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『ディーバ』~その歌声から始まるロマンスとサスペンス~

今年、2022年1月13日に、映画『ベティ・ブルー』などで有名なフランスの映画監督ジャン=ジャック・ベネックスが亡くなりました。

彼を追悼し、代表作『ディーバ』が、9月16日(金)より全国順次公開されるそうです。

1980年代初頭にフランスでは3年近くもロングラン上映されたという本作、その後のフランス映画界の新しい波を作った作品のひとつと言われています。

映画情報

1981年製作のフランス映画
原題:Diva
日本初公開:1983年11月

あらすじ
人気オペラ歌手のシンシア・ホーキンスは、自分の歌声を決して録音させないことで有名で、レコードは1枚も制作されたことがない。そのホーキンスの大ファンである郵便配達人のジュールは、彼女のコンサートで、その歌声を盗み録りし、彼女のドレスも盗んでしまう。さらにジュールは売春組織の重要な情報が録音されたテープを偶然手にしてしまう。2つの極秘テープを巡り、さまざまな人々による攻防が繰り広げられ、一方では、徐々に親密になっていくジュールとホーキンスの愛も綴られる。


ディーバの歌声


「ディーバ(diva)」とは元はイタリア語で、日本語では主に「歌姫」と訳されます。
この映画では、ソプラノ歌手のシンシア・ホーキンスが、そのディーバ。クラシック歌手としては、このタイトルだけで惹かれてしまいます。

本作は、彼女のコンサートがパリで開催される場面から始まります。映画の登場人物のみならず、映画鑑賞している我々の耳もその歌声に心地よく支配されます。

ちなみにホーキンスが劇中で歌い、ジュールが隠し録りした曲は、イタリアの作曲家カタラーニのオペラ『ワリー』の有名なアリア「さようなら、ふるさとの家よ」。そして、ホーキンスがパリで滞在しているホテルの部屋でピアノを弾きながら歌うのが、バッハ=グノーの『アヴェ・マリア』です。この『アヴェ・マリア』は私のレパートリーでもあり、秋のリサイタルでも歌う予定です!

ディーバは誰?

私は、恥ずかしながら、このホーキンス役を演じた歌手を知りませんでした。

ということで調べました。

シンシア・ホーキンスを演じたのは、ウィルヘルメニア・ウィンギンス・フェルナンデスというアメリカ出身のソプラノ歌手で、劇中の歌も彼女本人が歌っているそうです。大変な美声で、オーラをまとったスター歌手を見事演じたウィルヘルメニア・ウィンギンス・フェルナンデス。出番は少ないのですが、彼女が登場する場面は全てインパクトがあり、やはり彼女あっての映画だと思います。

この映画の予告映像で彼女の歌声が聴けます。↓


まさかのサスペンス、そして映像美と音楽

『ディーバ』というタイトルから、音楽が関連していることは想像できましたが、なんとこの映画、アクション、サスペンス要素が盛りだくさん。例えば、地下鉄の階段をバイクで駆け降りるジュールと、それを駆け足で追いかける警察をスピーディーに撮影し、見せ場の一つになっています。

しかし私のいちばんのお気に入りは、映画の宣伝写真にもなっているホーキンスとジュールが、夜明けのパリの街を散策する場面です。
ピアノが奏でる幻想的な音楽、薄暗い青い色調、1本の傘と2人の人物。
数分間この場面をじっくり見せてくれます。

他にも、個性豊かな登場人物がたくさん、それを演出するためのインテリア、小道具も見所です。

1つの映画のなかで、これだけいろんな要素が味わえる作品もなかなかないと思います。しかし、そのきっかけがディーバの歌声であるということに、同じ歌い手としては慄いてしまう一方、人の心をここまで動かせる歌い手になりたい! と意気が上がります。

お薦めです!!

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