福祉介護モビリティサービス「おでかケア便」実証プロジェクトについて聞いてみた
デザイングループの折口です。
今回は、ソニックスが開発し、昨年にデイサービスファミタウン八王子(通所介護施設)と協力して実証実験を行った福祉介護モビリティサービス「おでかケア便」についてご紹介したいと思います!
「クラウド型MaaSソリューション」とは一体どういったものなんでしょうか?このプロジェクトに営業アシスタントとして関わっていた田中佑奈さんに、詳しくお話を伺いました!
プロジェクト概要:「クラウド型MaaSソリューション」とは?
はい、よろしくお願いします!おでかケア便は、アクティブシニア層向けの外出支援を目的としたモビリティサービスです。
バスや電車といった公共交通網があまりない地域だと、免許を返納した方など移動手段がなくて出かけられないですよね。一方で、デイサ―ビスでは利用者の送迎のために何台が車両を保有していますが、送迎時間帯以外は活用されていないという実態がありました。
そこで双方の課題を解決するソリューションとして、デイサービスの車両を地域のモビリティに活用したのが「おでかケア便」です。ドライバーは介護資格を有したデイサービスのスタッフが務め、買い物などにもヘルパーとして付き添います。
「クラウド型MaaSソリューション」とは、ユーザーアプリから受け付けた予約をもとに、運行管理システムで効率的なスケジュールを自動で作成する仕組みのことです。ユーザーアプリはどなたでも簡単にご利用できるように設計され、ドライバーはアプリに表示されるスケジュールに沿って走行するだけで安全かつ効率的に送迎することができます。
運行管理システムでは、複数台の車両のスケジュールや各車両が今どこを走っているかなども分かるので、運行管理者の負担を大幅に減らすことができるんです。
はい、UIデザインもソニックスが担当しましたが、ユーザーアプリは対象がシニア層なので、若手の多いソニックスにとっては新たな挑戦分野でした。開発者が自分の祖父母にスマートフォンを使用してもらい、動作の特徴や最適なボタンサイズを調査したり、可能な限り文字入力を避ける設計にするなど、様々な工夫を凝らしました。
私達にとってはタップもスワイプも簡単な動作ですが、シニア層だとそうもいかないので、アプリへの抵抗感をできるだけ少なくする狙いで温かみのある配色とイラストを採用しました。
プロジェクトスケジュール:実証実験へ向けてスピーディに開発を進行
デイサービスの抱える問題と地域のモビリティ課題についてのお話をいただき、それに対するソリューションとして開発を始めました。実証実験を通して、アクティブシニア層の外出ニーズや課題について調査して、日本が抱える高齢化と地方の交通空白化問題への取り組みに活かしていこう、というのが大きな目的ですね。
人生100年時代と言われ、日本はこれからも高齢層が増えていくことを考えると、シニア層の「出かけたい」を叶えることは地域の活性化にも繋がっていくはずです。
実証実験ではアクティブシニア層の移動ニーズとその目的地を調査するため、送迎場所を絞っていくつかの候補の中から利用者に選んでもらう形にしました。
始動したのは去年の3月くらいからです。そこから実証実験に向けて、1ヶ月ほどかけてファミタウン八王子の方と内容や仕様を詰めていきました。打ち合わせにエンジニアも同席して、開発期間などを考慮しながら仕様を決めていった感じです。その後4月〜5月中旬あたりにかけて開発を進め、5月24日から八王子での実証実験をスタートさせました。
そうですね。ファミタウン八王子さんと一緒に、課題解決に対してかなり熱量を持ってやっていましたので、スピード感を持って進んでいきましたね。
打ち合わせの内容を記録して共有したり、エンジニアが想定して作っているものと打ち合わせで話されていることが違っていたりしたら、ちゃんと認識が合うように調整したり、いろいろと軌道修正をしていたという感じですね。
送迎場所の候補は私が選定したのですが、アクティブシニアの方々の移動ニーズがどういったところにあるのか予想を立てて、候補地を洗い出すのがなかなか難しい作業でした。「おでかケア便」はドライバーの方がヘルパーも兼ねて一緒に付き添うため、駐車場の有無だけでなく、道幅が十分かなどの安全性も考慮する必要がありました。
私は八王子に詳しいわけではなかったし、コロナ禍で現地に行くこともできなかったので、Googleマップのストリートビューを利用して確認したりしました。
実証実験の結果:外出ニーズの高さを実感
実証実験の結果としては、以下のサイトにも報告をまとめておりますのでぜひご覧下さい。
まず、もともとの期間は6月後半までだったんですが、利用者の方からもう少しやってほしいという声をいただいたのと、ご協力いただいていた八王子市地域包括支援センターからもご要望がありましたので、7月末まで行われることになりました。
ただ、コロナの影響もあって予約をキャンセルされた方も多くて、もう少し世の中の状況が違っていたら利用回数はもっと多くなっていたんじゃないかと思います。
アプリUIもシニア層向けに工夫しましたが、やはり70〜80代の方には敷居が高いところがあったようです。アプリには電話予約ボタンも実装したのですが、ファミタウン八王子に来所した際に直接口頭で予約される方も多かったようです。その予約フローは想定していなかったことです。
ただ今回の実証実験では外出ニーズがあるかどうかを1番に知りたかったので、もともとアプリの利用率は低いことを前提に進んでいた部分もあります。
はい。あと、ドライバーを介護施設の職員さんが務めているため、顔見知りの人なので安心できるという意見も多かったです。安心して外出できるので、より気軽に利用しようと思っていただけたんじゃないかなと思います。
今後の取り組み:ノウハウを蓄積して地域のモビリティ課題へ寄与していきたい
検証を始めたとき、アプリが起動しないなどいくつかのトラブルが発生しました。私が窓口だったのでそれをエンジニアの方に伝えるのですが、発生した状況や時間なども詳しく伝えないと対処ができないので、現場間のやりとりをスムーズに進めるために、双方に対して伝え方を考える必要があることを学びました。トラブルも円滑に解決できるようになり、それに伴ってシステムも安定稼働するようになった感じです。
実施後に行った利用者の方へのアンケートでは、外出する機会が少なかったのでこういったサービスがあるのは嬉しいとか、ヘルパーさんに支援されながら買い物できるのは助かっています、という声をいただきました。
私はこのサービス開発にあたって候補地選定とかもこれでいいのかなって悩みながらやっていたので、こういった声が聞けるのは本当に嬉しかったし、やって良かったと思いました。
実証実験を何回か繰り返して運用側のノウハウを溜めていきたいので、今後もこういう機会があれば提案や検証をどんどんやっていきたいですね。ソリューション自体にもいろいろ改良する余地はありますし、他のモビリティソリューションに活かすのももちろんです。
利用者の方からはもっと続けてほしいといった声をいただきましたので、今後自動車免許を返納した方やアクティブシニア層の移動を支えるサービスとして、地域のニーズに合わせて自治体などに提供していけるようになるといいなと思っています。
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