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真実は秋の風に【鑑定小説】

高橋愛梨は、薄暗い部屋の中で静かにスマホを握りしめていた。

彼女の心には、誰にも打ち明けられない不安と不信が渦巻いていた。そんな彼女が最後の頼みの綱として選んだのは、見知らぬ占い師とのチャットだった。知らない相手に自分の悩みを話すことに対する戸惑いと、わずかな希望が愛梨の胸に交錯していた。

「こんにちは。よろしくお願いします。」彼女は緊張した手でメッセージを送信した。画面の向こうから返ってきたのは、親しみやすい言葉だった。「はじめまして!こんにちは!よろしくお願いします😊」

愛梨の悩みは、元恋人によって広められた悪意ある噂が、彼女の日常をゆっくりと蝕んでいることだった。元カレは、彼女を陥れるために巧妙に仕掛けた罠を張り巡らせていた。愛梨は、その罠に絡め取られたように、周囲の人々から冷たく避けられ、孤立を深めていった。

「元カレに周りを巻き込んでの悪口や、あることないこと噂を広められています。」愛梨は震える手で打ち込んだメッセージを送信した。その言葉には、彼女の絶望と恐怖が滲み出ていた。

「それは、つらいですね。」占い師の返答は、彼女の心に少しだけ安らぎをもたらした。しかし、問題は依然として解決される気配を見せなかった。愛梨はさらなる助言を求めた。

「この問題は改善されますか?」愛梨は、不安な心を占い師に託すように問いかけた。占い師は冷静に答えた。「時間が経てば、問題は解決します。人々は皆、自分のことしか考えないので、いずれ忘れ去られるでしょう。」

だが、愛梨の心はまだ晴れなかった。「今年もあと4ヶ月ぐらいしか無いんですけど、いい出会いありませんか?」彼女は、希望を求めるように尋ねた。占い師は、温かい口調で答えた。「いい出会いはありますよ。来るべき金木犀の香る頃、愛梨さんの運命が動き出します。」

愛梨は、その言葉にわずかな希望を感じた。しかし、彼女にはまだ知る由もなかった。金木犀の香りが漂う頃、彼女の運命がどのように動き出すのか。その香りは、ただの秋の訪れを告げるものではなく、彼女の人生に大きな転機をもたらす前兆となるのだった……

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