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東京ピーターパン

今月はまだ雨が降っていないらしい……という声が電車の同じ車両にいた人たちの会話から聞こえてきた。たしかに僕が記憶している限り、11月に入ってから雨が降っていないような。

先週の関東地方は何度か地震が起きた。最近は少し頻度が多い。深夜の緊急車両の音も季節的に響いて普段よりも大きくそして長く聞こえる回数が増えて来たような気もする。

今日は最近読んだ小説を紹介したいと思う。

小路幸也さんの「東京ピーターパン」。

あらすじは以下の通り。

平凡な日常をそれなりにこなす印刷会社のサラリーマン・石井は、人身事故を起こし、パニックで逃げてしまう。伝説のギタリストでありながら、今はホームレスの辰吾、メジャーを夢見るバンドマン・小嶋を巻き込んで辿り着いた先は、寺の土蔵。そこは引きこもりの高校生・聖矢の住処だった。年齢も人生もバラバラ、けれど唯一の「共通点」を持つ彼らが出会ったとき、起こった「キセキ」とは――!?小路幸也が描く大人の青春小説!!
「東京ピーターパン」/小路幸也/2013年12月/角川文庫

物語の主な登場人物は、杉田辰吾(60) 、吉川宏(52) 、石井和正(34) 、小嶋隆志(26) 、田仲聖矢(16) 、田仲茉莉(26) 。聖矢の姉である茉莉以外はすべて男性であらすじ通り年齢がバラバラである。

伏線というか、登場人物同士の繋がりが本当に凄い。物語の後半でわかるが、あらすじ通り、唯一の「共通点」がこの作品の重要かつ最も魅力的な点である。


ネタバレになるのでそれほど多くは語れないが、そうすると何も書けなくなってしまうので読んでみたい方はその後に、でも気になる方は、少しネタバレしてしまうことをご理解いただいた上で下記へと読み進めてほしい。


石井和正による人身事故の回想から物語は始まる。

しかし読み進めると事故とは関係がない、事故のことは一切語られないまま、別の登場人物たちの過去、現在が淡々と描かれている。物語はずっと、読者に語りかけられているような文体で表現されている。

さらに読み進めると、冒頭で触れられていた事故の経緯が再び語られることになる。そこには全体を通して大きな繋がりがあり、最後は全員が同じ場所で、唯一の「共通点」が生み出した「一夜限りのバンドを結成する」という結末を迎える。

そのバンドから生まれたのが「ナモナキラクエン」という曲。

「共通点」を含めて、最終的にバンドが組まれるまでの過程を知ると、もっと面白くてどんどん物語の中に惹きこまれていく。

多くの人におすすめしたい作品である。

僕も生演奏で「ナモナキラクエン」という曲を聴いてみたくなった。



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