見出し画像

住友商事 x SORABITOが共に目指す建設現場のDX

SORABITOがビジョンとして掲げる「建設のあらゆる現場をスマートに」を推進するパートナーとして2019年5月に出資参画いただいた住友商事株式会社。今回は建機レンタル事業部の室伏部長をお迎えし、両社で進めてきたこれまでの取組みや今後のDX戦略についてお話いただきました。

対談者:

  • 室伏一郎/住友商事株式会社 建設機械事業本部 建機レンタル事業部長※1

    •  1993年に住友商事へ入社以降、約30年に及ぶ建機業界経験を持ち、様々な市場で主に建機レンタル事業のマネジメントや新事業の立ち上げ等に従事。2022年4月より理事 米州総支配人補佐 米州建機輸送機グループ長(ニューヨーク)に就任

  •  青木隆幸/SORABITO株式会社 代表取締役会長

    •  愛知県にて代々続く建設会社の長男として生まれ、幼少の頃より建機が身近にある環境で育つ。2011年の東日本大震災をきっかけに起業を決意し、建機流通事業を展開後、2014年に「世界中の明日をつくる」をミッションとしたSORABITO株式会社を創業。国内最大級のスタートアップピッチコンテストIVS Fall 2016優勝

※1:撮影日(2022年1月31日)時点


建機レンタルビジネスの魅力

青木:
本日は対談の機会をいただき、ありがとうございます。ベンチャー企業とその株主の対談企画は、出資タイミングでの実施が多いと思いますが、今回の対談では出資当時の想いだけではなく、出資から3年弱の協業もお伝えしたいと思っています。室伏さんはじめ、皆さんから頂戴した現場の声が我々の事業を伸ばす一番の推進力になったと感じています。おかげさまで、SORABITOは2021年に「i-Rental 注文アプリ」「i-Rental 受注管理」、2022年に「i-Rental AI」という3つの新サービス※2を発表するなど、様々な実績を積み重ねることができました。対談するなら今が一番良いタイミングかと思い、今回お声がけさせていただきました。まずは室伏さんのバックグラウンドを伺えればと思いますが、建機業界のご経験が長いですよね?

※2:SORABITOのサービス


室伏:
本日は改めてよろしくお願いします。住友商事に入社したのが1993年なので29年目になります。入社以来ずっと建機畑です。入社以降、2/3の年数はトレードをしており、東南アジアや中東のお客様に建機を売り歩いてきました。そして、2009年からレンタル事業に関わるようになり、出資先の太陽建機レンタルに3年間出向しました。「モノを売る商売」から「建設現場で必要なモノを必要な分だけ必要なタイミングでお貸しする商売」に変わったんですね。建機レンタルはまさにソリューションビジネスであり、とても良い経験をしています。レンタルの魅力は建設現場つまりお客様に一番近いことだと思います。お客様のご要望に応えなければいけない厳しさもあって大変な仕事ですが、顧客の動きが鮮明に入ってくるダイナミックさに魅力を感じます。

青木:
建機レンタルは、予め地域の建設需要を分析した上で、大量の建設機械を選定・購入し、現場の要望に合わせて商品の提案や貸出しを行います。一回売って終わりではなく、継続的にコミュニケーションをしながら現場の成功に貢献するサービスなので、私たちと同じSaaSのようなWebサービスに通じるものを感じます。

室伏:
たしかにそうですね。レンタルはアセットビジネスと言われますが、不動産事業のように1つの大きな資産を抱えて効率良く回すというよりも、顧客が欲しい機械を沢山持つことによって、顧客の気持ちが分かるようになるという特徴があります。最初は買った機械の稼働率も分からない一方で、結果として、豊富に品揃えできている方が歩留まりは良くなるんですね。レンタル会社は建設会社1社に貸すわけではないので、顧客に貸せる機械を沢山持っているからこそ、色んな顧客のニーズに応えられるようになる。特定の1社のために支援する活動はファイナンスやリースになりますが、建機レンタルはそこの部分が違っていて面白いビジネスだと思います。

青木:
日本の建設会社は、昔は必要な建機を全て自社で購入・所有するスタイルでしたが、現在はレンタルの割合の方がむしろ多いですよね?とは言え、世界的に見ても、レンタル事業は比較的新しいビジネスモデルだと思います。「所有から利用」という流れはどうやって生まれてきたのかを教えていただけますか?

