企画に大事な『アピールポイント』とはなんぞや?(ノベルゲーム制作講座12)
アピールポイントとは、企画の売り。
お客様に商品を手に取ってもらうための、わかりやすい宣伝文句。
企画の中身を言語化、数値化して、興味を惹かせよう。
■その企画の売りはなに?
企画を立てる際、コンセプトと同じくらい大事なのが
『作品のアピールポイント、『売り』は何なのか?』
と考えることです。
今のご時世
中身がわからないもの、期待できないものにお金を払いません。
真っ白で飾り気がなく中に何が入っているか不明な段ボール箱と
「超合金スペシャルDXロボット!」と書かれたクリスマスプレゼント。
玩具を欲しがっている男の子がどちらを開けたがるかは、一目瞭然ですね。
「中身がわからないからなぁ。買おうかな? どうしようかな?」と
尻込みをしている人のケツをバットで叩く(失敬)ための仕掛け
それが『アピールポイント』です。
■アピールポイントを考える際は、思わず手を出したくなるように
アピールポイントを考える際は、
「箱の中には、面白いモノが入っているよ」
「具体的には、○○という素材を使ったぬいぐるみだよ」
「しかも、キミの好きなウサギさんのキャラクターさ★」
「他にも……おっと、これ以上は開けて確かめてね!」
という感じで
プレゼントを受け取る側(ユーザー)が
ワクワクするような謳い文句、
思わず手を伸ばしたくなるような誘い文句を捻り出しましょう。
「某有名シェフのお墨付き! 黒部和牛A5サーロインステーキが
通常5000円のところを、今ならなんと500円!」
と書かれていたら、みんな血眼になって奪い合いますよね?
商業ラインにしろ同人ラインにしろ、
ユーザーにお金を払って頂いて遊んでもらう以上は
「商品価値を問われる」ことを強く意識してください。
あなたが手がける企画(ゲーム)の市場価格はどれくらいか。
これを買うことで、ユーザーはどれほど楽しめるのか。
冷静に判断し、熱意を持ってアピールしてください。
■アピールポイント : 内容を数値化する
冒頭の説明で
「フタを開けてみなければ中身はわからない」と書きましたが、
あえて中身を箱に書いてしまう方法もあります。
食品の成分表示と同じように
「プレイ時間80時間保証! ヒロイン10人! シナリオ容量3M!」
など、言葉や数値で表現できるポイントをアピールとして推します。
具体的な数値をアピールすることで、
「ほう? この作品はシナリオに力を入れてるのですか、やりますねぇ」
「こいつはクリアまで80時間かかる大作だぜ。そういうのを求めてた」
と、ユーザーの需要を満たして購買意欲を刺激するわけです。
クライアント(様)も、作品の中身を数字で把握しやすくなるので、
ボリュームをアピールするのは有効な手段でしょう。
ただし、「制作に3年かけました!」と大作感をアピールしても
「延期を繰り返しただけだろ?」とマイナスイメージに取られることも。
どの部分をアピールすれば宣伝的にプラスになるか、よく吟味しましょう。
■アピールポイント : スタッフを推す
豪華声優陣、有名原画家など、
その作品に関わったスタッフを『売り』にするパターンです。
黒部和牛の例だと、「産地」「生産者」でアピールすることになります。
宮崎駿監督が新作映画を作ったら、つい見てしまいますよね?
有名クリエイターにはファンがついており、一定数の集客を見込めます。
特に声優ファンは購買意欲も高く、固定層として『数字』を持っています。
アピールポイントとして制作スタッフを推す場合、
いわゆる『沼』にハマっている目の肥えたユーザーに対して効果的ですが、
ライト層にはまったく響きません。
例えば、街角に貼られた将棋教室のポスターに
「有名棋士○○2段が教えてくれるよ!」と書かれていても
将棋にまったく興味がない人が見たら「誰それ?」で終わってしまいます。
■人気のあるキャラやスタッフを誘致(コラボ)
前記のアピール方法と似ていますが、
こちらは「外部コンテンツから有名キャラ、スタッフを連れてきた」と
アピールすることで、外部のファンを取り込む作戦です。
「ハ□ーキ○ィ」とのコラボを行うことで女性ファンを取り込んだり、
洋画の吹き替えに有名芸能人を採用する、というPR方法ですね。
企画の存在を知らなかった「初見の人」を誘致することが可能ですが、
ファン層が違いすぎる場合、そこまで大きな効果は見込めないでしょう。
ただし、『隣の畑の住人』なら大量に呼び込むことができます。
最近ではゲームの宣伝に「VTuber」を登場させたり、
アニメで人気のキャラが、ソシャゲーとコラボを行ったりしています。
親和性が高いファン(別のコンテンツにハマっているオタク仲間)を上手く取り込めるよう、作品内容とマッチする魅力的なコラボを行いましょう。
■NGなアピール : 質=中身で勝負だ!
最後によくないアピール方法について。
ゲームに関わらず、創作物を宣伝する時に行いがちな誤りが
「感動的なシナリオ!」「魅力的なキャラ!」「プレイすれば面白い!」
と、作品の中身やクオリティーをアピールすることです。
一見、まっとうなアピール方法に思えますが
『フタを開けてもらうための工夫』の話をしているのに
「フタを開けてみればわかるよ!」では、お話になりません。
企画段階で「クオリティーが低い」「ヒロインは平凡」と書くわけはなく、
当然のことをアピール=他に推すポイントがないの? と勘ぐられます。
「感動的なシナリオ」と意味のない文字を並べられても、泣けはしません。
作品の質に関しては、キャラ紹介文や体験版など『中身』で語りましょう。
(プレイした感想をSNSなどで広める戦略は、ゲーム発表後の話です。
今はゲームを作る前、企画段階でのPRについての話をしています)
■まとめ
アピールポイントとは、
お客様に商品を手に取ってもらうための、わかりやすい謳い文句です。
『アピールポイント』で欲しいアイデアは、中身以外の部分。
100売れる作品を、120売れるようにするための工夫を考えましょう。
内勤ライターとして、美少女ゲーム業界で15年以上働いてきた経験と、そこで得たノウハウを文章にまとめています。ゲーム業界特有の謎規則や技術解説、仕事に取り組む際の心構えなどもご紹介。応援してくださると定期的に記事が更新されます(人間だもの)