不可解な別れの理由【鑑定小説】
あたしは、慎也と別れた。新学期が始まったその日、何もかもが新しいスタートを切るタイミングで、あたしだけが過去に取り残された気がした。
理由は、慎也が「お互いの将来を考えると、このまま付き合い続けるのはよくない」と言ったから。あたしには理解できなかった。
あたしの将来?慎也の将来?将来なんて、今すぐに考えなきゃいけないものじゃないのに。けれど、慎也は真剣な顔でそう告げた。そして、そのまま去って行った。
そんな中、あたしは占い師にすがるように相談した。いつもの、あの女性占い師に。
「慎也と復縁できるかどうか、それだけが知りたい」と、画面越しに自分の気持ちをぶつけた。彼女は、あたしの話を静かに聞いてくれた。いつも通り、落ち着いた口調で「まず、落ち着いて」とあたしに呼びかけた。その声が、あたしの混乱した心に少しだけ静けさをもたらした。
「将来を考えて別れたということは、慎也さんはあなたのことを真剣に思っていたのでしょうね」と彼女は言った。あたしは、彼女の言葉を反芻した。慎也があたしを真剣に思っていた?それならどうして別れなきゃいけなかったんだろう。頭の中でぐるぐると疑問が巡った。
「でも、将来のために今を犠牲にするなんて…そんなの耐えられないよ」と、あたしは心の声をそのまま言葉にした。占い師は画面越しにうなずきながら「そうですね。慎也さんも同じように苦しんでいるかもしれません。でも、彼の決断はあなたへの深い思いやりから来ているのかもしれません」と続けた。
彼女の言葉は、あたしの心を揺さぶった。慎也があたしを思いやっての別れだったというなら、それをどう受け止めればいいのだろう?あたしは、もやもやとした感情に包まれていた。
「占いではどう出ているんですか?」あたしは聞いた。少しでも確かな答えが欲しかったから。彼女は穏やかな口調で、「易で見たところ、あなたと慎也さんの関係は、まだ恋愛の要素が強く残っています」と言った。あたしはほっとしたような、でもまた不安になったような、複雑な気持ちになった。
「今は慎也さんを尊重して、時間をかけてお互いの気持ちを見つめ直す時期かもしれません。焦らずに、彼への思いを大切にしていくことが大事です」と彼女は続けた。あたしは、しばらく言葉が出なかった。ただ、その言葉の重みを感じていた。
あたしはまだ慎也を愛しているし、できることならまたやり直したい。でも、占い師が言ったように、今は焦る時ではないのかもしれない。
「いずれ、また慎也さんとの道が交わる時が来るかもしれませんよ。その時まで、自分を磨いておくのもいいかもしれません」と彼女は柔らかい笑みを浮かべていた。
その言葉が、あたしの中に少しずつ勇気を取り戻させてくれた。慎也とまた再び会える日を信じて、今はあたし自身のことを大切にしていこう。そんな気持ちが芽生えてきたのだった。
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