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救いの御子は 御母の胸に #13

 静かになった車内には、「てぃんさぐぬ花」の歌だけが流れていた。

 夜はらす舟(ふに)や
 にぬふぁ星(ぶし)見あてぃ
 我(わん)なちぇる親や
 我(わん)どぅ見あてぃ

 夜、沖に出る舟は
 北極星が目当て。
 私を産んでくれた親は
 私が目当て私を見守っている

 ネセブの父の実家に着いてタクシーを降りるとき、運転手が言った。
「亡くなったお父さんはね、あんたに憑いてるよ。だからね、あんた、きっと倖せになるよ」
 当時、生きる意味や気力をなくして、いま自分が何をやっているかも、これからどうしていくかも全くわからなくなっていた僕にとって、名も知らぬその運転手の言葉は、仄かに揺れる灯となって僕を生きる方へと大きく傾かせてくれた。
 それは比喩ではなく、タクシーを降りたとき目の前に広がった東シナ海のまにまに、刹那かいま見えた幻の光だった。
 真実を照らす灯は、あのとき確かに波に漂い、今にも消えそうに揺れていたが、20年以上たった今も決して消えることなく、僕を温めつづけている

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