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「日本の物作りの美しさよ こぎん刺し」

 一昨年のことです。以前こちらでお話したこともあったかと思いますが、人生初の青森県へ降り立ちました。津軽だとか本島の端だとか林檎の木の一杯植わっている処だとか、行きたい処はそれはもう沢山在ったのですが、色々調べていて最終的に辿り着いたのが奥入瀬でした。それは長編小説「よりみち」で物語に落としましたので、いつか機会が訪れれば旅紀行として語るのも面白いかと思います。

 その青森の旅でどうしても手にしたかったものの一つが「こぎん刺し」でした。便利な世の中ですから、手に取ろうと思えば家に居ながらでもこぎん刺しの物を買い求める事は可能でしたが、私はどうしても青森でお気に入りの一つに出会いたかった。八戸駅で初めて本物に触れた時、目の前にしたその手作業の細やかさに心底驚き、またなんて気の長い作業だろうと思いました。相当根気のいる作業に違いありません。それにしても奇麗な模様です。そして生地が厚くしっかりしています。その目的もあって生まれたこぎん刺しだと、寒い雪国の知恵なのだといつか学んだ事が在ります。自室の壁に大ぶりな布を掛けるだけでも目に楽しいと想像します。

 駅のショップとホテルの売店で色々なこぎん刺しを眺め、迷った挙句、好きな紺色の、ティッシュカバーを選びました。座布団カバーや鞄なども捨てがたかったのですが、なにせ帰りは大荷物が予想されますから、自分の物の為だけに荷物の嵩を増やすことはできないと、ここは小物でも、本物を見て、手にする事が出来たことを喜びとして、セレクトしたものでした。

 トップの写真にあるものがそれです。美しいですね。触れた時の指に伝わる糸の紡がれた感触は、じんわりと優しい。

 今でも鞄からこれを取り出す度、青森を思います。日本にはまだまだ心の籠った素敵な道具が沢山あります。そんな一つ一つに巡り合う冒険へ、リュック一つ背中に背負って、出発したいです。          いち

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