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食の風景「来し方の集い懐かしむ、ひな祭りちらし寿司」


今年のひな祭りにはちらし寿司を作ろう。それを重箱へ詰めよう。そう決めて買い出しをしました。

今年のちらし寿司の具材は、白米三合、前日の内に水へ浸けておいた干し椎茸、人参、蓮根、スナップエンドウは地元産でとてもいい色、それから錦糸卵。

スナップエンドウを湯がいて笊に上げ、同じお湯で蓮根、人参、刻んだ干し椎茸に火を入れます。椎茸の戻し水は米を炊く時に混ぜました。そして野菜を茹でた汁は干し椎茸の御蔭で良い出汁が出ましたから、後ですまし汁にします。

仕上げの彩り用に蓮根と人参の一部をよけておき、その他は椎茸と一緒に醤油、みりん、酒で甘辛く味付け。

ご飯が炊けたら熱いうちに酢を合わせます。市販に出来上がったすし酢があるので大変重宝しています。甘めですので、酸味を求めたい時は米酢で調節します。今日は椎茸などを味付けた時の調味液も混ぜ合わせたいので、すし酢はそれだけ分量を減らしました。盛り付けの前に、年に一度くらいしか登場しないピンクのでんぶも冷凍庫からお出ましです。

サーモンの柵を切り、錦糸卵を焼いて、これで材料が揃いました。

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先ずは酢飯に甘辛く仕上げた椎茸たちを混ぜ合わせます。そして、器へ盛り付けます。

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美味しそうです。かやくごはんのようですね、もう、食べたい。ですがここから、腕の見せ所です。と云って、自分は盛り付けが得意じゃないので、やり過ぎない様にと云い聞かせています。まずはお雛様へお届けする用に、小皿へ手毬寿司をイメージして飾りました。

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大層歴史の詰まったお雛様なので、小道具も年々古びて行きます。そこへやや重みのある酢飯を載せる緊張感ときたらありません。雪洞も相当古く、明かりを点けたら傍を離れる訳にはいきません。けれどどうでしょう、この高貴な美しさ。今年も華やかに春を告げて下さいました。奇麗です。立派なお姿です。後もう暫く飾っておいて、また丁寧に納めます。

さてちらし寿司に戻ります。みんなで食べる重箱の方はどうなったでしょうか。

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てんこ盛りになりました。これでも加減したのですが、賑やかな一段の出来上がりです。スナップエンドウと錦糸卵をもっと繊細にカットすれば良かったなと、後から思います。けれどこのスナップエンドウ、物凄く甘くて美味しかったです。噛み締めて欲しかったんです。今年は家族揃って御祝いとはいかないので、個々でもしっかり味わって貰えるようにと願って作ったのです。

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なにはともあれ、今年も楽しいひな祭りです


そうだ、重箱のお料理を百倍楽しむ方法を御存知ですか。それは、出来上がったお料理に、一度蓋をする事です。直ぐに食べるからと、そのまま膳に運ぶのは勿体無いです。きちんと蓋をして、風呂敷まではかけなくても、そうして食卓を整えてから、愈々「頂きます」と云う時に、そぞろ蓋を開けるのです。

開けた瞬間ぱっと目に飛び込む、漆黒の正方形の中に広がる華やかな世界、彩の世界、雅な世界。心が思わず燥ぎます。自分で作ったから、中身は知っているんです。けれど、蓋をする事で、一度世界が遮られると云いましょうか、気持ちはリセットされています。鍋物然り、蓋には思わぬ効能があるのかも知れないですね。

おや、これは蛇足でした。長々失礼を致しました。

本日は去り日しのひな祭りを振り返りました。皆様はどんな桃の節句をお過ごしになられたでしょうか。

                          いち

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