2/3　合併号【Project KGSDGs Vol.108 】＆ 【童夢　Arts沼　#32 】 コロナ × 部活動　バンド × 文藝部#17

〈1〉コロナ禍 × 文化部部活動#1〜3
〈2〉日本の強みはやっぱりこれ#1〜9
〈3〉新しい仕事のスタイルと社会構造について
　　①パートナーシップ型･プロジェクト解決型が意味するものは？#1〜4
　　②ボリュームゾーンの崩壊
　　③未来の学校はたぶんこうなるから今から準備しておかないとたぶん生き残れない要件
〈4〉未来人たちについて（たぶんこんな社会になるのかな）

　ところでみなさん、なんだか毎日毎日書いていますが、これは進路の話のつもりです。おじさん談義のつもりではありません。
　むしろネタが最先端すぎて、正直おじさんにはついて行くのが大変な話で、けっこうつらいです。
　でもみなさんは、自分のこれからをいろいろと考える際に、今後の世の中の変化の可能性を考えながらでないと「こんなはずじゃなかった」になってしまうと思います。だって今みたいに世の中が激変するなんてコロナ前には誰も考えていなかったじゃないですか。そういうわけで、行きます。

〈3〉新しい仕事のスタイルと社会構造について
②ボリュームゾーンの崩壊

　主流と傍流、
　システムと個人、
　マジョリティとマイノリティ、
　富裕層と貧困層‥‥‥

　少なくとも資本主義の社会ではそれらは逆転したりせめぎ合ったりはしませんでした。支配─被支配の関係がはっきりしていました。
　でも、21世紀に入って多様性を受け容れることを是とした価値観が世界で広がっていくのと、誰でも情報を不特定多数に発信できる技術が普及したことで、支配側だった「主流」「システム」「マジョリティ」は相対化されてしまいました。
　これに伴って「こうすれば大体将来はこうなる」という公式や、「これはこういうものなんだ」という正解がなくなり、確かなものが何ひとつない渾沌とした社会になってしまいました。
　2001年に『世界が100人の村だったら』が出版され、海外にも翻訳本が出版され、世界中で読まれ一世を風靡しました。あの頃からそれは静かに始まっていたと思います。
　あの本はまだ遠回しに遠慮がちにそれを指し示していましたが、今では「これまでひと握りの富裕層が蓄積してきた富を、どう分配するかを考えていかなければなりません」と、メディアで堂々と言う評論家も露出し始めました。これを「イノベーション（革新）」と呼ぶ人が大勢います。個人的には革命だと思います。武装闘争ではない、新しい形の共産主義的な革命と呼ぶのは大げさでしょうか。

　極度の貧困をなくすことは間違いなく急務です。ただ、富裕層をなくすことで貧困層をなくす、または格差を縮めるというのは資本主義では成立しません。共産主義・社会主義の理念です。共産主義・社会主義は富の公平な分配を実現するために私有財産を認めません。
　理念としては優れた思想だと思います。しかし現実は国の中枢にいる者たちが特権階級化し、不正に富と権力を独占し腐敗を産みます。優れた思想に愚かな人類がついていけないからなのか、これらの思想が想定している人間像が高潔で理想的すぎるからなのでしょうか。

　冒頭で述べた通り、これまで主流と傍流、システムと個人、マジョリティとマイノリティ、富裕層と貧困層が逆転したりせめぎ合ったりしなかった理由は、構造的に考えると、中間層がボリュームゾーンとして存在していたからです。いわゆる中流です。年収で言うと450万前後から1000万程度の人たちです。税制にしても、福祉の実現にしても、消費にしても、労働力にしても、実質的に中間層が支えてきました。最大多数の彼らは、勤勉で、従順で、程度の差はあれ富裕層には富を、貧困層には支援を、国や自治体にはそれなりの額の税金を納めてきました。
　また、政治的には、浮動票を担うことで両者のクッションとなっていました。
　つまり、経済的・政治的安定に必要不可欠な存在でした。
　でも、今後は中間層が崩壊していくだろうと考えられます。それはいままで書いてきた通り、１箇所の企業で勤めあげる価値が下がってきているからです。よく働き、よく税金を取られ、よく社会を支えてきた中流のうまみといえばこれまでは「一生安泰」でしたが、その「一生安泰」を担保していた終身雇用や企業そのものの安定経営が困難な今では、従来型の中間層でいる根拠が乏しいです。公務員以外に安定が得られないならば、いっそ収入が減っても、企業で歯車となって働くより、個人のスキルを活かして誰かとコラボしながら仕事を都度都度やっていった方がいいだろうという考えが出てきても無理はありません。
　そうしたスタイルが一般化するのかどうかは未だ疑問ではありますが、二極化が進むにせよ、静かな革命によって均質化するにせよ、中間層はなくなっていくのではないかと思います。