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独断と偏見の2023年舞台作品ベスト3

2023年に劇場の現地で見た作品は以下の通りだ。

  • 舞台刀剣乱舞禺伝

  • SOLO Performance ENGEKI HAPPY WEDDING

  • キングダム

  • スパイファミリー

  • LILIUM

  • 今日から仕事辞めてくる

  • ミュージカル刀剣乱舞花影揺れる砥水

  • 3人どころじゃない吉三

  • ダーウィンヤング

  • チェンソーマンザ・ステージ

  • 解なし

  • 顔見世歌舞伎マハーバーラタ

  • 十二月大歌舞伎

  • ミュージカル刀剣乱舞双騎出陣

以上が2023年に劇場で観劇した舞台だ。

配信を入れるともっと多いが、現地で見たものに絞ってランキングしようと思う。

ちなみに100%主観で根拠がないどころか
「作品」についてというより、その作品が私にとってどうだったか?みたいな自分語りに寄った感じである。

お時間ございましらどうぞ

第3位:舞台刀剣乱舞禺伝〜矛盾源氏物語


この刀剣乱舞禺伝は、
刀剣乱舞の舞台作品の中で初めて
「女性キャストだけ」でキャスティングしたチャレンジングな作品だ。

SNSではかなり辛辣な意見も目にしたが、
私個人としてはかなり良い演劇体験になったと感じている。

とはいえ、私が見たのが千穐楽で、
しかも私個人に「宝塚」の観劇経験がなかったのもあり、とりわけそう感じた可能性もある。

賛否両論を巻き起こした今作だが、
一観客の感想としては、
舞台経験の豊富な役者たちの発するバツグンの安定感があり、観客として演者に身をゆだねられる稀有な雰囲気をもった作品だと感じた。

例えば、不満点として「殺陣がゆっくりだった」という点を揚げている人がいたが、
舞台上で怪我なく振る舞うことの大切さを知っているからこそ、無茶をしないということではないだろうか。

そういう「長く舞台の上にいる人」的な
緊張感と安定感のいい塩梅、みたいのが常に感じられた。

当然人気シリーズなのでなかなかチケットが取れず、席はA席、つまり3階バルコニーだったわけだが、運よく最前列であり、手すりがあったものの、視界は良好で全体を良く見ることができた。

舞台から遠かったにも関わらず、
いざ観劇すると「刀剣男士」が「そこにいる」感じがして、
そのことも特別な体験をしたという感覚の一つになったと思う。

全然詳しくないのだが、宝塚出身の女優さんたちにとって「刀剣乱舞」などとは、主演の七海ひろきさん以外は縁遠いというか、これまであまり関わりがなかったコンテンツではなかろうかと思う。
それでも役や作品をよく理解してくださり、
十分に刀剣乱舞を表現してくれていた。

宝塚出身、ということは、多分かなり歌も上手いのだろうと思う。
この作品はストレートプレイの方の刀剣乱舞のカンパニーの管轄で制作されたため、演者の歌唱がなかったのが大変に残念だ。

公式にとっては「イマイチの評判だった」という認識なのかもしれないが、私にとってはかなり良かったので続けて欲しい。

第2位:三人どころじゃない吉三


古典やスタンダードの演目(ハムレットとかトゥーランドットとかそういうやつ)を現代エンタメとしてリメイクする演目でおなじみの少年社中が、
歌舞伎作品である「三人吉三」をエンタメマシマシの演劇作品にリメイクした「三人どころじゃない吉三」の二度目の上演を観てきた。

前回は2.5次元界で絶大な信頼を得ている鈴木拡樹が主演でお嬢吉三を演じたワケだが、
なんとこの度わたくしの推しこと梅津瑞樹がお嬢吉三で主演、とのことでいそいそと出かけてきた。

わたしこと、著者はひねくれ者なので……
推しが主演であるからこそ、贔屓目なしに鑑賞したい、みたいな謎の力が入って鑑賞した(笑)
そのせいかはわからないが……

たぶん主演としては鈴木拡樹の時の方が良かったと思う。
梅津くんも不足はなかったんだけど……器用過ぎる気がしたんだよな。

鈴木拡樹版は「女装したスリになるしかなかった、悲しさとたくましさを共存させる男」の人生を背負って舞台に立っているように見えたので……
配信などで見る予定のある方は参考にしてもらいたい。

この「三人どころじゃない吉三」の良かった点は他にもある。

一つは「演劇」っぽかった、ということだ。

昨今の演劇は演出がド派手もド派手だ。
同じ金を払うのであれば、ド派手な演出が見れた方が観客の満足度も上がるのだと思う。

なので「演劇」というより「ショー」みたいな、
アイドルのコンサートみたいな華やかなショーと、
演劇との境界とがますますなくなってきていると思う。

それが、良いことなのか悪いことなのかわからない。

著者は高校生の頃、弱小演劇部だった。
使ってみたい小道具、大道具、衣装、演出への憧れはつのるばかりだったが、
どれもただの高校生には実現不可能だったので、ただ暗くしただけの空き教室で、なんとか工夫して演劇を行っていた。

