「KIGEN」第五十九回
こんなにも感情を大きく揺さぶられたのは初めての経験だった。喜怒哀楽の起伏が激しくて、自分の解釈が付いて行けない。怒りに気付いても理解や制御を試みる前に口から態度から表へ勝手に出て行ってしまうのだ。どうしていいか分からなかった。十六歳にして初めて気の落ち込みを体感している基源は今、荒野で一匹のうさぎの様に心許ない。堪らず庭へ降りて植え物の間へしゃがみ込んだ。足元を見つめる内に目が慣れて、自分の影がぼんやり出来ていると気が付く。植木の影も凸凹に並んでいる。試しに手をかざすとそれ