見出し画像

企画のコンセプトはどうやって決めればいいの?(ノベルゲーム制作講座11)

前回は企画三本柱のひとつ、
コンセプト=アプローチについて説明しました。

実際に『コンセプト』を決めるには、
どうすればいいのでしょうか?


画像1

一番の近道は『テーマ』を分解したり
掘り下げること。

「飛翔なら自衛官ものかな?」
「未来なら流線型かな?」

というように、
内側から滲み出てくる『おもしろ成分』を、
ネタに落とし込むことです。

とはいえ、そんなポコポコとネタが湧いてきたら
誰も苦労はしませんよね。

というわけで、今回はネタ出しの
『取っ掛かり』をいくつかご紹介します。


「これが正解」「こうしろ」というわけでなく、
「こういう切り口もあるのかー」
と話半分程度にご覧ください。

また、流行ってる、売れているからといって
面白いとは限りません。

「このコンセプトは、
手掛ける企画のテーマに沿っているのか?」

「きちんと書きたい(創りたい)ものを
書けているか」



などなど、常に自問自答を続けましょう。


■コンセプトの例:ネタをパクれ

画像2

いきなり怒られそうなフレーズがきました。

「パクれ」というと語弊がありますが
インスパイア、リスペクトです。

インスパイアとは、ひらめき。
リスペクトとは、敬意を払うという意味です。


尊敬する作家や作品に触発され浮かんだネタを使い、
同じテーマに基づいて作品を創作する行為です。

「あの作品が好きだから、
俺も似たようなのを作ろう!」というわけです。

手塚治虫先生も、ディズニー映画から技法や話作りを学んでいます。
S・スピルバーグが黒澤明をリスペクトしてるのも有名な話ですよね。


画像3

あなたが「いいね!」と思った
映画、漫画、アニメ、ゲームのネタは、
一度自分の中に取り込んだ上で、
アウトプットしましょう。


(設定の丸パクリはいけません。台詞のコピペもNGです)

既存作品と同じようなネタを企画に起こすと
不安になりますが、

『自分フィルター』を通した時点で別物に生まれ変わるのでご安心を。

企画をこねくり回している間に『原型』は消えるものです。


画像4

私が企画したノベルゲーム
『幼なじみは大統領』
では、
インディペンデ○ス・デイなどの
洋画の要素を取り入れています。
アメコミ的、洋画風というアプローチで、
『アメ○カの大統領』というテーマを演出しました。


大事なのは
『テーマを表現するのに、
このアプローチは適切か?」
と問い続けること。

理由もなくインスパイアしただけでは、
独りよがりな作品になるでしょう。

またデメリットも大きいです。

まず、参考にした作品を好まない層には
まったく響きません。

どうしても元ネタが頭に浮かぶので、
「あの作品に似せよう」
「あの作品は越えられない」と、
自分から枷をハメてしまいがちで、
新しい発想が浮かびづらくなります。


■コンセプトの例 :二匹目のドジョウ

画像5

インスパイアとは似て非なるもの。
こちらは世間でヒットしている作品にあやかって、
同じ芸風、同じ雰囲気の作品を作るアプローチです。

商業的観点に立ち
「匂わせるのではなく、あえて似せていく」
「『戦車道』が流行ったので、我々は『潜水艦道』を出そう」という
(ある意味)安直な発想です。

ですが、これが結構ヒットします。
売れているモノには訳がある。


画像6

ラノベ業界で異世界転生モノが広まったように、
売れている作品は市場での受けもよく、
受けがいいから売れているのです。

元になった作品に固定ファンがおり、
彼らにアピールしやすいのがメリットですが、
期待外れだった場合
(作品の質が要求基準を満たさなかった)は、
元作品と比較されることになり、
まったく売れません。

