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まとめ読み騒音の神様

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【まとめ読み】騒音の神様 138〜139 神様は、お金を稼ぎたい。

【まとめ読み】騒音の神様 138〜139 神様は、お金を稼ぎたい。

く花守が仕事に行っている間、神様は一人で瓶ビールを飲んでいた。ビールを飲み、タバコを吸いながらぶつぶつと独り言を言っている。
「万博行くのは、天気が良うなってからやな。夏の間に万博行って、秋になったらわし、稼ぎに行こうかな。」
神様は以前から、電気屋さんに行っては「わしも稼がんとなあ、」とぶつぶつ言っていた。とうとう行動に移すかもしれない様子だ。
「わしも、人間みたいに普通に働けたらなあ。そやけど

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【まとめ読み】騒音の神様 135〜137 台風がやって来た。

【まとめ読み】騒音の神様 135〜137 台風がやって来た。

竹之内は次の日も、万博現場にやってきた。朝にはボクシング体操でフックを教えた。それから万博内を移動しながら、ヒジ打ち男を見張っていたが雨が降って来た。どの現場も片付けが慌ただしく始まる。
「台風来るとは聞いてたけど、えらい早いな。」と竹之内はつぶやく。風も強く、万博にある森の木が、うなり声をあげているような音をたてている。竹之内は、竹之内工業の片付けを手伝う。現場自体は松原が仕切っていて、竹之内が

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【まとめ読み】騒音の神様 128〜131 松原の現場復帰

【まとめ読み】騒音の神様 128〜131 松原の現場復帰

万博造成現場では、松原はじめ竹之内工業の従業員達が仕事に取り組んでいる。松原は足を引きずりながら、指示を出したり自分にできる作業をしている。皆が二日休んだ分を取り戻そうと張り切っていたし、当たり前のように現場の熱気の一部になっていた。竹之内は、万博現場内をハーレーで巡回し、時折松原達の仕事の様子を見てはまた、万博内のどこかに出かけた。
 松原達は、顔も腕も真っ黒に日焼けしていた。午後二時半を過ぎた

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【まとめ読み】騒音の神様 124〜127 松原の現場復帰と、神様の楽しみ

【まとめ読み】騒音の神様 124〜127 松原の現場復帰と、神様の楽しみ

次の日の朝、竹之内工業の従業員達は会社に集まった。二日休んだだけだが、とても長い夏休みをとったような、皆久しぶりのような不思議な雰囲気だ。誰もが声を掛け合い、今日からの仕事のやる気を見せた。
「おう、なんか久しぶりやなあ。体大丈夫なんか、」
「大丈夫や。ちゃんと働くで。現場空けたぶん、取り戻さんとなあ、」
「結構、みんな来てるなあ。みんな体、丈夫やなあ。」
高石は、松原が来ていないことが気になって

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【まとめ読み】騒音の神様 121〜123 竹之内、ハーレーで万博現場を走る

【まとめ読み】騒音の神様 121〜123 竹之内、ハーレーで万博現場を走る

竹之内社長に休みと言われた二日目も、松原は家で寝ていた。高石や他の従業員が心配して、松原に休みだと伝えていた。高石らは氷などを届けたが、松原は
「玄関に置いといてくれ」
とだけ言って顔を見せなかった。松原は家から動く気は無かったし、体も動ける状態ではなかった。
一方、万博造成現場では元気に喋りまくる男がいた。ダンプカーのおしゃべり男だった。
「ワシは見たんや。竹之内が来たで。竹之内、知ってるか、知

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【まとめ読み】騒音の神様 118〜120 竹之内の喧嘩講座

【まとめ読み】騒音の神様 118〜120 竹之内の喧嘩講座

竹之内はしばらくハーレーにまたがって万博現場内を走った。青空がまぶしいくらいに、透き通ったような青さだった。トラックやダンプカーが迫力のある音を立て、土煙りをあげて走る。竹之内がまたがるハーレーは、その存在感も音の迫力も負けていなかった。そして竹之内はタッパがでかかった。長い手足、迫力のある肉体でハーレーを走らせる姿は通り過ぎるダンプカーを運転する者達の目をひいた。
「なんやあいつ、現場にハーレー

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【まとめ読み】騒音の神様 115〜117 竹之内、デカ男を倒す

【まとめ読み】騒音の神様 115〜117 竹之内、デカ男を倒す

次の日の朝、竹之内工業の社長、竹之内塊童は朝から万博の造成現場に向かっていた。竹之内がまたがるハーレーダビッドソンが、ドドドドと地鳴りのような音を響かせて走る。1960年代、ハーレーに乗る者は少なく、竹之内にとっては成功の証だった。
 竹之内は真っ直ぐ現場監督の元へ向かう。だいたいの出来事について話した後、監督からも話を聞いた。竹之内は監督に
「うちのもん、とりあえず休ませるんで、」
と言うと現場

