注意することは、入れ過ぎないことです。入れ過ぎてしまうと、どれだけ水や出汁で薄めようとも、丁寧に作り上げた下地から料理の味が崩れていってしまうからです。
慣れない方は、塩であれば、本当にひとつまみ、ふたつまみから入れて味見をします。お砂糖なら小さじ程度で調整していけばいいでしょう。

そしてまた味見をします。ここで、「おいしいけど、ほんのちょっと薄いかも」というところで止めておいてください。煮物だと、煮込む間に食材に調味料の味が染み、冷めていく過程で味が濃くなるからです。

文章ではむつかしそうに見えますが、やはりこれは何度も作って自分の感覚を養うことが大切です。
煮物は面倒ではありません。なぜなら、ちょっとだけ調味料で整えてあげれば、あとは数分放置できるので、他の調理の時間に使うことができるからです。
(当然ながら、火から目を離さないように注意です。)

・まずは酒、みりん、醤油など旨味の下地を作る。
・下地が整ったら、塩、砂糖で「しょっぱい」「甘い」の輪郭を整える。

なぜ自分の味付けの感覚を養う必要があるのか〜レシピのはなし

これまで読んでくださった方は「自分の基準がなくてもレシピ見れば美味しく作れるのでは?」という疑問が生まれることでしょう。
例えば、すごく美味しい煮物を作るおばちゃんがいるとしましょう。おいちゃんでもいいですけど。
その方々はいちいちレシピを見ながら、美味しい煮物を作っているのでしょうか。材料の参考にすることはあっても、たぶんそうじゃないと思います。

「レシピ通りに作ったのに、イメージと違いました。」
これはよく頂くご意見です。それは当たり前です。
私のお料理の記事を見て下さっている方はお気づきかと思いますが、基本的には「分量」を載せていません。

このスライドを見てください。

醤油.003

これはお醤油のような調味料によくあることですが、日本全国でお醤油の味は違います。添加物の有無でも味はまったく変わってきます。
それゆえ、ご自身で好きなお醤油があれば、それに見合った分量を把握することが大切なのです。
もしそのようなお醤油とまだ出会ってない方は、とりあえず安くてもいいので無添加のものを選んでみてください。それからもっとしょっぱい方が好きとかマイルドな方が好きなどの感覚で、お気に入りのお醤油に近づけていけばいいのです。

醤油.001

レシピはあくまでも「参考」です。
今はインターネットで調べれば、無数のレシピが出てきます。私もよく利用します。ですが、私の使い方としては、材料や調味料の参考程度です。

・調味料の味は地域やメーカーで全く違うので、レシピの分量を鵜呑みにしないこと。
・レシピはあくまでも、使う材料、調味料の参考程度に。

自分の頭で考えて料理することで、上手になりますし、次第にその経験はいろんな料理に応用することができるようになります。
堅苦しく考えずに、楽しみながら自分の基礎を作り上げてくださいね。

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