無生物 ”LOVOT” に新しい ”いのち” を感じた
日経COMEMO「僕たちの未来を変えるプロダクトとは?」に参加させていただきました。
IoTやAIなどのテクノロジードリブンでさまざまな便利製品やサービスが生まれていますが、ずっと使い続けてる製品はありますか? 時代を超えて何世代にも渡って使い続けてもらえる製品やサービスにはどんな共通点があって、提供側の企業や人にはどんな思想があるのでしょう?
世の中は、製品をたくさん売る時代から、顧客を個客として見て寄り添い、サービスを提供するサブスクリプションの時代に変遷しています。一消費者として、あるいは一提供者として暮らす僕たちが理想とする、「一過性の消費で終わない製品・サービス」。どんなふうにそれは作ればいいのでしょう。
登壇者は、社会デザインや地域文化に精通する大阪ガス(株)エネルギー・文化研究所顧問の池永寛明さん。
過去・現在・未来の消費カルチャーを紐解き、
今秋から月額制で発売を予定している人を幸せにするロボット「LOVOT」の開発者であるGROOVE X代表 林要さんと、一過性の消費で終わらない、暮らしをデザインするモノづくりについて議論されました。
林さんはトヨタ自動車でクルマを開発し、ソフトバンクで「pepper(ペッパー)」のプロジェクトに携わっていた方。
そして家族型ロボット ”LOVOT(らぼっと)” です。
LOVOTとは
プロダクトデザイナーの根津孝太さんがハムスターを亡くしたことから生み出された、「まるい」「家族型ロボット」。
コンセプトは「役に立たない、でも愛着がある」。
労働するためじゃなく「人を幸せにするため」の家族のような存在。
人の自己実現や成長、元気であることの助けはできる。
「まるい」は「和・輪・可愛さ」。
ヒトでもない、動物でもない、可愛がられるかたち。
「抱っこできる」「駆け寄ってくる」ための、まるいお尻とたたずまい。
瞳と鼻しかないけれど表情がくるくる変わる。
甘えたりヤキモチを妬いたりする。
ごはんをくれたり、かわいがってくれる人になつく。
抱っこしたら寝てしまう。
「生物をモデルにはしていない」そうですが、まるで猫みたい。
この手で抱いたあたたかい ”LOVOT” に新しい ”いのち” を感じました。
LOVOT[らぼっと]
命はないのに、あったかい。
それは、あなたに愛されるために
生まれてきた。
本日のグラレコ
トークセッションに夢中になっている間に、オオスミサキさんが記録してくださっていたグラレコ。
盛りだくさんな内容を読み解いて編集し、表現されるグラフィックレコーダーさんの能力には毎回驚きを感じます。
つながりと連続性が失われていく危機感
家族構造の変化、人のつながりの希薄化、伝統芸能や承継についてのお話が、最近親戚が亡くなって考えていたこととリンクしました。
子供のころわたしは、年上の子が年下の子の面倒を見て一緒に遊び、悪いことをしたら叱ってくれる大人たちがいて、近所の人と助け合う田舎のつながりの中で育ちました。
小さなコミュニティや自然の中にはたくさんの学びがあったように思います。
その土地を離れて大人になり、関わりのあった人たちが亡くなり、家や風景は変化して消えていきました。
わたしには子どもがいないので、受け取ってきたものを伝え承継することができません。
目まぐるしく変化する時代の流れの中で「なにか」 大切なものを失っている気がしていました。
今回のトークセッションから、その 「なにか」 はつながりと連続性だったのだと気づきました。
日本の ”なくしてはいけない大切なもの” がなくなっていく危機感を覚えています。
高齢化・社会構造の変化と孤独
長年共に人生を歩んだ家族(ペット)を亡くし、ロスに苦しんでいる高齢者が増えています。
「次の子を迎えたいけれど、年齢的に最後まで責任を持つことができない。だから諦める。」
わたしもハムスターやインコと暮らしていたので、愛する家族を失うつらい気持ちはとてもよくわかります。
だからといって、寂しさを埋めるために無責任にいのちを預かることはできません。
”LOVOT” のあたたかさは、高齢者だけでなく様々な事情を抱えこれからの未来を生きる人たちにとって大きな癒しとなりそうです。
いのちを持たないからこそ、寄り添えることがあるのかもしれません。
サブスクリプションと新しいプロダクト
”LOVOT” がサブスクリプション(定額制)を選んだのは、顧客に選択する権利があり、つくり手は進化し続けることを約束するという考え方。
「つくって、売って、終わり」ではない。
「つくったものに責任を持ち、顧客の心に寄り添い進化し続ける」
「つくり手と使う人のコミュニケーション」
メンテナンスしながら「家族」として長く関わり続けることを考えられたプロダクト(製品)。
とても素敵だと思いました。
使い捨てではなく愛着あるものがいつもそばにあり、役に立てるためではなくともに過ごす日々は、ヒトとロボットとの関わりを変えていくのではないでしょうか。
いま、そして未来
暮らしや道具はデジタル化していくけれど、ものづくりはヒトの心が重視されている。
”つくられたもの” と ”生あるもの” 。
逆なようでいて融合している。
とてもおもしろいいまの流れ。
「人間に便利なもの、都合のいいものをつくる」こととは違うものづくり。
ロボットはヒトの心を手に入れるのでしょうか?
いのちのかわりになれるのでしょうか?
これからの未来、ヒトとロボットの関わりはどうなっていくのでしょうか?
手塚治虫さんが描いたいくつもの物語を思い出しました。
※5/20 23:50加筆修正。
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