売れるモノをただ真似するだけでは、
企画はヒットしないわけです。


「あの作品はなぜ売れているのか。
売れている要素はコレ。
 だから、ここを参考にする。
ここは捨てて、新しいネタを……」

など、
売れている理由を分析&別要素を加えるなどして
二匹目のどぜうを狙います。

柳川鍋、美味しいですよね。


画像7

『幼なじみは大統領』は当時流行り始めていた
「艦コレ」「刀剣乱舞」からヒントを得て
「擬人化」「女体化」ネタをヒントに、
(今となっては定番ネタとなっており、古く感じるかと思います)
「大統領が美少女になったらおもしろそう」
という発想で作りました。


■コンセプトの例 :隙間産業

画像8

二匹目のドジョウとは違い、
こちらはニッチなネタでアプローチする戦略。

流行り物はみんな真似をしていて、
ユーザーも飽きている。
そこで誰も作らないニッチなネタで、
コアなファン層を狙い打ちするわけです。

たとえば(本当にパッと思いついただけですが)
『テレアポの受付嬢と"だけ"恋愛できる』ネタ。

ターゲットを絞り込みすぎて
売れそうにありませんが、今までにないネタです。

「売れそうにないけど俺は好きだよ?」

というニッチなファン層にアピールするわけです。
同人ゲームだと、この手の作品は多いですね。


画像9

大事なのは、
作る側も売り=ニッチな要素が好きであること。


ニッチなファンほど審美眼は鋭いので、
適当に作ると見向きもされません。

「実は待っていた!」という
サイレントユーザーが予想外に多かった場合、
ダークホースとして謎のヒットを飛ばします。
冷静に市場を分析し、次の企画に繋げたいですね。


■コンセプトの例 :○×△

画像10

ひとつのネタではパンチが弱い。使い古されている……
そんな時は、
要素と要素を掛け合わせて化学変化を狙いましょう。

美少女×タンクアーミー、美少女×戦艦。アイドル×ゾンビ

……という具合ですね。
見える、ワシには何かしら大ヒットした
アレやコレやが見えるぞぉぉ!

掛け合わせた瞬間に
「これはおもしろそう」と判断しやすく、
ネタとしても扱いやすいでしょう。

『幼なじみは大統領』も、
『美少女×大統領』の掛け合わせです。

センスが問われるアプローチの仕方なので、
「ヒットしそうな匂い」を嗅ぎ取れないと
爆死します。
独りよがりにならず、周りの意見も聞きましょう。
一部の人間しか評価しないなら、
ニッチな方向へ舵を切るのも戦略です。


■コンセプトの例 :過剰にしてみる

画像11

これはアプローチというよりかは
ネタの広げ方になります。

「嫁ものを書きたい。そうだ、5人姉妹にして全員許嫁にしよう」

「妹ものを作りたい。妹が12人いたらドッタンバッタン大騒ぎだな」

「遠距離恋愛を描きたい。各都道府県に彼女がいるのはどうだろう?」

「主人公は格闘家……だとおもしろくないから、ガ○ダムに乗ろう」

という具合に、
元ネタを大げさに膨らませて
インパクトを与える手法もあります。

ただし、かなりの飛び道具なので、
そのアプローチがテーマに沿うか、
もう一度検討しましょう。

例えば、
1対1の純愛を心理描写を含めて詳細に描きたいのに
12人の妹とのハーレム展開になったら、
テーマが破綻します。


■まとめ

コンセプトとは、
テーマを表現するためのアプローチ=切り口です。


企画のおもしろさに直結する部分なので、
試行錯誤を繰り返しましょう。

コンセプト決めの判断基準となるのが、テーマです。

テーマとマッチしないコンセプトで企画を進めると、ほぼ失敗します。

内勤ライターとして、美少女ゲーム業界で15年以上働いてきた経験と、そこで得たノウハウを文章にまとめています。ゲーム業界特有の謎規則や技術解説、仕事に取り組む際の心構えなどもご紹介。応援してくださると定期的に記事が更新されます(人間だもの)