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コンサルたるもの、旅先の出会いもフル活用

社長のパーパリーダウンコート(布団)を思い出し一人でニタニタ。完全不審者と化したヒルズ氏に相席のアジア人女性が声をかける。(前回


あれ、なんの話してたかな? あぁコンサルの休暇は転職の仕込み、ついでに旅先の美女と素敵な会話、ってな。そうだよ、布団を思い出してる場合じゃない、目の前の相手に集中だ!


◆会話はファッションから

にやけた顔を整え、相席中のアジア人女性を見つめる。少し東欧感もある整った顔立ちだ。一体なんの用だ?

「あの、もしかして日本人ですか?」

えぇ
よく分かりましたね。

「やっぱり!全身ユニグロだしもしかしてって」

、、、

ユニバレはもはや死語、しかし全身ともなると若干の恥じらいを感じる。社長の布団を笑っている場合じゃなかった。とはいえこれも何かのご縁、仲良くしますか。

「チーズ、よかったらどうです?」
赤ワインと共に頼んでいたチーズプレートを勧め、自己紹介タイムがスタートした。

◆日本人向けコンサル

「えぇー?奇遇です!」

ワインを片手ににこりと笑う相席。なんと彼女もコンサルタント、フィンランド人と結婚し今はエストニアに住んでいるらしい。地の利を活かし、エストニアに進出したい日本企業向けのコンサルをしているのだとか。

「アポ入れと紹介だけで結構取れるんですよ」
ほら、日本企業って視察好きでしょう?

あぁ、、、典型的な日本人向けコンサルだ。
日本語しか話せず現地の事情が全く分かっていないーー。こういった日本人向けのぼったくりサービスはどこの国にも存在する。英語力のなさ、国際感覚のなさ、、、日本人の弱みはコンサルにとっての旨味だ。

「さっきまで東京の方が来てたんですよ」

そうか、今日も嵌め込まれた日本人がいたのか。こうして無駄な視察に来たあげく何も決めない日本人って印象が定着していくんだな。エストニアのスタートアップは既にアポ入れがしづらいとも聞いている。まったく罪深い職業だよコンサルっての...

「なんか布団みたいなコート着てる方で」

は?

「笑っちゃったぁ、たしかコンサル会社の社長さんなんだけ...」


パッッリーーーーン


「それ!!!詳しくぅぅぅううう!!!」


◆避難警告

「ど、どうしたんですか、、、」

飛び散るワイングラスに目が点の相席コンサルタント。申し訳ないがセルフイメージを気にする余裕などない。東京、コンサル会社、布団みたいなコート、つまり我が敵が襲来!さぁ洗いざらい知っていることを話してくれ!ASAP!ASAP!

え、えっと、、、社名は流石にお伝えできないわ、特徴???だからベージュの布団、、、そうそうパーパリーだった!あと秘書かな?木村佳乃さんみたいな美人が付き添ってて、、、さっきまで案内してたから、まだ近くにいると思いますよ?

「あなたっ、大好きですぅぅぅっ!」

謎の告白と共に現金を押し付け店を駆け出る私ことヒルズ氏。もしかして今のはカッコよかったか?いやただの不審者か?そんなことより布団!エストニアに来ている!?しかも佳乃付き!?!?


スマホの機内モードを解除する。
大量のメッセージが着弾。

“ヒルズさん、避難警告です”
爆乳総務から警告きとるやんけ!

“社長そっち行ってるよーウケるw”
ギャル氏ー!全然ウケねぇよ!!!

“ヒルズさん、お疲れ様です。社長の旅程なんですけど元々北欧諸国をめぐる予定だったのですが、先方との打合せがキャンセルになったため別の面談の設定依頼が昨日き...”
結論は何なんだよ新人Boy氏!!!

“社長、タリンへ向かう。船でフィンランドに渡ることをお勧めします”
ソリューションまで書ききるお嬢氏ー!

確かに、あの成金社長が船で対岸に移動するとは思えない、かつフィンランドに用があるとも思えない。お嬢氏の的確さに私は今震えている。


◆幻覚との闘い

宿に到着、呼吸を整える。

驚異的な速さでまとめた荷物を抱え、タクシー乗り場に走る。あとはいかに社長に遭遇せずにフェリーまで辿り着けるかだ。

くっ、どういうことだ!? 

道行くベージュのコートが全て布団に、、、いや社長に見えるぞ! お、落ち着け、あいつは中肉中背の黒髪、顔の面積やや大きめだ!金髪鼻高とは違うんだ!!私は誇り高きヒルズの民、落ち着けぃ!!!


ーーー

「た、辿り着いた、、、」

デッキに出て、すっかり暗くなった海を眺めながらビールを開ける。さっきまで優雅に赤ワインを楽しんでいたというのにどういうことなんだ。

どうもこうもない。

恋愛コンサルに嵌め込まれたコートを着て、日本人向けコンサルに嵌め込まれた弊社社長がタリンに来たまでだ。なぜタリンの、しかも観光客向け旧市街地かって? そりゃ佳乃氏に嵌め込まれたからだろう。

「あいつ、、、大丈夫か?」

いや大丈夫じゃない、大丈夫じゃない証左なら山のようにある。今心配すべきは社長じゃない、我が身だ。

「転職か、、、」

飲み切ったビールの瓶を片手に夜空を眺める。瞬く星にパネライ氏の笑顔がちらつき、軽く頭を振る。振ったついでに他の乗客のコートがベージュと気が付き心拍数が上昇、、、なんて休暇だよ。


「次は大陸が被らないようにしよう」

固く心に誓い、近づいてくるヘルシンキの明かりを見つめた。

- 落ち着かない休暇編 完 -

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