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【まとめ読み】騒音の神様 111〜114 竹之内工業の社長、竹之内塊童(たけのうち かいどう」

【まとめ読み】騒音の神様 111〜114 竹之内工業の社長、竹之内塊童(たけのうち かいどう」

皆でわいわいと晩飯を食べた後に、社長が言った。
「あしたは、みんな休みや。あさっての朝、会社来い。」
それを聞いて従業員達は、どんな反応をして良いか一瞬分からなかった。松原はすぐに切り出した。
「いやいや、社長。行きますよ。俺行きますからね。」
社長はすぐに
「休みや。みんな、休むんや。ええな。」
松原は、くいついた。
「誰か他の人間入れるんですか、間に合いませんよ。俺行きますし。他も、来る奴おる

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【まとめ読み】騒音の神様 108〜110 やられた松原を社長がねぎらう

【まとめ読み】騒音の神様 108〜110 やられた松原を社長がねぎらう

松原を探す二人の男は、歩きながらどこからか声のような音を聞いた。
「なんか音聞こえへんか、」
「何か聞こえたで。おい、松原か、松原おったら返事せえ。どこや、どこにおる、」
「ここです、松原さん、ここにいます、」
「高石か、どこや、どこにおる、」
「砂利の裏です、」
二人の男は高石の返事を聞いて走り出した。背丈より高く積まれた砂利の裏側に回ってみると、木にもたれかかる松原とその隣に高石がいた。二人は

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【まとめ読み】騒音の神様 104〜107 松原、デカ男へ仕返し

【まとめ読み】騒音の神様 104〜107 松原、デカ男へ仕返し

松原が一人残ると言うと他の者が
「もう用事ないやろ。何するんや。」
「車ないでしょ、どうやって帰るんですか、」
と心配そうに言う。
「今日は早よ帰って体、休めたほうが、」
と誰かが言ったとき松原は
「何も心配あらへん。体は丈夫なんや。打ち合わせや。帰りも知り合いに乗せて帰ってもらう。とにかく先、帰っててくれ。すぐ後で追いつくわ。」
と言うなり車を離れて歩きだした。高石が追いかけたが、松原に追い返さ

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【まとめ読み】騒音の神様 101〜103 えらそな荒本、松原をコケにする

【まとめ読み】騒音の神様 101〜103 えらそな荒本、松原をコケにする

仕事場に戻るために無駄に胸を張って歩く荒本に、他の男が声をかける。
「えらい腹出とるで。ほんまに百キロか、」
荒本は、
「ほんまは百四十キロや。いや、百五十かもな。とにかく重たいんや、オレは。重さは強さなんや。」
そう言いながら仕事を再開した。

少し離れた場所では、松原が水を頭から被っていた。そして周りの皆に
「みんな、すまんな。勝てんかった。情け無い話しや。みんな、すまんかった。怪我は無いか、

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【まとめ読み】騒音の神様 99〜100 でかい荒本、自称100キロ登場

【まとめ読み】騒音の神様 99〜100 でかい荒本、自称100キロ登場

 この花守達の戦いを、遠くから眺めている男達がいた。切り開かれて、土の地面だけが広がる造成現場。戦いの場所からは遠かったが、男達は木箱に腰かけたり、地面にしゃがみこんだりしながら休憩していた。そんな中の一人が花守達に気付き口にした。
「なんや、喧嘩やっとるで。あっち見てみい。」
「おー、ほんまやな。喧嘩やな。人が吹っ飛んでるやないか。めちゃくちゃ強いな。」
その話題に、あんパンを食べながらタバコを

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【まとめ読み】騒音の神様 95〜98 松原と花守の戦い決着

【まとめ読み】騒音の神様 95〜98 松原と花守の戦い決着

高石が打ち込んだパンチは、サッパリ効いていないのが高石にも分かった。ヒジ打ち男こと、盛山花守は背中ごと高石にぶつかるように動いた。花守はそのまま背後を見もせずに、ヒジを後方に打ち込む。高石は必死で回り込み避けた。高石が回り込んだ方向に、松原も回り込もうとしていたので二人はぶつかった。二人の男が同じ場所に立った瞬間、花守は二人に体ごと突進する。ヒジを両側に突き出しながら、飛行機のように。松原は避けた

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【まとめ読み】騒音の神様 93〜94 花守、ボクサー達と戦いはじめる。

松原が担当している場所には、他の会社の作業員も入り混じって作業していた。三十人くらいが様々な作業を進めている。松原は高石に
「お前らはあっち側やっとってくれ。俺らはこっちや、」
と仕事の指示を出す。高石達は移動して、また仕事を進める。作業する男達が地面を見ながら、汗だくで仕事をする。ぬぐってもぬぐっても、汗が出てきて土の地面に落ちていく。松原は自分も作業をしながら、他の者達にも目を配る。全体的な仕

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