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掌編「白波さんのパパイヤ」


 白波さんの頭の上にパパイヤが見えるようになったのは、先週の金曜日のことだった。載せてるんじゃない。浮いてるんだ、頭のてっぺんで。パパイヤって熱帯地域にしかできないと思ってたけど、白波さんの頭の上にもできるんだ。

 青くてまるまるとしたパパイヤ、熟れることはないんだろうかと僕は少し心配した。それから試しに課長の頭の上を見てみたけれど、何も浮いていなかった。それとももう何処かへ落っことしたのかもしれない。課長らしいやって思う。

 ところで僕は、はだかの王様はピエロだったんだと考えている。だってはだかの自分を鏡の前で見て、服を着ていないって気が付かないわけないもの。でも王様は、国中のみんなが喜んで、笑ってくれるから、それでいいやって思ったんだ。はだかの王様は選んで道化師になったんだよ。さだまさしも歌ってた。
「笑ってよ~」って。

 みんな誰かに笑っていて欲しいんだろうなって僕は思う。

 白波さんは仕事に対して自分にも他人にも厳しさを持った人だ。みんな白波さんと目が合うとかちんって口を閉じて怒られるのを待ってるみたいな顔になる。

 僕は今週の水曜日から、白波さんの顔を見るたびにニコッと笑うことにした。白波さんの顔を見ると怖がる人がいっぱいいるけど、僕にはもうパパイヤが見えるから何も怖くない。今週の水曜日からの僕は、白波さんがニコッと笑い返してくれるのが楽しみで堪らないのだ。

 今日もパパイヤは、何食わぬ顔で白波さんの頭の上にある。

 
                            おわり

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