室伏:
グローバルで先行して進んでいるのはイギリス、アメリカ、日本の3ヶ国です。「レンタル化率※3」で言えば、イギリスが8割、アメリカが5割強、そして日本が6割強になります。この3ヶ国はレンタルサービスが始まって1世代から1世代半(40~50年前)程展開してきています。青木さんもコメントされたとおりですが、当時は建設工事の機械化が進んだ時期であり、特に公共工事においては、最初から機械を保有している会社でなければ入札に参加出来なかったそうです。そのため、建設会社は機械を買い揃えたわけですが、資産管理上の問題などから徐々にレンタルが始まりました。今では、1.7兆円※4を超える大きな市場に成長しています。例えばASEANなど新興国は保有が主流ですが、徐々に借りる方にシフトし始めている国も出てきています。

青木:
世界中でレンタルの需要がますます高まっていきますね

室伏:
SDGsの観点でもレンタル需要は大きくなると思います。足元では例えば排ガス規制の問題があります。所有すれば償却まで5〜10年かかるため、いつの間にか排ガスの基準が国の要件を満たさなくなってしまいます。一方、レンタルすれば新しい機械を借りられるわけです。これからの時代はさらに重要な存在になると思います。

※3:現場に10台の機械があれば、うち何台がレンタル会社から調達したかを示す指標
※4:令和2年度 建設機械レンタル業実態調査

住友商事 室伏様

SORABITO創業から出資に向けて

青木:
レンタル需要がますます高まる中で、SORABITOを創業したきっかけはレンタル会社の業務課題を数多く聞いたことでした。レンタル業界やその先の建設業界の課題がこんなに大きいのかと思い、私自身のバックグランドを踏まえて、課題解決しようと決めたんです。2019年に住友商事さんにご出資いただきたかった背景には、SORABITOがサービス開発側から見えていること、そして住友商事さんが現場側から見えていることを掛け合わせて、顧客により深く入り込みたいという強い想いがありました。私が住友商事さんに初めてお会いしたのは、創業1年目の2015年前後に遡ります。「創業間もないベンチャーなのに会ってくれるかな」と不安でしたが、とてもカジュアルにお話していただき、感動して一気にファンになりました(笑)。住友商事さんは国内・海外のレンタル会社に出資されていて、ずっと業界の先頭を走ってこられていると思います。我々は一緒に未来を作れないかなと思っていたのですが、どうして2019年のご出資に応じていただけたのか、教えていただけますか?

室伏:
一言で言えば、青木さんが描いている世界観と当社の目指す世界観が一致しているからですね。我々は建機の製造から運用、処分、再販のライフサイクルの中で、様々な現場の課題を抱えるお客様に解決策や新たな価値を提供できるNo.1 One-stop Solution Providerになることを目指しています。ここに青木さんの描いている夢との親和性を感じました。具体的には、建機を切り口に建設業界に関わるあらゆる領域の生産性をITの力で高めていくソリューション。「これだ」と思いました。我々は世界21カ国でレンタル事業や販売代理店を展開していますが、2017年には米国でオンライン輸送マッチングを展開するVeriTreadに出資したりと新たな取組みが加速しています。その背景にはDXツールを使いながら理想のバリューチェーンを創出しようという意図があり、我々のビジネスの狙いと青木さんの夢が合致していたわけです。もう1つのポイントは、SORABITO経営チームの人柄と情熱でしょうか。青木さんはいつも目が輝いていますし、夢は壮大だけど、もやっとしていなくて、具体的な絵を常に見聞きさせてくれる。これも重要でした。社長の博多さんはじめSORABITOメンバーは壁にぶつかりながらも打ち手が早いし、いつも元気な印象があります。新しい事業を作る時には経営トップのこういう元気さが重要ですし、創業して7年経った今でも感じられるのが凄いなと思います。我々も学ばないといけない。とにかくぶつかっても、七転び八起きとはこのことだなと実感します。

青木:
とても嬉しいです。七転び八起きで諦めずに頑張れるのは、背中を押してくれたり、困難な道でも目線や歩幅を合わせて共に歩んでくれる御社のようなパートナーに出会えたことも大きいです。

