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【読書感想】コーヒーのグローバル・ヒストリー

エスプレッソの歴史を調べていく中で、今飲んでいる珈琲の歴史も知りたく、半端に読んでいたこの本を、本棚から再び手に取ることになりました。

主に、ラテンメリカの珈琲歴史について書かれ、植民地争いの終盤、そして、独立の大きな流れに、珈琲も蜜に絡んでいることがわかります。

興味深く感じたのが、「権力構造」でした。

ブラジルでは、珈琲を生産する大地主
コスタリカは、精製所を持つコーヒーエリート層
コロンビアは、商人(後に地主)
エルサルバドルは、国家
グアテマラは、国家

ブラジル、コスタリカ、コロンビアでは、珈琲によって作られる経済規模が、国の独立へと変換されたのです。

ブラジルは、「輸出量」
コスタリカは、「品質」
コロンビアは、「輸出量と品質」

それぞれ、価値の見出し方が違うところが面白く、現在の珈琲を見ても、変わりない状況で、僕たちは一杯を手にしています。

珈琲栽培を開始した順番がこの特徴となり、
ブラジルは、土地が膨大にあるためガンガン植えてけ精神
コスタリカは、土地少ないから高級珈琲作ろう精神
コロンビアは、俺たちブラジルとコスタリカ超えれるぞ精神
上記の三国がラテンアメリカの珈琲経済を引っ張り、エルサルバドルやグアテマラが、「俺たちも珈琲バブルに乗ったろ」、と思い、国主導で進めた事で、珈琲生産国ができていきました。

珈琲バブルは、ヨーロッパとアメリカの需要が主軸となり、生産国と消費国の図も、今と変わらない珈琲情勢です。

珈琲バブルを引き起こしたのは、「戦争」と「女性」、でした。

戦争では、カフェインの効能にある、身体の活性化作用を目的に消費され
女性は、珈琲を淹れる事が女性の嗜みであり魅力的である、とされたことが、消費量の増加に拍車を掛けていたとあり、
化学と生活文化から消費を増やしていたのを初めて知りました。

こうした、現在の珈琲の始まりを描きながら、世界中が魅了した珈琲を作る「奴隷労働者」がいたことも、知る必要があります。

読む限りでは、コスタリカでは家族経営が中心のようで、ほとんど描かれていませんでした。

ブラジルは、土地が広大なせいか、奴隷や先住民コミュニティとの関係も描かれ、それぞれの葛藤が見えました。
利益のための人数を確保する事が難しいためか、生産システムを維持しながら国が成長したため、奴隷制廃止を宣言したのは、ラテンアメリカで最後の国だったのです。

他の国も同じ生産システムで作られた珈琲で、一杯に興じた時代があり、それは今も続いているかもしれない。

そして、読み終える途中でもう一つ思う事がありました。
この南北アメリカ大陸は、ヨーロッパ人が入植した時、その土地の先住民を「ほとんど」殺しているのです。
彼らのいた土地に、珈琲大陸という歴史を上書きしたのかもしれないと思い、本を閉じました。

赤いダイヤにもなり、黒い悪魔にもなった果実

サンデル先生に習うと

「それでも珈琲を飲みますか?」

僕は二つ返事で

「はい。飲みます。」



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