今となっては、その「なんもないのに、あるみたいにして物語を進めた」ことこそ、「演劇」だったような気もしている。

話は戻るが、
この「三どこ」は決して演出が地味だったというわけではないのだが、
ド派手な演出に頼ったシーンがほとんどなくて、
演者の演技とセリフだけで物語を進めていくストレートプレイの演劇であったことに魂がふるえるほど感動した。

紀伊國屋書店の紀伊國屋ホールという非常に歴史あるハコであったのも、そうした雰囲気に寄与していたかもしれない。

やはり私は「演劇」が好きなのだ。
もちろんショーも好きだけど。

少年社中というキャリアある劇団、キャリアある俳優の劇を見られたのが本当に良かった。

もう一つは客演の俳優が良かったことだ。
さきほどは鈴木拡樹に比べるとイマイチとか失礼こいたが、
客席のドアからしゃなりと登場した梅津瑞樹の横顔の美しさに息をのんだ。
私の推しは美しい人なのだ。
みなさん、梅津瑞樹をよろしくお願いいたします。

それと廣瀬智紀と村田充を初めて観たのだが、
背が高くてかっこよくて目で追ってしまう役者だった。
こんな華のある人が世の中にいるのか、と衝撃を受けた。当然演技も上手かった。

それと、冒頭の諸注意みたいな「前説」を歌舞伎でいう「黒子(くろこ)」がやってくれるのだが、これがすごく面白かった。
ネタバレするとこの黒子は物語の重要人物なんたけけど笑、
ともかく見始めたばっかりの観客にはそんなことはわからない。

ただの「黒子」と思っていたのが、
結構前に出てジェスチャーと紙芝居的なト書きで客席にものすごい語りかけてくる。声こそ出さないが。
あげくに「黒子」が客席に拍手を求めて来たとき、「黒子なのに目立とうとする」意外性が面白くて、思わず爆笑してしまった。
舞台の前説で意表を突かれるなんてことあまりないので、大いに笑わされ、心をこじ開けられての観劇となったのだった。

第1位:吉例顔見世歌舞伎マハーバーラタ戦記


生まれて初めての歌舞伎体験が2023年の観劇のハイライトになった。

銀座という地域、歌舞伎座という建物、歌舞伎という興行、オシャレした老人、イヤホンガイドの仕組み……
すべてが目新しく、面白かった。

現在、4回歌舞伎を見に行ったところだが、
まだ物珍しく、新鮮な面白さがある。

これまでに見たことのある歌舞伎で、
単純に演目の好みをあげるなら「天守物語」が一番好みだったが、
このマハーバーラタ戦記は、観客を直感的に楽しませるべく工夫されているように感じ、
歌舞伎が初めてだった私も、そのおかげで歌舞伎の世界に受け入れてもらったみたいな体験として感じられたのだと思う。
 
冒頭の絢爛豪華な神様の世界が今も目に焼きついている。

ストーリーも、知らぬ者はいないインドの古典を題材にしていることもあり、「人生」や「信念」にも触れる、魂のアツさみたいのを感じた。

他のnoteにも書いているが、
そもそも「歌舞伎に関わる人」を見られたことも、新鮮だった。
伝統芸能に関わる方々のクールな姿。

特にこのマハーバーラタは丑之助さんという子役が活躍されていたのも最高に良かった。
ちいせえ〜〜〜のがちょん、、、と出てきたと思ったら、しっかりとセリフをしゃべり、大切な役をこなしている立派な姿……
親でもないのにじ〜んとしてしまった。

歌舞伎役者を好きになりそう!となると、
沼が深そうなので……
少なくとも「演目」には詳しい舞台通、
みたいにはなりたいかも!と思ったので、
しばらく事象が許す限り通いたいと思う。

まとめ


やっぱり舞台はいい。

とはいえ、2023年は「一期一会」・「人生が変わった」みたいな演目にはついぞ出会えなかった気がする。
とはいえ、毎回、
幕が上がる前に照明を落として真っ暗になった客席で、「舞台っていいな」としみじみ感じた。
当然、演者の精一杯も、まぶたの裏に焼きついた。

やっぱり舞台はいい。

語弊を恐れずに言うなら、
人間のできる最も意義のある活動とは、
演劇だと思う。

値段が高いのが懐に辛いが、
たぶん今年もたくさん舞台に行くだろう。
今年もどんな幕開けに立ち会えるのか、
今から楽しみだ。

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