SORABITO 青木

住友商事とSORABITOの3年間

青木:
御社にご出資いただくきっかけとなった「i-Rental」シリーズ(2021年2月に「i-Rental 注文アプリ」、10月に「i-Rental 受注管理」、22年3月に「i-Rental AI」を発表)が生まれたきっかけは、レンタル会社や建機メーカーにヒアリングをする中で、「こういうサービスを提供すれば、レンタル業界やその先の建設業界の課題解決につながるのではないか」という構想が浮かび、2017年6月に検討プロジェクトをスタートしたことでした。そして2019年5月に御社からご出資いただくタイミングでは、キナン様を中心にレンタル会社の業務理解がSORABITOの中で進み、レンタルの営業や受注業務を効率化するワンストップサービスの開発が進み始めていました。御社では、ご出資以降のSORABITOとの取組みをどのように考えられていたのでしょうか?

室伏:
当社ではNo.1 One stop Solution Providerを目指し現場のペインポイントを知ることを重視しており、販売代理店やレンタル会社、そしてゼネコン等の建設会社と直接コミュニケーションすることで得られる声など、現場の様々な意見を折り混ぜながら日々事業拡大にチャレンジしています。SORABITOについても同様に、人と資金の協力に加えて、現場の声を踏まえた意見を言わせてもらっています。青木さん、博多さんには我々のグループ会社のネットワークに入ってもらって、お互いにヒントを得ながらやっていきたいですし、我々もSORABITOから吸収したいと思っています。

青木:
まさに人の部分では、御社から出向者に来ていただいたおかげで、「i-Rental」はプロダクトとして確実に成長していますし、室伏さんには非常勤取締役※1として、経営の意思決定にご意見をいただくことで、SORABITOが永続的に成長するためのディスカッションが密度濃く行われています。また、御社が毎年開催している建機グローバル会議にも参加させてもらい、グローバルで活躍する販売代理店やレンタル会社、事業会社の方々に会うことで「負けてられないな」と思いました。やはり世界を身近に感じられる意義をとても感じます。2019年にSORABITOがプレゼンをさせていただいた際はまだ構想だけという内容でしたが、いよいよ事業が始まって顧客の課題解決を実現するフェーズに入ってきました。「将来のグローバル会議でここまで業界を変えてきたんだと言えるようになりたい」と当時一緒に参加した博多とも会話をしています。

室伏:
「i-Rental受注管理」は、真似をするのが本当に難しいサービスだなと改めて思っています。レンタルの現場でいちいち起きていることを間近で見て経験している人でなければ作れないサービスなんですよね。「i-Rental 受注管理」からサービスインしたのはすごい。本当に現場を知っている、ペインポイントを解決するアプリだなと。そして、このサービスを導入した太陽建機レンタル様に認めてもらえたことが凄いし、開発プロジェクトでは大変な局面もあったかと思いますが、よく乗り越えてここまできたと思います。そもそも太陽建機レンタル様としっかり会話できるようになったこと自体が、僕としては凄いことだと感じます。SORABITOが新しいビジネスを生み出す際に色んなステークホルダーと今後もぶつかるはずなので、本当に得難い経験をしていますよね。SORABITOは良いビジネスフェーズに入っていると思います。

青木:
2020年にご契約をいただいてから太陽建機レンタル様の様々な現場に行かせてもらい、現場の本気度をひしひしと感じたことで、我々も緊張感を持って取り組めましたし、間違いなく現場と一緒にサービスを開発していくというSORABITOのスタイルを確立する契機となりました。2021年には「i-Rental 注文アプリ」で西尾レントオール様との取組みも動き出しましたが、これまで本当に沢山のレンタル会社の現場を見たことが活きていますし、ここで作ったものをSaaS型で提供している理由は、現場を沢山見て受け入れられるという自信があったからです。今後も現場と一緒にサービスの磨き込みを進めていきたいと思います。

住友商事の今後の事業展開

青木:
御社は太陽建機レンタル、アメリカのSunstate Equipment、そして、つい最近もアジアのレンタル会社であるAver Asiaにもご出資と、本当に幅広く取り組まれていますが、今後はどういう事業展開を想定されているのでしょうか?

