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【まとめ読み】騒音の神様 118〜120 竹之内の喧嘩講座

竹之内はしばらくハーレーにまたがって万博現場内を走った。青空がまぶしいくらいに、透き通ったような青さだった。トラックやダンプカーが迫力のある音を立て、土煙りをあげて走る。竹之内がまたがるハーレーは、その存在感も音の迫力も負けていなかった。そして竹之内はタッパがでかかった。長い手足、迫力のある肉体でハーレーを走らせる姿は通り過ぎるダンプカーを運転する者達の目をひいた。
「なんやあいつ、現場にハーレーで来とるんか。それにしてもかっこ良すぎやな。」
地面を見て作業している男達も、いつもと違う聞き慣れない迫力のある音に顔をあげた。
「なんや、かっこええ音しとるで。なんやこの音。」
作業員が顔をあげて音がする方向へ顔を向けると、さらにかっこええ姿が見える。
「なんや、現場にあれ、ハーレーちゃうんか。なに考えとるんや。かっこ良すぎるやないか。」「あいつワシ、知っとるで。竹之内社長やろ。ボクシングのチャンピオンやった人や。」
「かっこ良えなあ。ハーレーがあんなに似合うか。ガタイもえらいごついで。かっこええなあ、、」
竹之内を目にする男達はみんな、しばらく見とれた。竹之内は、万博現場を見張っていた。
「ヒジ打ち男、ヒジ打ち男。ヘルメットにゴーグルにごつい体。」
竹之内が万博内をしばらく走っている間に、まぶしいくらいの青かった空が急に暗くなって、打ち付けるような雨が落ちてきた。現場内は、片付けで大慌てになった。竹之内も雨に打たれながら、現場を離れることにした。

大雨の中、竹之内が会社に帰ると何人かが出社していた。竹之内を見ると従業員達は
「社長、昨日はすんませんでした、」
と、次々に言った。竹之内は
「お前ら、来んな言うたやろ。それから二度と謝るな。わかったな。」
と言って皆の輪の中に入った。竹之内はそれから
「明日も休みや。ええな、」
と言うと
「大丈夫です、行けます。」
と言う者もいる。竹之内は
「いや、明日も休みや。元気なやつは、他の現場行ったってくれ。あしたも万博は俺が一人で行くんや。あしたはそう言う日や。」
それから竹之内は
「みんな仕事はよう出来る。ただ、喧嘩の仕方教えてなかったな。今から教える。」
と言うと皆喜んだ。
「やった、来て良かった。」
現役プロボクサーの高石も興奮した。
「ほんまですか、これは最強になれるで、」
「松原さん、迎えに行ったほうが良かったですかね。社長が喧嘩教えてくれるんやし。朝来い言われたんですけど、わざと行かんかったんです。」
「それでええ。松原は顔パンパンで体ぼろぼろや。あいつはまだ休まなあかんやろ。」
等と、皆が元気な口調になって皆が話し出す。竹之内は近くにある仕事道具を手にして、
「自分より強いと思う相手、相手が何人かおる時。遠慮すんな。思いっきり道具振り回せ、スコップでもハンマーでも。思いっきりや。身近な道具を武器にせえ。」
竹之内は立ち上がって、手にしたトンカチをブンッと振り切った。いきなり元ボクサーの社長が手に武器を持つ話をしたので、皆驚いた。
「え、パンチとかやないんですか、社長。」
竹之内は
「パンチはあんまり武器にならん。素手は弱い。パンチは人を選ぶんや。俺はパンチが元々強い。それに練習もした。お前らは遠慮はいらん、手に武器持て。次に連携や。」
社長の話を聞いて従業員から声が上がった。
「社長、俺らも手にスコップとかは持って戦ったんですわ。ヒジ打ち男に。後ろからも行ったし。でも、全然相手にならんかったんです。」
「そうなんですよ、社長。一瞬でスコップとか弾き飛ばれて、体も吹き飛ばされて。まともに戦えたんは、松原だけで。強すぎてどないしたらええか、分からんかったです。」
「ヒジ打ち男は、バイクのヘルメット被ってるんですわ。頭、後ろから狙われへんのですわ。体はもう頑丈すぎて、どないもこないもいかんかったんです。」
そんな従業員の声を聞いて竹之内は、
「そやな。ヒジ打ち男は強いんやろ。そいつは俺がやる。ただ、ヒジ打ち男をお前らだけで倒すとしたら、ヘルメットと足や。ヘルメット取るんや。後ろから飛びついて、ヘルメットはがす。はがしたらヘルメット持って逃げるか、遠くに投げてしまえ。無理なら足狙え。それが連携や。」
竹之内社長の話を聞いてみな考えだした。
「ヘルメットか、そこまで行くのが難しい。どないしたら、」
竹之内社長は難しい表情をしだした従業員に向かって言った。
「心配すな。俺が、ヒジ打ち男現れるまで現場に行く。俺が倒す。心配はいらん。あしたも万博は休みや。あさってから、仕事に戻れ。俺はとにかく、しばらくずっと万博に行く。」
竹之内の力強い言葉を聞いて、従業員達は安心した。
「社長やったら、倒してくれる。」
皆そう思い、強くて頼りになる社長を誇りに思った。

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