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答えがないから、占いがある【占い師:蒼樹のエッセイ】

彼(彼女)の気持ちを知りたい……

恋愛占い、なぜだろうか、多くの人は「気持ちを知りたい」と相談する。
あの人が何を考えているのか、私のことをどう思っているのか、気になって仕方がないらしい。でも、どうしてそんなに気になるんだろう。
というか、ハッキリいって、仮に占い師が「彼(彼女)はあなたを嫌ってますよ」と言ったら、どうするつもりなのか。

考えてみよう。もし、占い師が「彼(彼女)はあなたが好きです!」と大きな笑顔で告げたら、相談者はもう大喜びだろう。フラワーシャワーのような気分で、すぐにスマホを取り出して、「彼が私を好きだって!」と友達にLINEを送り、デートの計画を立てはじめるかもしれない。問題は、そんな上手くいくケースばかりではないという点だ。

もし占いが「彼(彼女)はあなたに興味がない」とか、「最近別れを考えているかも」と出たら?「あ、やっぱり、嫌われてたんだ」と妙に納得しちゃう人もいるかもしれない。こういう場合、占いの後どう動くのか。泣きながら「占いが悪かった!」と叫びつつ、深夜のコンビニでポテトチップスを買いあさり、食べながらNetflixの恋愛ドラマを一気見する未来が見えてくる。あるいは、占い師を責めたりするかもしれない。「違う占い師に見てもらうべきだった」とか、無駄な後悔が押し寄せる。

結局のところ、人が本当に求めているのは「気持ちを知ること」じゃなくて、「自分が幸せになれる確約」だ。占いで気持ちを知りたいというのは、表向きの動機に過ぎない。本当は「どうすれば相手を振り向かせられるのか」か、「どうすれば相思相愛になれるのか」といった保証が欲しいのだ。つまり、「知りたい」のではなく「安心したい」わけだ。そう、占いにおける究極のゴールは、相思相愛の恋人として永遠に添い遂げることであり、占い師にはその道筋を教えてほしいのだ。

ここでふと思う。もしも、未来の恋愛をすべて占いで事前に知ってしまったら、恋愛自体がどれほど面白いものになるだろうか。恋のドキドキ、悩み、ちょっとした嫉妬や、やきもきする感情。それらすべてが、結果を知ってしまった瞬間に風船のようにしぼんでしまいそうだ。恋愛の醍醐味は、その不確実性にあるのではないだろうか。もしかしたら、彼(彼女)も自分のことが好きかもしれない!という期待と不安が交錯する、その瞬間こそが一番魅力的な部分なのかもしれない。

とはいえ、人は常に答えを求めてしまうものだ。恋愛に限らず、人生のあらゆる場面で、私たちは何かしらの保証が欲しい。だが、保証された恋愛が本当に欲しいのか、それとも恋の醍醐味を味わい尽くしたいのかは、相談者自身が自分で決めるべきことだ。もしその占い結果がどうであれ、最終的に恋の行方を決めるのは、占い師ではなく、その人自身の行動だということを忘れてはいけない。
だからこそ、自分なら、こう言うだろう。「占いなんていらない。相手がどう思っているかなんて考えずに、まずはデートに誘ってみれば?」と。


以上は、知人がブログにアップしてしばらくして削除したエッセイのようなもの。占いの現場を知らない彼のような人が感じる典型的な内容である。
ハナから占いを小馬鹿にしてみたり、占いを貶す人に共通するのは、人間の心理というものがてんでわかってないことだ。こんな人達に出遭うたびに、ふんまんやるかたない気持ちになる。

人はなぜ占いを求めるのか。それは単に「気持ちを知りたい」などという表層的な理由ではない。人間は根本的に、不安に耐えられない生き物だ。未来が不確実である限り、その不確実性をどうにか和らげたいと感じるのは、極めて自然なことだろう。それを「保証が欲しい」などと矮小化してしまうのは、心理の深みを知らない発言だ。

占いがなぜ今も多くの人に支持されているのか、考えてみてほしい。占いは、ただの予測を超えて、人々に安心感や希望を与える役割を果たしている。もちろん占いには、科学的な根拠がないという批判もあるだろう。しかし、占いは理屈を超えたところで人々に寄り添い、心を軽くするものなのだ。

例えば、仕事や恋愛、人間関係に悩む人々は、その悩みの中でどうしても自分の感情や考えにとらわれがちになる。そんな時、占いは第三者の視点を提供してくれる。たとえその視点が未来の「確定情報」ではなくても、新たな考え方や解釈を与えることで、迷いや不安から一歩前進できることがある。

「彼(彼女)があなたを嫌っている」という結果が出たとして、それが全て絶望的なものであるとは限らない。占いの重要な役割は、状況を客観的に捉えた上で、どう対処すべきかのヒントを提供することだ。「別れを考えている」と言われたら、そこで終わるのではなく、なぜそうなのか、どうすれば改善できるのかという次のステップに進む手がかりを得ることができる。つまり、占いは結果ではなく、プロセスなのだ。

さらに、人が占いに求めるのは、単なる結果だけではない。占いを通じて、悩みを共有し、安心感を得たり、励ましを受けたりすることで、心理的なサポートを得ている。これこそが、占いの本質だ。恋愛がうまくいくかどうかの答えが欲しいのではなく、その過程で感じる不安や迷いに寄り添ってくれる存在が必要なのだ。

占いは、確かに未来を「見通す」ツールではあるが、それだけではない。占いは、悩みや迷いに直面した人々に対して、未来を少しだけ明るく照らし出す「灯台」のようなものだ。占いにおける答えは、その時の状況を基にした一つの可能性であり、それをどう受け止め、どう行動するかは個人に委ねられている。つまり、占いが提示するのはあくまで「道」であり、道を歩くのは本人自身だ。それを「占いに頼りすぎる」と言うのは、ナンセンス。

結局のところ、占いを軽視する人々は、占いが提供する精神的な支えや安定感の価値を見落としている。だからこそ、彼らに向けて言いたい。占いは、ただの未来予測のツールではない。それは、不安や迷いを抱える人々の心に寄り添い、彼らが自分自身と向き合い、前進するためのきっかけを与えるものだ、と。

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