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今から30年前のアルバムだけど、カッコ良いー中島みゆき『夜を往け』

このアルバム、今から30年前の1990年発売。
何度も何度も聴き直しているアルバム。
多分一番聴いた回数は多いと思う。
だから、CDのケースは傷まみれでボロボロ。
そして、また今日も聴いている。

1曲目、アルバムタイトルになっている「夜を往け」
エレキギターのイントロが、もう最初っからカッコ良い。
フォークやニューミュージック、歌謡曲ではなく、ロック。
2曲目以降は、失恋をテーマにした歌が並んではいるが、70年代や80年代のニューミュージック系「失恋の歌」という曲調では全くない。完全に新しい世界。
3曲目の「3分後に捨ててもいい」なんて、詞の世界観は中島みゆきではあるけれど、曲と合わさっての印象は完全に新しい世界へ飛び出している感じがすごいある。
NHK-FMのミュージックスクエアという番組で、村上龍と中島みゆきの対談があったけれど、村上龍はこの曲のことを凄く褒めていたことを覚えている。
4曲目の「あした」はシングルとはちょっと違うバージョンで入っている。ただ、よく聴かないとわからない。でも、アルバム全体のカラーとして凄くまとまっている。
5曲目「新曾根崎心中」など、ドスがきいている。
「〜しんで」という韻を踏んでいる歌詞があるが、心中という言葉と絡まっているように感じるのは、考えすぎか。曾根崎心中を本歌取りしているという事もあって、すごみがある。
6曲目「君の昔を」
さらっと歌っているようで、恋愛の情念があふれ出ている。ボーカルとエレキギターとの絡み合い、打ち込み系の音とのバランスが凄く良い。
7曲目「遠雷」、雷土がこれまたギターやドラムで表現されているように感じるけれど、けだるい状態を連想するかのようなボーカルがストーリー性を浮き上がらせていて、世界に入っていってしまう。
8曲目「ふたりは」
夜会で歌われた曲ではあるが、このストーリーを語っている視点が、なんとも言えない。引き込まれる。あらゆる生きとし生けるものに対しての愛が感じられる。ストーリー仕立てではあるけれど「ファイト」とも共通するものがある。
9曲目「北の国の習い」。ものすごく明るくあっけらかんと歌っているが、世界はこれまた怖いくらい。表面的なものを欲しているのではなく、人間の本質を突きつける。「かっこつけてるんじゃないよ」と、ドスを利かされている感がすごい。
そしてこのアルバムの最後の曲「with」
このアルバムの中にある色々な人間模様を全部ひっくるめてかっさらっていく感じがある。「時代」にも通じる。歌詞にもあるように、「旅立ち」の歌になっている。この辺は中島みゆきという人の一貫性を感じずにはいられない。

全編通して、詞はストーリーがものすごく濃く、聴いていると言葉から様々な世界がどんどんと広がっていく。しかし、だからといってじっとりしているのではなく、凄くカラッとしている。
音楽の作りといい、ボーカルといい、ドライ。
ボーカルは、瀬尾一三プロデュースになってから、結構ストレートな迫力のある声の出し方になっているけれど、コブシをきかしたうなりやがなりというのは次のアルバムから。まだこのアルバムはそこまでリキが入っていない様に感じる。それでも表現性は曲によって違いを出している。
これは、ホントにスゴイアルバム。

そんな印象があるからか、これからの暑い夏、クルマの中で聴くととても気持ちいい。
また、これもまた夏の夜、少し灯りを小さくした中で聴くと、これまた不思議なことにさっぱりする。

これの一つ前の「回帰熱」、そしてこの「夜を往け」、次の「歌でしか言えない」、さらにミリオンになった「EAST ASIA」と89年から90年代初めにかけてのこの4枚のアルバムは、何度聞いても飽きない。アルバムとしての作品性の高さがスゴイ。レコードからCDへとメディアが変わり、途中で途切れることなく1つの流れとしての作品作りというのがあり、まるで映画を観ているかのような感覚になる。

おそらく、これからもずっと聞き続けるアルバムである事は間違いない。

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