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92. レントゲン陰性なのに肺炎?

ミュージカル好き救急医の独白 vol.92
- The Monologue of a Musical-Loving Emergency Physician -

はじめに

みなさん, レントゲンを撮ったことありますか?健康診断などで胸のレントゲンを撮ったり, 膝や腰の痛みがあってレントゲンを撮ったことがある人がいるでしょう.
肺炎というと, レントゲンをとるとすぐに診断がつくイメージがあるかもしれませんが, 実はそんなことはないのです. 典型的な肺炎はレントゲンで白くなる様な異常な影が認められますが, 必ずしもそうとは限らないのです. 今日はその辺りのお話を.

今回のミュージカル

マリー・アントワネット
2018年の再演時, 初演でマルグリット・アルノー役であった笹本玲奈さんがマリー・アントワネット役となり, 玲奈さんファンの私としては複雑な思いで観劇したのを覚えています.
私のお気に入りのシーンは2幕のはじめ, オルレアン公のナンバーです. 吉原光夫さん最強です.
そんなマリー・アントワネットですが, 2021年1月に東急シアターオーブで再演が決定しました. マリー・アントワネット, マルグリット・アルノーは前回と変わらず, 花總まりさん/笹本玲奈さん, ソニンさん/昆夏美さんです. オルレアン公は今回はWキャストで上原理生さん/小野田龍之介さんです. 劇場で観ることができればいいのですが…
吉原さんのオルレアン公を観ることができないのは残念ですが, 観るべきシーンはまだたくさんあるので楽しみにしています. ってことで今回は肺炎の患者さんの診るべき点について.

救急外来あるある

70歳男性(BLさん)が, 前日からの咳嗽を主訴に救急外来を受診しました. 本人は肺炎が心配な様ですが, 担当した研修医はレントゲンを眺めながら悩んでいます.

Pt.BL:「先生, 肺炎ではないですか?(ゴホゴホ)」
研修医:「レントゲンでは明らかな影はなさそうですけどね…」
Pt.BL:「肺炎ではないってことですか?」
研修医:「そうですね. 今のところは大丈夫そうですけどね…」
Pt.BL:「そうですか. なら仕事行っても大丈夫ですね?」
研修医:「いや, 肺炎の初期かもしれませんから…」
Pt.BL:「え?肺炎ってことですか?」
研修医:「あ, いや…」


肺炎とレントゲン

肺炎はレントゲンで診断すると思っていませんか?多くの肺炎はレントゲンで肺炎像と言われる影が認められるのですが, 必ずしもそうではないということを覚えておきましょう.
肺炎を疑った場合の診るべき点は, 肺炎らしい病歴や身体所見を認めるかです. 数日前から咳嗽や発熱を認め, 呼吸数が増え, 聴診では副雑音を聴取(聴診器で肺炎らしい音が聞こえる)するなどです. 鼻水や喉の痛みは通常認めません.
レントゲンは重要なのですが, 画像ではっきりしない肺炎も多々あるのです. その中で代表的な以下の2つの状態を覚えておきましょう.

初期の肺炎
あるとき突然, 肺炎の影が出現するわけではなく, そこには症状が出現してからの多少のタイムラグが存在します. それが数時間なのか数日なのかは個人差がありますが, 症状と同時に影がでるわけではないため, 病初期にはレントゲンでははっきりしないことがあるのです.
新型コロナウイルス感染症においても, レントゲンではっきりしなくてもCTを撮影すると影が認められることも珍しくありません. 重要なことは検査結果よりも病歴であったり症状なのです.

脱水を認める場合の肺炎
肺炎の典型的な症状として, 咳や痰, 病状が進行すると呼吸が苦しいなどが挙げられます. これらの症状を認める場合には, 食欲が落ち, 発熱の影響もあって不感蒸泄(いわゆる汗と考えてもらえればOKです)が増え, 身体は脱水傾向となります. 脱水の状態では, あまり痰もでず, レントゲンでもはっきりとした影が認められない事があるのです.


♪愚かなものほど 騙されたがる きわどい記事にもとめる 事実よりも
希望 欲望 幻想 操るのだ わたしが王になる日まで♬
『世論を支配しろ』

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