石畳の街に来て

そういえば、美女と野獣の映画で馬車に乗っているシーンはガタガタと揺れてはいなかっただろうか。ベルが乗っているのも、ガストンが乗っているのも。そんなに激しく揺れるものかと無意識に思っていたであろう記憶が蘇る。

初めてヨーロッパの国に降り立ち、そのシーンがいかに忠実な再現によるものだったのかを思い知るとは。

小説の表現の中に時々「石畳の」という情景がある。だからなのか、ずっと憧れていた石畳の街。一歩一歩を踏みしめる。ヨーロッパに来て一番最初に感動した、実感が湧いたのはこの石畳。きっといつか完成する私の物語に「石畳の街に降りたった時」そんな表現が加えられるだろう。

それに加えてガス灯とかはどうだろうか。

その前に、少し私の話になるけれど、ここヨーロッパの地にたどり着くための私の旅の工程を聞いてほしい。

「じゃぁね、行ってくる」連日のテロや、飛行機の事故。確率の問題とはいえ、旅行前はその万が一、いや億が一の不幸が我が子に降り注ぐのではないだろうかと不安になる母に私はその不安をどうにか被らないようにワクワクで満ちた声で言う。しかし不安とは伝染するものだ。心臓の鼓動は上がる一方。はっきり言って、飛行機は苦手だ。怖いもの。飛行機に乗るたびに思う。しかしそれと対角にある私の中での気持ちもある。

怖いからと言って外国を知らない人生の方がいやだ。

飛行機が嫌いだからと言って海外を断念することも一つだと思う。私の父がその一人だ。仕方のないことだ。しかし私はそうではない。「もしも」の時のために、自分でこの選択をしたことを後悔しないために上の言葉を言い聞かせる。でも、「見送ってしまったばかりに」と後悔させないために、私は家へ帰らなければならない。大きく、おおきく成長して。こんな世界を見てきたと言うお土産話をたんと蓄えて。

とはいえ、飛行機に乗ってしまえばもう足掻きようがない。アシアナ航空にはなんの新作映画が入っているかな。最新のモニターとは程遠い、ビットが見えるような画面に、操作ボタンとそれで操作される画面にだいぶ時差のあるその娯楽機器を触り「メリー・ポピンズ リターンズ」を見つける。ひゃっ!

その映画で、ガス灯の点灯夫と言う職業があることを知った。なんて愉快な仕事だろうか。そしてヨーロッパの地に降りたった時に、これが目に入らないわけがない。

ガスなのか、電気なのかを今は気に留める必要はない。私にとってこれは今、ガス灯にしか見えないのだ。

飛行機が怖かったのに、その飛行機で観たえいががこのたった一つの街灯を「ガス灯」と言う知らなかったものに見せてくれる。なんだって繋がっている。メリーポピンズの舞台となったロンドンに行った時にはやっぱり私の物語に出てくるんだろう。

拝啓お母さんへ
私は無事に空の旅を終えて、今は新しい世界の情報に溺れてしまいそうです。旅に出る前の不安と天秤にかけても、やっぱりわたしは外国の空気が好きだなと思う。たくさんのエネルギーを1ヶ月かけて蓄えて帰ります。お母が好きそうな場所を見つけて、「また来たい場所、連れて行きたい場所」を探しながら。

そうそう、言ってなかったね、今はチェコのプラハにいます。

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