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「食の風景・季節の天ぷら」

「藤の間揚げ物あがったよ」

忙しい厨房の中、飛び交う威勢。一方では煮方の兄さんが親方に味見をお願いしている――天麩羅を並べるとそんな料亭の厨房思い浮かべます。

天麩羅、唐揚げ、フライ・・・。揚げ物はどうも奥が深く、考える程に手強い料理だと思います。衣、油、温度、見栄え。いつか上げたてを提供してくれる天麩羅屋へ連れて行って貰った時、その仕上がりにいたく感動しました。職人と云うのはやっぱり凄いものですね。油で胃がもたれる事もありませんし、何より一つ一つの食材が、外側はさくりと、それでいて中はしっかり味わい深く、食材が活きている。まさに美味しいは楽しい瞬間の連続です。見習いたい要素が満載で、カウンター越しにじっと眼を注いでしまいました。しかし眺めるだけで会得できるならいいのですが、生憎とそう簡単にもいきませんね。技術は勿論のこと、そもそも店の厨房と家庭のコンロでは火力にも差がありますものね。やっぱり、外での食事は外で味わい、家では家の楽しみ方をすると致しましょう。

さて、それでは気を取り直して参ります。

季節のお野菜を、新蓮根とさつま芋を天麩羅で食べたい。その一心で久しぶりに天麩羅を作りました。他には人参、エリンギです。ピーマンも買っておけば良かったと思いつつ、彩りに水菜を添えました。皿の右隅には天然塩が載っています。真っ白で何も分かりませんが。

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盛り付けはあまり得意でありません。天麩羅ならば山の形に、立体感の出る様にしたいのですが、ついべたんと並べてしまいます。因みに奥の蓮根は丸い形をしています。五ミリくらいのスライスにして、丸のまま揚げたのをがぶりといきたくて。手前のものだけ半月です。

今夜は他に炊き込みご飯と味噌汁にしました。油物ですし、熱い味噌汁は欠かせないですね。炊き込みご飯についてはまた後日、食の風景シリーズにて紹介できればと思います。こちらも秋味がたんと詰まっております。

箸置きもこの頃はすっかり秋です。今夜はどんぐり。どんぐりの箸置きに栗の木の箸が乗っています。

秋はまだ始まったばかり。食だけでなく、ランニングに出れば栗の木やすすきなど、山の風合いも少しずつ移り変わっています。書く事に夢中になりがちな日々ですが、外の景色にも目を向けて、時には穏やかな気持ちで過ごしたいものです。

                        いち

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