見出し画像

Let's 経営学 #7

 なぜ5000円をオークションにかけたら必ず落札価格が5000円を超えるのか?
 その理由は、このオークションの2つ目のルール「2番目に高額を提示した人は、その額を支払わなければならない」にあります。
 オークションへの参加を呼びかけた時点では、おそらく多くの人がこのルールのことをほとんど考慮せずに、気軽に参加します。むしろオークション開始時の100円とのギャップに高揚感を感じているはずです。

初期段階
 オークションが始まると、初期段階では競争心が場を支配します。あちこちで次々と手が挙がり、開始価格100円はあっという間に1000円を超えます。それでもまだ場はお得感とゲーム感が支配的です。

中期段階
 ただ、冷静な人は2000円を超えた頃から競りを降り始めます。全てのギャンブルや課金系のゲームがそうであるように、このゲームの本当の勝者は先に下りた人たちです。煽られた射幸心(しゃこうしん)を抑制するのはとても難しいことはみなさんもよくわかると思います。
「あとちょっと」
「まだいける」
と自分に言いわけしながらアドレナリンの放出を止めません。

後期段階
 後期段階、つまり5000円に近づくにつれて競り合う人は急激に減ります。差額の旨みより2番手になるリスクの方が大きいことに気づくからです。ところが確実に同じタイミングで全員が下りることはないので、最終的には2名にまで減ります。これが最終段階の合図です。

最終段階
 この時には入札価格は5000円前後になっているはずです。ここからが本当に興味深いところであり、残ってしまった当事者たちにとっては地獄の始まりです。なぜかわかりますよね? そうです。彼らはもう下りることができなくなっているのです。下りたらその段階で5000円程度払わなくてはならなくなります。
 今までは得することを考えながら競っていました。そしてその間にだったら場を下りられました。ところが入札価格が5000円を超えた段階で、今度はいかに損する額を最小限にとどめるか、ということばかり考えるようになります。競り勝つことが損を最小限に抑える唯一の方法になってしまったのです。誰も得しないオークションは、2人のうちのどちらかが諦めて丸損することを受け入れるまで続きます。下手をすると、数万円まで入札価格が上がります。最悪です。

 こうやって客観的な立場で「5000円オークション」を見てみると、「損失を最小限に抑えようとすればするほど、損失額を大きくしてしまう」という矛盾した行動をしていることがわかります。
 ちなみにこれは本題ではありませんが、ではどうすれば、誰も損をしないで、この場を勝てるのでしょう?
 ただひとつだけ方法があります(それですらグレイの方法ですけど)。わかった人は本日中に私まで言いに来てください。最初の正解者に、5000え……ということはありません。

つづく

この記事が参加している募集

スキしてみて

サポートあってもなくてもがんばりますが、サポート頂けたらめちゃくちゃ嬉しいです。