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『連載 椅子のない部屋』vol.2締切と帰宅

ひょんなことから彼氏でもなんでもない人と一緒に住むことになった。
1週間くらいの期間限定。今日決まったことなのに、何故こうなったかは思い出せない。


今日は締切の日だった。

定時に上がって、そのまま居候先に帰る。
はずだったけれど、会社を出たのはその1時間後。
そしてその後は編集長に誘われて飲みに出かけた。

家に着いたのは21:30を回った頃。
そこから豚汁を作って、また質素な食事をした。

案外上手く暮らしている。
こまめにゴミも捨てるし、食器も洗う。
自分の荷物も散らかさない。
でもそれは窮屈にやってるわけでなく、一緒にに住む人への配慮。それが勝手にできていると思う。

とはいえ、私はそんなに汚く暮らしてきた訳では無い。ただワタナベくんの生活にすっぽりハマってるんだと思う。

『人に収まることが出来るんだな』って思った。

変に合わせてる訳でもないし、静かに暮らしてる。
そんな感じ。
梅雨時に乾かない洗濯物を洗濯機で回しながら、柔軟剤の匂いを嗅ぎながら、ほわほわのシャツやタオルを静かに待つように。

人と暮らすことで私の生活が丁寧になってる気もする。
家に人がいるから心配させないように早く帰ろう。
同居人とたくさん話すために早く仕事を終えよう。
体を壊して欲しくないから、野菜たっぷりのご飯を作ろう。

私にも人を思う気持ちがあったんだな。
よかったと感じた。

私は今あたたかい。

かなも

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