室伏:
建機の世界も徐々にDXが不可欠になっていくと感じていて、先ほどお話したVeriTreadはじめ、我々も色んなチャレンジを応援しています。常に試行錯誤していますが、やはりレンタルを含む現場支援、つまり顧客の課題を解決する新しいビジネスモデルを提供したいですし、そのためにはDXを使ったアセットの運用効率化など、我々の事業経営をさらに高度化した取組みを進めていく必要があると思います。現在の住友商事では、DXを経営戦略の柱に位置付けており、特定の業界内における業務課題を解決できるような新たな価値を創造するためのDX戦略と、もう1つは産業横断で社会課題を解決するためのDX戦略にも取り組んでいて、まさに縦・横両方のDXをやろうとしています。例えば、2018年にDXセンターという専任組織を立ち上げ、グローバルで約150人が担当していますし、SCSK株式会社と連携したり、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)やアクセラレーター事業も立ち上げたり、データ分析を強みとする株式会社Insight Edgeを設立したりするなど、かなり横断的にDXを推進する体制を整えていますので、建機の周辺事業で新しいビジネスを作りたいと思っています。

SORABITOの今後の事業展開

青木:
SORABITOの未来については、年始にビジョンをアップデートしています。建設業をより広く捉えていて、現場内だけではなく現場の外にある、例えば建機レンタルも含めた「建設業の現場」と整理し、「建設のあらゆる現場をスマートに」というビジョンを新たに掲げました。建設業の内外を繋げていくサービス作りをより一層意識したいと思っています。

室伏:
青木さんが描いている世界は建設機械だけではなく、そこにいる人たちや接触するもの全てをDXでまるっとビジネスにしていくということだと理解しています。当社の色んな事業本部との掛け合わせもできるし、今まで出資したスタートアップからのヒントもあるだろうし、そこから派生するネットワークを使って事業展開もできるかもしれない。とにかく早く手を打って実証実験を高速で回していくということを我々も意識しながらサポートしていきたいと思います。とは言え、SORABITOの方が速いと思うので、我々もそのスピードについていけるように一緒に走って新しい世界を作っていきたいですね。

青木:
私自身、建設業とレンタル業が身近にある人生を歩んできた中で、父の会社、地元の友人が建設現場で人や予算が足りずに苦労している姿を見てきています。足りないことが沢山ある中で何とかして業務を回そうとしているものの、人手の減少と高齢化が進んでいるし、若い人は入ってこない、そもそも入りづらい業界。でも見方を変えれば、これほどやれることだらけの可能性がある業界はないと思っていて、未来は明るいと信じています。業界に残るプロダクトやサービスを作りたいという想いがある中で、自分達が解決方法を提供する存在になり得ることは恵まれていると感じます。ここまで全力をかけてやれるのは幸せですし、大変なことも多いですが、日々確実に前進を続けています。何より御社のように我々を信じてくださる存在がいるからこそ頑張れますし、御社と一緒に今後数年かけてどこまで大きいものにできるか、とても楽しみにしています。

室伏:
たしかに建設業は例えば自動車産業等に比べても改善の余地がたくさんあるし楽しみですよね。

青木:
アメリカの事例では、データを活用できるほどレンタルビジネスの成功につながるという話を聞きました。その一方で、日本のレンタル業界はデータが可視化されておらず、活用できない部分が多く見られます。電話でレンタル注文がされるし、注文後の社内のやりとりもトランシーバーだったりするので、受発注におけるやりとりなどが記録に残らないんですね。なので、我々の役割は業務フローをデジタル化する、そして、そのデータを蓄積・分析してレンタル会社の経営判断に活かしていただくことだと思っていますし、その結果、業界がとても魅力的になるはずです。そして、「i-Rental」を事業運営におけるインフラに成長させることで、その先にあるAIやIoTの世界ともつながっていきます。その過程において、御社の様々な事業分野と連携できる可能性を感じています。

室伏:
SORABITOの社名って、対象とするビジネスを限定していない雰囲気があると思います。そして、まずはレンタルを切り口に建設業界の構造を変えていけるような魅力を感じます。是非、一緒に頑張っていきましょう。

撮影時のみマスクを外しております

今回は対談記事をお送りしましたが、いかがでしたでしょうか?SORABITOのサービス利用やアライアンス等にご興味をお持ちの企業様がいらっしゃれば、是非お気軽にお問合せください。

(取材・編集・文:定田 充司 / 写真:宇佐美 亮

この記事が参加している募集